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理想国の設計と神の存在

アンドロイド/サイボーグ考(78)~ハクスレー『すばらしい新世界』を読む(22)

2014年12月16日(火)

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理想国における自由の欠如

 この理想国の世界は、苦痛なものをなくし、安楽で幸福な生活を大衆に与えています。そうした世界では情熱というものを抱く理由がなくなります。自分の生活をみずから決定し、その生において卓越したいという情熱、他者を愛したいという情熱、真理を認識したいという情熱、自己を鍛え、自己の貧しさと愚かしさを克服したいという情熱、こうしたあらゆる情熱は不要なものとして廃絶されます。

 そのためにこの世界はどのような方法を採用したでしょうか。その方法は何よりも、人間を改造することにありました。この世界の人間はすべて自然の人間の身体を技術によって改変されています。この身体的な改変によって、人間は人造の人間となり、生まれる前から、すでに特定の遺伝的な特徴を与えられ、幼児の際に与えられた条件付けによって、偶然的なものを廃絶しています。

 この世界で生まれた人間には、自分の生活と将来を決定する自由を剥奪されているのです。この世界は人間にとって選択する自由のない世界です。睡眠時間における条件付けによって、そもそも思考する自由すら奪われ、教えこまれた真理を信じこんでいるのです。自由を喪失した世界、それが理想国の世界です。

愛情の喪失

 この自由の欠如は、人間が愛するという情熱をもつことを否定するものです。愛情は人々に特定の人間を優先的に扱うことを教えますが、それは体制にとっては不都合なことなのです。この世界では特定の他者を愛することがなくなるように、家族を廃絶して親子や兄弟姉妹の間の愛を廃絶し、誰とでもセックスできるようにして、恋愛も嫉妬もなくなるようにしています。

 そのためにこの世界で採用している方法は、プラトンの理想国よりも過激です。プラトンは共同体が指定した人間と結婚し、子供たちも両親も共同で食事することによって、こうした家庭的な愛情を廃絶しようとしたのでした。しかしこの理想国では、結婚という制度そのものをなくしてしまい、家族という制度を廃絶しています。そして女性が妊娠し、出産するという苦痛を味わうことがないように、体外受精させて、すべての子供は瓶の中から生まれてきます。これは女性にとっては一方的な負担を強いられることのない好ましい制度ではあるでしょうが、母親となるという経験を喪失させるものでした。

真理の廃絶

 この世界ではさらに、人々がいかなる真理を認識することを望むことがないように、哲学も学問も科学も完全に制御されています。人々は真理を認識するのではなく、体制「真理」を認識し、人々は条件付けによって体制が真理とみなすものを教えこまれるのです。この理想国では権威をもつ指導者と国家が真理と語るものが、真理となるのです。

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「理想国の設計と神の存在」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官