2011年3月11日に起きた東日本大震災──。大津波や原発の事故を誘発し、戦後最悪の被害をもたらした未曾有の巨大複合災害は、バブル崩壊後の日本企業の経営が内包してきたさまざまな問題を表出させた。
その反省から企業は自らのあり方を再考する必要に迫られる。その機運を捉えて日経ビジネスオンラインでは、震災1カ月後からコラム「復興の経営学──ここから始まる経営再創造」を連載し、日本企業が追求すべき新たな経営のあり方を模索してきた。発端となった震災の発生から1年。ここで経営再創造の道筋を改めて問う。
2回目の今回は、「復興の経営学」にも登場していただいた加護野忠男・甲南大学特別客員教授に再び日本企業が浮上するための条件を聞く(関連記事:復興の段階では冷めたリーダーが必要になる)。
加護野教授は、震災から1年の間に反転のきっかけをつかめなった日本企業を蝕む根深い問題点を指摘。それを踏まえて、具体的な処方箋を提示する。
(取材構成は、峯村 創一=フリーライター)
(前回の野中郁次郎・一橋大学名誉教授に聞くから読む)
東日本大震災が起きてから1年が過ぎようとしている。
あの震災のちょうど1カ月後、私は本サイトで「この未曾有の危機をきっかけに、日本企業の抱える問題を直視せよ」と訴えた。
震災の痛みは甚大である。しかし、これを機に日本企業自らが抱えているさまざまな問題と向き合い、膿を出し切ることができれば、再浮上のきっかけをつかむ可能性があると感じていたのだ。
しかし、1年を経た今、日本企業の抱える問題は一段と深刻化しており、改善の方向に向かっているとは言い難い。確かに、震災の被害から立ち直りつつあった企業に新たな打撃を与えたタイの大洪水や超円高といった外的要因も大きいだろう。しかし、業績悪化の最大の要因は、やはりその企業の内部にある。
日本は昔から「現場力は強いが、戦略が弱い」と言われてきた。現在に業績不振にあえいでいる企業はどうかと言えば、戦略が弱いところもあれば、現場力まで弱くなったところもある。問題の所在は企業ごとに異なっている。
米国型の企業統治で失敗したソニー
例えば、全般的に不調を極める日本のエレクトロニクス産業の中で、「戦略が失敗した」代表格はソニーである。薄型テレビ用の液晶パネルの開発に出遅れて、プラズマや有機ELに活路を見いだそうとした。しかし、プラズマは市場から撤退を余儀なくされ、有機ELは携帯電話などへの実装にとどまり、行き詰まった。
そこで、再び液晶で戦おうと、2004年4月、韓国サムスン電子と合弁会社を設立し、大型液晶テレビ向けの液晶パネル生産に乗り出す。ところが結局、ソニーは技術やノウハウをサムスンに供与した末に、昨年12月にこの合弁を解消することを発表した。
このような場当たり的な対応を次々に打ち出すことになった原因は、ソニーのコーポレートガバナンス(企業統治)の失敗にあったと私は見ている。出井伸之氏がCEO(最高経営責任者)在任中に米国型のガバナンスを取り入れたが、うまく機能しなかった。さらに、井深大氏や盛田昭夫氏ら創業者世代の遺伝子が後の世代に受け継がれず、技術の会社がいつの間にかマーケティングの会社になってしまった。
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