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カレーバーは、夏の酒飲みユートピア!:前編

厳しい夏をスパイスとビールで乗り切る

文/写真:須田泰成 06.25.2015

いろいろな街で、小さなカレーバーが盛り上がっている。国民食のカレーライスが、国民的な酒のツマミに。東京の下町・北千住と中央線・西荻窪にあるリラックスムードのカレーバーを紹介する。

とかく夏はカレーを食べたくなる。

スパイシーなカレーの香りは、減退気味の食欲をかきたててくれるし、スパイスは、熱暑で疲れた心とカラダを元気にしてくれる。

「スパイス 健康」でネット検索すると、その効用について、膨大なデータが現れる。新陳代謝、血行促進、消化吸収、食欲増進、冷え性改善、ストレス軽減など、字面だけで気分が上がる。

スパイスたっぷりのカレーは、ビールとの相性も最高だ。ゆったりとビールとカレーが楽しめるアットホームなカレーバーを、前後編2回にわたってご紹介する。

アットホームな北千住のカレーバー

江戸時代に日光街道の千住宿で栄えた東京・北千住界わいは、現在も交通の要衝である。街の中心の北千住駅は、JR東日本・常磐線、東武伊勢崎線、つくばエキスプレス、営団地下鉄が乗り入れる巨大ターミナル。駅前にはルミネ、マルイ、東急ハンズなどが入居するビルが立ち並ぶ。

さながらミニ新宿といった雰囲気の北千住駅前だが、西口を出て少し歩くと、昔ながらのサンロード宿場町商店街がある。この辺りに来ると、下町の風情が漂っている。明治10年創業の古典酒場・大はしがあり、地元の主婦たちが子どもを乗せてママチャリで行き交う。

CURRY BAR GAKUの入り口の様子

商店街の路地を曲がると、昔ながらの新鮮な野菜と果物が並ぶ青果店の並びに「CURRY BAR GAKU」がある。ドア横の黒板には「カレーはもちろん、酒の肴も充実!!楽しみ方はお客それぞれ!!」の文字。ドアの隙間からレゲエのサウンドがこぼれ心を弾ませる。

店内は、洞窟のような雰囲気に柔らかい間接照明がふわり。前述の大はしもそうだが、老舗の居酒屋によくある「コの字型カウンター」なのもいい。一角に座ると、子どもの頃の秘密基地のように落ち着く。編集部2名分の命の水、生ビールとヒューガルデンホワイト、おツマミにスパイシーな揚げワンタンとカレーピザを頼んだ。

早速、ビールをゴクリ、ツマミをパクリ。揚げワンタンとカレーピザ、共に秀逸。ワンタンは、パリッと。ピザは、モチッと。どちらも味わい深く、ビールとのマリアージュに陶酔する。

揚げワンタン
カレーピザ

「料理担当は、母なんです。ずっと調理のプロとして仕事をしてきたのですが、ぼくが12年前に会社員を辞め、この店を作って一緒に働き始めました」というのは、店主の山口楽さん。CURRY BAR GAKU のGAKUは、山口さんの「楽」から。もちろん音楽の楽である。

店の佇(たたず)まいは洒落たバーだが、料理は全てスパイシーなおふくろの味。こんなユニークな組み合わせは、ありそうで、ない。

コの字型カウンターが育む酒場のコミュニティ

昔からレゲエミュージックが好きだったという山口さんは、同じ下町の葛飾区出身。近年この界わいでは、マンション建設ラッシュや大学の誘致などにより、新しい住人が増えた。だが、この店のカウンターでは、気取らない空気の中で、様々な人たちが思い思いに楽しい時間を過ごす。

「夜になると、仕事を終えた地元の人たちが集まって、いい雰囲気になりますね。常連さんたちと旅行に行く時は、大型バスを貸し切りにします」

千住ビアを注ぐ山口さん

山口さんが、ご近所の女性YUMIさんがプロデュースしたというオススメの「I♡千住BEER」を注いでくれた。読みは、もちろん「アイ・ラブ・センジュ・ビア」。茨城県の地ビールメーカーに製造委託した、この界わいへの愛があふれるご当地ビールだ。麦の焙煎(ばいせん)香が心地よいダークエールである。

和風タンドリーチキンを頼んだ。プリプリしたチキンには醤油とカレースパイスが馴染んでいる。タンドリーチキンとダークエールの深い味わいとの相性は最高。

和風タンドリーチキン

CURRY BAR GAKUは、味よし、居心地よしのコミュニティ酒場だった。