地方再生物語

カツオが美味い高知の鮮魚店が再生できた理由

地方のお店が賑わいを取り戻すための秘けつを店主に聞く

文:深大寺 呑助 12.04.2014

高知県の久礼大正町市場にある田中鮮魚店の魚は美味い。遠く高知市内からも買い物客が訪れるほどの人気だが、10年ほど前までは衰退の道をひた走っていたという。再生の秘密を探る。

前回のリポート、「辺境のデザイナー、梅原真さん特別講義」では、高知のグラフィックデザイナー、梅原真さんにアイデアや切り口を生み出す考え方を聞いた。実は、その取材の時に「久礼(くれ)の大正町市場におもしろい魚屋があるので、明日の朝一緒に行こうや」と誘われた。「えっ魚屋って何?」といぶかしく思ったが、そこは食いしん坊の梅原さんのこと、面白くないはずはないと思ってご相伴にあずかることに。

そして翌朝、連れて行かれたのは久礼大正町市場(中土佐町)の田中鮮魚店だった。大正町市場の奥の方にある魚屋さんで、店頭のケースには旬の戻り鰹のほかに、メジカのシンコ(ソウダガツオの1年物)、地ダコ、イカ、うつぼ、ハランボ(カツオのハラミ)、ちちこ(カツオの心臓)、シイラなど、朝どれの新鮮な魚介類が並んでいた。全長100mに満たない小さなアーケードの中でもひときわ賑わいを見せている。

活気あふれる田中鮮魚店。朝どれの魚介類が店に並ぶ。ここ目当てに大正町市場に来る人が大半

この田中鮮魚店の何が人気なのかというと、ひとつは高知の中でも指折りにカツオが美味いというところだ。漁師町である久礼の人々は、高知の中でも特にカツオにうるさい。その久礼の住民に「カツオの品質では右に出る物なし」と高い評価を受けているのだから、そのクオリティーの高さが分かるだろう。周辺住民はもとより、遠く高知市内からも買い物客が訪れる。

地物のイカ。イカ好きにはタマラナイ
ハランボは臭みが全くない

また、買った魚をその場で食べられるところも人気のポイントだ。「カツオとタコを刺身で」と注文してお店の目の前の食堂「漁師小屋」で待っていれば、ものの5分ほどで切り立ての刺身が運ばれる。熱々のごはんと味噌汁で食べるさばきたての刺身は筆舌に尽くしがたい。特に9月の一時期、店頭に並ぶメジカのシンコはもちっとした食感、風味ともに最高である。

漁師小屋でシンコを食べる梅原さん

もっとも、これだけの賑わいを見せるようになったのはここ10年ほどの話だ。それまでは、ほかの多くの市場と同様に、スーパーなどの大手小売りに顧客を奪われ衰退の一途をたどっていた。その中でなぜ田中鮮魚店と大正町市場は賑わいを取り戻したのか。カツオとシンコの刺身をつまみつつ、田中鮮魚店の代表、田中隆博さんに話を聞いた。

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