春風亭昇太と黒川勇人の「旬缶クッキング」

【旬缶3】夏は、旬のムラサキウニで缶極まる!

文:カンパネラ編集部 / 写真:栗栖 誠紀 08.28.2014

落語界きっての缶詰マニア、春風亭昇太師匠が営む缶詰バーが「くらげ庵」である。今回いただくのは、急なおもてなしにもピッタリの絶品うに缶。三陸で旬の時期に獲れたうにだけをギュッと詰め込んだこの缶詰を、缶詰博士・黒川勇人氏と共に味わった。
なお、くらげ庵は秘密の会員バーゆえに、一般向けの営業はしていない。あしからず。

突然、大切な人を自宅に招いて、もてなすことに。しかもその人は大のグルメで、酒と肴のマリアージュにうるさい人である。

そんな時どうしたらいいのか? ほとほと困って、缶詰博士の黒川勇人さんに相談した。

「マリアージュといえば、『くらげ庵』ですよ。今日もいいネタが入っているはずです」と博士。

博士の後について、くらげ庵に出かけることにした。

夏に最高の肴

世田谷の閑静な住宅街にあるくらげ庵を訪れたのは、夕方あたり。

鮮やかな緑の暖簾をくぐると、いつもながらの美しい白木のカウンター。そこに着物姿の昇太師匠。

「博士、こんにちは!そろそろ来るような気がしてましたよ」

「くらげ庵」の前で。春風亭昇太師匠(左)と缶詰博士の黒川勇人さん

「たまにここで旬の缶詰を食べないと禁断症状が起きるんですよ(笑)。実は、編集部の人間が、大切な人を自宅に招いてもてなすことになりまして」

「ほう」

「それが、かなり酒と肴のマリアージュにうるさい人のようで」

「なるほど。グルメな酒飲みをもてなすということだね」

それからしばし軽く腕を組み、考える様子の昇太師匠。カウンターで見守る博士。編集部もドキドキ。

「三陸のウニなんかどうかな?」と、師匠。

「おー!ウニといえば、夏の味覚!」と、缶嘆の声をあげる博士。

昇太師匠は「うに缶」を取り出した。

「これはひょっとすると、大川魚店のうに缶?」

「さすが博士!その通り。大川魚店のうに缶です!」

「うに缶なんて、今日は、ついてます!」

大川魚店は、福島県いわき市にある鮮魚・浜の名産品専門店。このうに缶は、三陸で獲れたうにを仕入れて蒸し上げた、大川魚店の代表的な商品の一つである。

「さて、どうですか?」と、おもむろに開缶する師匠。

「うわーっ!中身がぎっしりですね」と、缶動する博士。

「これ、逆さまにしても中身が落ちないくらい詰まってるんです。三陸で5月から8月の旬の時期に穫れたムラサキウニだけを使っています」

「これなら、ちょっとうるさい人をおもてなしするのに最適ですね」

「今日は、これに軽く仕事をしてお出ししましょう」 

「それは楽しみです!」

そのままでも美味しいうに缶が、どんな風にでてくるのか?期待に胸を膨らませる缶詰博士。

「はい、どうぞ!」と、師匠が差し出した一皿は、まさにサプライズ。

茹でた枝豆の上に缶詰のうに。

「これが不思議と合うんですよ」と、師匠。

「うにを枝豆と合わせるとは!」と、驚愕する博士。

食べてみると……

「これは、たまらない。枝豆の爽やかな香りと歯触りが、うにのこってり濃厚な味わいと一体になって」と、博士。

「素材のうには一度蒸されているんです。蒸されると旨味がぎゅっと濃縮されるんですよね。だからそのまま食べるより、何かと合わせたい。いろいろ旬の味覚を試して、枝豆にたどりついたんです」と、師匠。

「そういえば、いわきには郷土料理にうにの貝焼きがありますよね」

「そうそう。うにを北寄貝の殻に盛りつけて蒸し焼きにするのが貝焼き。その食文化が、このうに缶でも味わえちゃう」

ここで乾杯。

「くーっ、生ビールにピッタリの大人のツマミですな」と、博士。

「濃厚な磯の香りが口いっぱいに広がるでしょ?」と、師匠。

「たまりません!」

「で、そろそろ欲しくなるよね?」

「えっ? そういえば!」

「東北の地酒をマリアージュさせると、どうかな」

「おー、たまりません」

昇太師匠と缶詰博士。

「うに缶詰」を巡る旬の缶談は、いい缶じに続くのでした。

昇太師匠缶案の逸品「うにと枝豆」と東北の日本酒。これさえあれば、どんなに味にうるさい人が家に来ても、ツカミはOKですよね。

うに缶(蒸しうにの缶詰)

春風亭昇太(しゅんぷうてい・しょうた)

落語家。1959年、静岡県静岡市(旧清水市)出身。東海大学史学科日本史課程中退後、春風亭柳昇に弟子入り。92年、真打ち昇進。2000年、文化庁芸術祭大賞受賞。日本テレビの長寿番組『笑点』大喜利レギュラー他、舞台、映画、TV、ラジオなど幅広く活躍。社団法人落語芸術協会理事。芸能界きっての城好き、缶詰好きとして知られる。

黒川 勇人(くろかわ・はやと)

世界の缶詰を紹介する「缶詰blog」を2004年から執筆中。公益社団法人日本缶詰協会認定の「缶詰博士」として、TVやラジオなど各種メディアで活躍中。著書は『日本全国「ローカル缶詰」驚きの逸品36』(講談社プラスアルファ新書)など多数。缶詰コラム「忙中カンあり」を朝日新聞beに、「百缶繚乱」を週刊漫画TIMESに毎週連載中。所属事務所は小曽根マネージメントプロ。

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