BUSINESS

【人情派2】大阪の街中にワイン醸造所というサプライズ

「着地型観光ツアー」で街を魅せる仕掛け人 ツーリズム・ディレクター 森なおみさん

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文/写真:須田泰成

10.30.2014

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地域の人情味あふれる面白いビジネスを紹介する本コラムの2回目は、大阪の魅力を掘り下げた独特のツアーを展開しているツーリズム・ディレクター、森なおみさんが登場します。

「人にやさしいビジネス」が、低迷が続く地域経済に復興と発展の光をもたらそうとしています。

全国から人が集まるイベント酒場「さばのゆ」店主でコメディライターの須田泰成氏が、人情味あふれる地域ビジネスと、その担い手の人々を紹介します。(カンパネラ編集部)

究極の観光とは、人と地域を深くつなげること

ライフ・イズ・コメディ。変化の激しい世の中、いろいろなことがありますが、イギリスが生んだコメディ界のビートルズと言われるモンティパイソンのヒット曲「Always look on the bright side of life.(いつも人生の明るい面を見て生きていこう)」の歌詞のように、常に楽しいことを追求していきたいものです。

今回ご紹介するのは、経堂のさばのゆにも飲みに来られている大阪のツーリズム・ディレクター、森なおみさんです。

名所旧跡を訪れて、記念写真を撮影して……。従来型の観光ツアーはこんな具合に進みます。それも悪くはありませんが、森さんが取り組んでいるのは、観光は観光でも「着地型観光」というもの。表にはなかなか出てこない土地の深い魅力や、現地に暮らす人々の素顔に出会うことを演出する、新しい観光のスタイルです。

大阪のツーリズム・ディレクター、森なおみさん。取材でご一緒したお店「フジマル醸造所」にて

「せっかく大阪に来られたのに、大阪城を見て、串カツを食べて帰るだけというのは、ほんともったいないです。大阪は、江戸時代に日本一と呼ばれた商人の街。豊かな食文化とおもてなしの伝統が地域に根付いています。それをリアルに体験してほしい」と森さんは語ります。

森さんが関わるツアープロジェクトの一つが、「OSAKA旅めがね」。

「週末を利用したツアーですが、地元の人でも知らなかった大阪の多様な魅力に深く触れることができるんです」

たくさんのツアーのごく一部を見てみましょう。

北船場のレトロ近代建築を鑑賞しながらスイーツを楽しむツアー。実力派の飲食店が多い福島区福島の路地裏グルメを探検するツアー。戦前のゆったりした庶民の住宅街の町並みが残る空堀の長屋ツアーなど。いずれも約2時間で、大阪の町の魅力を楽しめます。北船場は「東洋のマンチェスター」と呼ばれ栄えた明治から昭和初期における大阪の名残を残す地域です。

ワンランク上の「プレミアムツアー」も人気を集めているそうです。プレミアムツアーの一つが、明治期に藤田財閥を創設し、日本有数の大富豪として知られた藤田伝三郎男爵の本邸・太閤園をめぐるという企画で、近代大阪の文化に触れる旅となっています。美術品コレクターでもあった男爵の美意識と食に関するこだわりに迫ることができる内容です。

そのほか、大阪のワイナリー見学や、ブドウ畑でのピクニックとランチなど、農産物の生産地・大阪の食文化を体感できるツアーも人気だとのこと。

「河内ワインで手絞り体験ツアー」の様子
「飛鳥ワイン畑で新酒まつりツアー」でのワンシーン

「土地のリアルな日常」が参加者に人気

「以前、老舗寿司店の仕事場を見せるツアーを企画したんですけど、最初の打ち合わせの時、「こんな作業場を見てどうするの?」と、反対されて、店主の協力を得られませんでした」

商売の裏側を見せることには、当初は職人さんからの抵抗がありました。そこで森さんは「観光のお客さんが知りたいのは、特別なものではなくて、ここで働く皆さんの日常なんですよ」と説得にかかりました。最終的には職人さんからの協力が得られ、しかもツアーは満席。参加者には好評だったようです。

「これからのツアーは、よそ行きの着飾ったものを見せるよりも、土地のリアルな日常に触れていただくのが大切だと思いました」

大阪の下町・住之江区の商店街近くで育った森さんは、街の人の気質を熟知しています。

「子どもの頃から商店街は遊び場で、お店の人から「ひとくち食べてみぃ?」と声をかけられ、食べている間に商品へのこだわりを聞かされるという環境が普通にありました。今思えば、魚屋のおっちゃんは単なるおじさんではなく、魚のプロなんですよね」

「商店街に暮らすプロの話は面白い。大阪人は、人懐っこいし、常に相手を楽しませたいと思っています。そのおもてなしの感覚を全国の人に味わってほしいんです」

森さんのツアー客の特徴は、リピート率が高いこと。しかも、参加者の半数が大阪府内の人。当初は、関東など遠方の方が多いかと予想していましたが、続けるうちに、「自分たちが暮らす大阪をもっと知りたい」と参加する地元の人が多いということが見えてきました。

「『遠くの人より近くの人を』なんです。近くの人が喜ばないものは、遠くの人も喜ばないのだと実感しています」

着地型観光の極意は、「人と地域を深くつなげる」ことなのですね。

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