クローズアップ

【連載】ロングセラー追跡調査: 2014年6月号

発売以来50年、継承と挑戦のパッケージ

第24回かっぱえびせん/カルビー

2014年6月20日(金)

1964年に発売。ディレクションは、カルビーマーケティング本部。特徴小麦粉をベースにした「かっぱあられ」の最後のシリーズ商品として発売。以来、味や形状はほとんど変わらず受け継がれている。最近は地域限定、期間限定商品のバリエーションも。価格想定価格は120円前後(税込み)

 「やめられない、とまらない」というリズミカルなキャッチフレーズをテレビCMで耳にしたことがある消費者は少なくないはず。誰もが懐かしい気持ちでそれを思い出すだろうロングセラースナックが、カルビーの「かっぱえびせん」だ。初代は東京オリンピックの年、1964年に発売。今年で50周年を迎える。

 かっぱえびせんは、「かっぱあられ」という小麦粉で作ったあられの商品シリーズの1つとして世に出た。かっぱあられシリーズは、コメ不足でせんべいが高級品だった1950年代、比較的安価で手に入る小麦粉であられを作ってみようと、カルビーの創業者・松尾孝氏が考案したもの。当時、清水崑画伯が描いた「かっぱ天国」という漫画が大人気で、画伯のかっぱのイラストをパッケージに描いたかっぱあられも人気を呼んだ。そのシリーズの最後の商品が、かっぱえびせんだった。

 かっぱえびせんは発売直後こそあまり売れずに苦労したが、2~3年後に大ヒット。カルビーはほかのかっぱあられシリーズをやめて、かっぱえびせんを商売の柱に据えた。

 「かっぱえびせんの中身は発売当時とほとんど変わっていない」(島田光敏・マーケティング本部スナック事業部スナックチーム)と言うほど、そのレシピの完成度は高かった。小麦粉とエビの分量比率、えびせん1つひとつの形状(長さや溝の数、深さなど)は現在もほぼそのまま踏襲している。これが、かっぱえびせんの持ち味である軽い食感の秘密だ。

 一方、パッケージデザインに目を向けると、代々受け継ぎ、強化してきた要素と、時にそこから逸脱するかのような挑戦的な要素が入り混じっている。

 歴代のパッケージの共通項としては(1)ブランドカラーの赤、(2)筆文字風のロゴ、(3)エビのイラストなどが挙げられる。「赤×筆文字ロゴ×エビ」の3点セットは、かっぱえびせんの象徴として常にパッケージを飾ってきた。

赤×筆文字ロゴ×エビ 

 ブランドカラーの赤は初代こそ、それほど目立たないが、1981年のパッケージでは袋の面積のほぼ半分を占めるほどになっている。これは、他社から競合商品が出てきたことを受けて、「若者向けのスナック」としてのイメージを強く打ち出すためだった。赤はもちろん、原料のエビの赤に由来する。

 商品の保存性向上のため、アルミ蒸着フィルムを採用したのが1985年。それまでは透明のフィルムで、中身をそのまま見せる形だったが、これ以降は、えびせんの写真をパッケージに掲載する。

 かっぱえびせんの長い歴史において、目立って挑戦的なリニューアルが2回ある。そのうちの1つが1990年のパッケージだ。このときは、それまでの円形の白い波紋を、黄色の波模様に変更した。元気の良さ、開放感を強調する狙いだった。だが、1999年のリニューアルで、黄色い波は消えることに。「ブランドカラーの赤を最大限アピールするため、黄色を外したのだろう」と島田氏は分析する。波模様をなくした分、赤の面積を大きく取り、ロゴを大型化することでブランドを訴求する手法を取ったのだ。「やめられない、とまらない」の名コピーを採用したのもこのときだ。

 2002年の変化は、エビのイラストが抽象的になったこと。「消費者調査などで『エビのイラストがリアルすぎる』といった声があることが分かったため」(島田氏)。さらに、大型化したイラストとロゴを一体化させて中央に配置するレイアウトは、その後のパッケージの基本形となる。

 「挑戦的リニューアル」の第2弾は2007年。ブランドカラーの赤がパッケージ前面のほぼ全体を占めるのが基本スタイルとして確立しつつあったところに、あえて白を前面に出したのだ。ロングセラー商品のパッケージには、ブランドのオリジナリティーを守ることと、古臭くなることを防ぐことの両方が求められる。大胆な白背景を強く打ち出した目的も、ブランドカラーの赤をさらに引き立たせると同時に、マンネリを防ぐことだった。

 しかし、売り場に並んでいるのに「かっぱえびせんが売られていない」といった問い合わせがあるなど、“白いかっぱえびせん”は消費者の混乱を招き、売り上げも減少してしまった。結局、2012年には元の“赤いかっぱえびせん”に戻すことになった。

 2007年のリニューアルを失敗と片付けることはたやすい。だが島田氏は「黄色を大胆に取り入れた1990年、白背景に挑戦した2007年のリニューアルがなければ、かっぱえびせんの売り上げはズルズルと落ちていったかもしれない。長年、高位安定を維持してきたのは、トライ&エラーを繰り返し、良いものを残してきたから」と言う。

かっぱえびせんには、オリジナルのほかにさまざまなバリエーションがある。歴代で数えると、その数は200種類弱に上るという。現在は「期間限定」「地域限定」のバリエーションが中心。写真は期間限定の定番4種。春の「紀州の梅」、夏の「フレンチサラダ味」、秋の「韓国のり風味」、冬の「めんたいマヨ味」。どれも筆文字風のロゴとエビのイラストをベースに、味を全面に打ち出すデザイン

(花澤裕二)

この記事は日経デザイン2014年6月号の一部です。もっと読みたい方はこちら