谷島(宣之=日経BPビジョナリー経営所):『素敵な総合造形計画』は優れたモノやコトが持つグランドデザイン(総合造形計画)を、情報システムのデザインワークを長年手がけてきた桑原さんと読み解く企画です(連載主旨については第1回「わくわくしながら、しっかり稼ごう」を参照)。今回の題材は何でしょうか。
桑原(里恵=札幌スパークル):コンシューマー向けのIT製品を使って思いがけない付加価値を生み出している例を通して、技術を生かす発想について考えたいと思います。
最初は、マイクロソフトのKinectを使って小売店の買い物客を追跡し、陳列の効果や買い物客の動線を分析するアプリケーションを選んでみました(関連記事「KinectアプリShopper Trackerは小売店(物理店舗)のためのGoogle Analyticsだ」)。
ゲーム機で買い物客の動きをとらえる
谷島:アルゼンチンのAgile Routeという会社が作ったものですね。Kinectはマイクロソフトのゲーム機Xboxを操作するコントローラーで、機器に触れずに、手振り、身振りだけでゲーム機を操作できることが売り物です。
桑原:ビデオカメラと複数のセンサーを使って人の全身を認識し、その動きを追跡する「姿勢認識技術」が使われています。Kinectはその前に立っている人までの距離を測り、それによって描き出した深度画像を膨大な学習データにぶつけて、人体のパーツがどこにあるかを推測し、その人の骨格を導き出します。その上で骨格の変化をリアルタイムに追跡する。Kinectは1秒200フレームという速さで画像を処理していきますから、人の動きに時差なく反応できるのです。
今回紹介するKinectを使ったアプリケーションは、店舗の陳列棚の上などに設置したKinectによって、棚の前を通ったり、商品を手に取るお客さまの動きをキャッチしています。そのデータを即座に分析・加工して、棚と商品に対するお客さまの反応をグラフィカルに表示します。
谷島:いきなり使えるのですか。
桑原:Kinectは初期姿勢の設定がいりません。来店した買い物客が棚の前に立ち、動くだけで、データがつかめます。棚の前に人がいるという単純なデータだけでなく、棚の前でどういう動作をしたのかまで把握できます。設置場所は棚に限りません。
このアプリケーションは、Kinectが把握し、追跡した結果をデータとして取り込み、商品の配置情報とぶつけることで、どの商品を手にしてどの商品をカゴに入れたのかまでを明らかにしています。お客様がよく立ち止まる棚、棚の前にいる時間、手にする商品、実際に購入する比率などを分析することができます。
谷島:ゲーム機の操作以外にKinectは使えるのですね。
桑原:現在、多様なアプリケーションの実現に向けて、マイクロソフトからKinect用ソフトウエアを開発するためのツールキットが提供されています。もともとKinectはゲーム専用として登場しましたが、今では、Windowsのアプリケーションやロボットと組み合わせて使えるようになっています。
谷島:離れた所から機器に手を触れずに操作できるので、医療分野をはじめ様々な現場でKinectを使う取り組みが進んでいるようですね。
桑原:ええ、沢山あります。医療ではカナダの病院が外科手術中にCTなどの画像表示をコントロールするために使った例が有名です。日本でも事例があります。
小売業ですとKinectを使った試着システムの例がよく知られています。鏡の前に立ち、手を振るだけで、鏡に映った洋服が次々に替わります。実際に着替えず試着できるわけです。3Dスキャナーとしての利用も増えています。このアプリケーションと似た使い方ですね。
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