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知ればもっと美味しい!飛騨高山の地元スーパーが伝える食文化

文:秋元 しほん 03.19.2015

飛騨高山にある地元密着型スーパーが話題を呼んでいる。地元の買い物客に地元の品を売り続けるという方針を貫いたことが功を奏し、全国レベルで話題に。地元の食文化を発信する拠点となった。スーパーの奮闘ぶりと飛騨高山独特の食文化を紹介する。

あげづけ、めしどろぼ漬、漬物ステーキにこも豆腐。この名前にピンときた読者は某地域出身者か、かなりのご当地通であろう。

これらの商品は飛騨高山で昔から食べられている日常食。「あげづけ」は秘伝のたれがしみ込んだ油揚げ。「めしどろぼ漬」は赤かぶの刻み漬物。「こも豆腐」はワラに豆腐を巻いてゆでたもの。「漬物ステーキ」はなんと焼いて食べる白菜の漬物だ。記事冒頭の写真が漬け物ステーキである。写真下部に、少し白いものが見えるが、これが白菜だ。

これが飛騨高山の日常食の1つ「あげづけ」

「飛騨高山ならではの食文化を守り続けていきたい」そんなスピリット(精神)を掲げ、独自の品ぞろえで地元ではもちろん、ほかの地域からも注目を浴びている地域密着型のスーパーマーケットがある。

それが「ファミリーストアさとう」だ。現在、高山市内に5店舗を構え、3月末には6店舗目がオープンする。

ファミリーストアさとうは、もとは1959年に岐阜県高山市で佐藤幸平氏(取締役会長)が家の軒下から始めた、小さな商店だった。

創業当時のファミリーストアさとう(提供:ファミリーストアさとう)

朝市で仕入れてきた飛騨高山の食材は、どれも新鮮で美味しく、近所の人たちが「佐藤さんのトコに行ってくる」とよく買い物に訪れた。息子である佐藤祐介氏(代表取締役社長)も、学校が終わると母や姉に混じり毎日店を手伝っていたそうだ。

買い物ができる店が少なかったため、地元の人たちの「あれが欲しい」「これが食べたい」というリクエストに応えるべく、取り扱う商品をどんどん増やしていった。

高度経済成長も一段落し、全国的にスーパーマーケットが普及した頃、「佐藤さんのトコ」も来店客が棚から商品を選ぶスーパーマーケット方式を取り入れ、1975年にファミリーストアさとうとして、新たに店舗をスタートさせた。家族で頑張っているからファミリーストアさとう。近所の人がそう名付けてくれた。

現在のファミリーストアさとう店舗の外観

今年で創業55周年を迎えるが、「地元の人たちが買いたいと思う商品をそろえる」という創業当初からの精神はいまも変わることなく、独自の食文化を提供し続けることにこだわっている。

「昔から飛騨高山には豊かな食文化がありいまも脈々と息づいています。あげづけや漬物ステーキなども厳しい環境だからこそ培われた食文化です。私たちはその文化を守る一翼を担いたい」と佐藤氏は語る。

厳しい冬の寒さから生まれた「温かい漬物」

飛騨高山のユニークな食文化が生まれた背景には、飛騨高山の気候が大きく関係している。

冬の飛騨高山

飛騨高山は飛騨地方に位置する岐阜県高山市周辺の総称。富山県、岐阜県、長野県に連なっている飛騨山脈は北アルプスと呼ばれ、日本海側特有の雪深く厳しい寒さが続く地域として知られている。

冬は農作物が不足し、保存食の漬物も凍りついてしまうほど寒い。そんな厳しい寒さの中、少しでも美味しくそして温かい食べ物を出せないかと、囲炉裏(いろり)で白菜の漬物を焼き始めたのが「漬物ステーキ」の始まりと言われている。

ごちそうとは言いにくいが、寒い冬の日に温かい食事が食べられると力が湧いてくる。だから、ステーキなのだ。

いまでは飛騨高山を代表する郷土料理として飲食店でも出されるようになっている。家庭でもよく作られ、調理方法もさまざま。一般的な作り方は、フライパンに油もしくはバターをひき、白菜を軽く焦げ目がつくまで炒め、溶き卵を流し込んで卵が半熟状態になったら完成。お好みで刻みのりや紅ショウガをトッピングするというものだ。

改めて、これが漬物ステーキである

こも豆腐も同じ郷土料理だが、こちらは冬に不足しがちなたんぱく質が補える貴重な食材として食べ継がれてきた。こもと呼ばれるワラに豆腐を巻き、熱湯でゆで上げる。ゆでることで無数の気泡(「す」)ができ、味が中までよくしみ込むようになっている。

ワラで巻いたデコボコした表面にもよく味がのる。普通の豆腐より食感はやや硬めで弾力があり、出汁(だし)と醤油で素朴なあっさり味で食べることが多いそうだ。

食卓にもよく登場するメニューだが、お正月や婚礼など、ハレの日にも欠かせない食材となっている。

こも豆腐
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