ちょいコレ

涙を誘う父娘の動画、上司と部下もつなぐ勢い(動画)

文:鶴野 充茂 09.25.2014

ホームセンターのCM動画を見て涙ぐむ、こんなことが予想し得るでしょうか。でも娘を持つ父親なら、少なからず心を揺さぶられるはずです。そんな名作ネット動画を紹介します。

女の子が家で一人、ベッドに横になっているシーンから動画はスタートします。

来客を知らせる玄関のブザーが鳴りますが、彼女は反応をしません。女の子と同世代くらいの男の子がマンションの入口で何度も鳴らしていますが、全く反応せずです。

そこに父親が帰ってきます。入口で男の子の姿を見かけながら帰宅すると、娘はふさぎ込んでいるかのように、ご機嫌ナナメです。

父と娘の物語か、それとも?

父親は何か思いを巡らせ、出かけていきます。

夜、帰宅してホームセンターの袋を置き、そこからコードを取り出して、おもむろに配線作業を始めます。

場面が変わり、男の子がまたベルを鳴らします。

すると、ベルに合わせてベッドランプが点灯しました。女の子はそれが何かの合図だと気づきます。

わずか1分41秒の動画ですので、ぜひご覧ください。

そして自分がどこに目を付けたか、覚えておいてください。

【Comercial Promart Homecenter - The Perfect Daughter】

父親の余裕っぷりがいい

動画は感傷的すぎず、また、わざとらしくもなく自然なタッチで描かれていて、登場する3人それぞれの心理をイメージしながら楽しむことができます。

娘のボーイフレンドの出現というドラマチックな場面に際して、父親があんな形で娘に寄り添うことができるのか、と驚く人もいるかもしれません。娘の喜ぶ様子にうれしくなった人もいるでしょう。

しかし、最大の見どころは、何と言っても父親の存在の大きさです。

まず玄関ブザーで寝室の照明を操作する配線を考え、娘を起こさないように、テストもせずに、暗闇の中で作業を片付けてしまう器用さ。

父親は電球を変えるだけの存在ではない、と言わんばかりです。

また通常、父と娘の物語は、過去の想い出を成長を追いながら複数シーンで描くことが多い。時間の流れで思いやつながりの強さを表現するのです。

ところがこの動画では、現在形のシーンしか出てきません。娘と父がなぜ二人暮らしなのかも分からない。

見方を変えれば、父親は娘のボーイフレンドが現れたことに、まったく動じていないと読めるわけです。

配線がみんなをつないでいる

よく見ると、この動画の中で働いているのは父親だけです。

家族を養い、ホームセンターに買い出しに行って、家のケアをするのも父親なのだと伝えているわけです。動画が制作された南米ペルーのホームセンターでの利用者を見ると、実際そうなのでしょう。

その上で、この動画の最後に出てくるメッセージを見ると、一体どう読めるでしょうか?

 「Your family is perfect. Your home should be too.」
 (家族はパーフェクトです。家もそうあるべきでしょう)

父親たちに「家でも夜でもしっかり働け、家族を喜ばせるために」というのが暗に込められたメッセージに読めないでしょうか?

淡い恋の物語なんかではありません。結構なプレッシャーです。

だからこそ、この動画の主役は父親であり、世の中の父親が見て心を揺さぶられるように作られているのですが、すべてを象徴的につないでいるのは実は「配線」です。

配線によって光が灯り、娘の元気が出て、ボーイフレンドにつながっていく。配線がすべてをつないでいるんです。

そして配線と言えば、ホームセンターですもんね。よく考えられた表現です。

と、そんな話題をイメージしながら、上司に「こんなのありましたよ。感動しますよ」と教えてあげてみてください。

上司がどこに目を付けて何を語るか、一味違った楽しみが待っているはずです。

話題にできる世界の名作ネット動画、「ちょいコレ」でまた紹介しますね!

鶴野 充茂(つるの・みつしげ)
ビーンスター株式会社 代表取締役
カンパネラ「ちょいコレ」監修。ビーンスター株式会社 代表取締役。公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会理事。コミュニケーションの専門家として、トップマネジメントやリーダーに情報発信やプレゼン、メディア対応についてアドバイスしている。 著書は、25万部超のベストセラー『頭のいい説明すぐできるコツ』(三笠書房)ほか『世界のエリートはなぜ次々とチャンスをつかむのか?』(宝島社)、『なぜ経営者は 「嘘つき」と言われてしまうのか?』(日経BP社)など二十数冊。日経ビジネスオンラインで「金曜動画ショー」、月刊「広報会議」でネット危機管理の連載 も持つ。
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