『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)という奇妙なタイトルの本が2011年12月に出版されました。グレイトフル・デッドとは1960年代にサンフランシスコで誕生したヒッピーカルチャーを象徴するバンドで、日本では「知る人ぞ知る」存在ですが、ビートルズやローリング・ストーンズと同じくらいの歴史があり、アメリカではなお人気を誇っています。
この翻訳書のキモは、インターネットによって実現される「フリーミアム」や「シェア」といった最新のビジネスモデルを、実はグレイトフル・デッドが40年前から実践していた、というところ。しかしその方法論からは、マーケティングだけでなく「生き方や震災の復興についても学べるところがある」と、監修と解説を手がけた糸井重里さんは語ります。
インタビューから、1998年に糸井さんがスタートさせた「ほぼ日刊イトイ新聞」と、グレイトフル・デッドの間に、意外な共通点が見えてきました。
(聞き手:鈴木あかね)
―― この本に書かれている方法論やテクニックは、「コンテンツを無料で公開しよう」「コミュニティを大切にしよう」というもので、糸井さん自身が「ほぼ日」でやられてきたことと重なります。そうした方法論を誰もが実践できるように、詳細に分析し、紹介している本だなと思いました。

糸井:「アメリカ人的」に言うとそうですね(笑)。でも、「日本人的」に言うと、ちょっと違うんだなぁ。
誰もがやりそうな戦略ではなく、違うことをやって価値を見出そう、ということですね。
―― というと?
糸井:近所の子供がお使いに行って千円札をなくしちゃって、必死に探している姿を見たら、こっちもスイッチが入ってなんとか手を貸してあげたいと思いますよね。それは、大昔から人が持っているすごい価値です。それこそ、「腹が減ったから飯がうまい」というのと同じような普遍性がある。
グレイトフル・デッドは、ライブに来たお客さんに録音を自由にさせて、録音したテープをファン同士が交換するのを許していた。そんなバンドはほかになかったわけだけれども、そうすることに価値があることに彼らは気づいていた。
バンドマンって、最初はただモテたかったり、ほかに特技がないからギターやってるんだけど、そうやってお客さんに喜んでもらったりしているうちに、スイッチが入ってその本質的な価値に気づくのでは。
いい人になるとビジネスがまわりだす
糸井:このごろ、ぼくは自分について思うんだけど、ずいぶんと「いい人」になっています(笑)。これはおかしいなと思っててね。
―― 糸井さん、昔は悪い人だったんですか(笑)
糸井:昔だって悪い人とは言えなかったし、取るに足らないものだったけれども、人間、若い時のほうが間違いなく悪いですよ。社会的適合性を無視して自分の欲望を語れるから。
でも、ほぼ日を始めてからこの14年間で、興信所の人が後をつけてきても一点もスキがないくらいの人間になっちゃいました。これはまずい(笑)。
―― まずい(笑)
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