「激動の年の瀬に考える新たな針路」

震災やタイ洪水で本当に考えるべきこと

真の課題は「戦略の転換」、それを見失ってはならない

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2011年12月28日(水)

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 東日本大震災に続いてタイの大洪水でも起きた操業停止の連鎖。東京電力福島第1原子力発電所の事故で崩れ去った安全神話、そして広がる日本企業の技術力への不信……。

 この2011年ほどモノ作り立国としての日本の威信が揺らいだ年はかつてないだろう。こうした事態を契機として日本企業が次に目指すべきものは何か。それは従来のモノ作り立国への回帰ではなく、新たな強みの構築ではなかろうか。

 モノ作り偏重から脱却した先に築くべき日本企業の新たな姿とは──。論客へのインタビューを通して模索していく。

 最終回の今回に登場するのは、経営戦略論を専攻する慶応義塾大学大学院経営管理研究科の岡田正大准教授。同氏は、日本のメーカーには震災やタイ洪水によって寸断されたサプライチェーンの見直しよりも優先して取り組まなければならない戦略上の課題があると指摘し、その処方箋を提示する。

(取材構成は、中野目純一=日経ビジネスオンライン記者)

── 東日本大震災に続いてタイの洪水でも製品の生産を停止する事態が広がり、部品のサプライチェーンの復旧や見直しが日本企業にとっての喫緊の経営課題であると指摘され、企業の側でもさまざまな取り組みが行われています。

岡田:サプライチェーンを早期に復旧させるとともに、サプライチェーンのあり方やBCP(事業継続計画)の内容を見直すことは、確かに重要な経営課題です。そのこと自体を否定するつもりは全くありません。

 現に日本企業はその復旧に際して極めて優れた能力を発揮し、これを迅速に達成するでしょう。しかし、これをもって日本企業が効果的な戦略を実行しているとは言い難い。災害からの復旧と将来への手立ては、あくまで既存の戦略の枠内でのオペレーション上・戦術上の課題だからです。果たしてそれが日本企業にとって最優先とすべき戦略上の課題であるかというと、決してそうではないと思います。

経営戦略の本来の目的を実現できていない日本企業

── では、その最優先の戦略上の課題とは何でしょうか。

岡田:既存の「先進国から新興国へ」と順番に展開する経営戦略を抜本的に見直すことです。具体的にどう見直すべきかを論じる前に、そもそも企業の経営戦略とは何かをいま一度明確にしておきます。経営戦略のゴールは、ミッションに合致した事業を成功裏に遂行することにより、結果として企業価値を持続的に増大させていくことにあります。

 ところが、日本企業は結果として企業価値を高めることができていない。例えば、東日本大震災とタイの洪水の双方で、日本の自動車産業は注目を集めましたが、日本のモノ作りをリードしているとされる日本の自動車メーカーも、企業価値を大きく伸ばすことができていません。

 それは次のグラフからも明らかです。日本のトヨタ自動車、日産自動車、ダイハツ工業、スズキ、韓国の現代自動車、起亜自動車、ドイツのフォルクスワーゲン、インドのタタ自動車、米フォードモーターの計9社について株価の増減率を、2008年11月を起点として比較したものです。実質的に、リーマンショック以降の企業価値の成長をほぼ表しています。

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 日本の3社は横ばいか減少しているのに対して、韓国の2社は現代グループの起亜が7.5倍、現代も4.5倍近くまで株価を上げています。それに肉薄しているのはインドのタタのみであり、日本のメーカーの中では最高の日産でさえ2倍未満にとどまっています。資本市場は日本企業の戦略に成長性を感じていないと言わざるを得ません。

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著者プロフィール

中野目 純一(なかのめ・じゅんいち)

日経ビジネス記者。日経アーキテクチュア、日経コンストラクション、日経ビズテックの記者を経て、2005年12月日経ビジネス記者。2012年4月から現職。



このコラムについて

激動の年の瀬に考える新たな針路

 東日本大震災に続いてタイの大洪水でも起きた操業停止の連鎖。東京電力福島第1原子力発電所の事故で崩れ去った安全神話と広がる日本企業の技術力への不信……。
 この2011年ほどモノ作り立国としての日本の威信が揺らいだ年はかつてないだろう。こうした事態を契機として日本企業が目指すべきは、元通りのモノ作り立国ではなく、そこからの脱却ではなかろうか。
 モノ作り偏重から脱した先に築くべき日本企業の新たな姿とは──。論客へのインタビューを通して模索していく。

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