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戦略的 インキュベーションも重要な本社の仕事

多角化でM&Aより先にやるべきこと

2012年3月29日(木)

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 「本業が頭打ちなので、買収を活発に行って多角化を図っていたら、雑多な事業の寄せ集めのようになってしまった」―――実在する会社の例だが、いくら「左脳的な企業価値」を重視してマネジメントサイクルをうまく回したとしても、これでは投資ファンドと同じである(投資ファンドのように投資のプロフェッショナルとして生きていけるならまだマシかもしれない)。

 多角化を成功させるのは難しい。もともと、資本市場にいる投資家は企業に対して多角化などは望んでいない。彼らの座右の銘は「分散投資」である。投資の対象を複数の資産に分散すればするほど、個別の資産だけに投資した場合に比べてリターンを下げることなくリスクを下げることができる。リスクアセットの「リスク」の変動パターンはそれぞれ異なるので、お互いにリスクの一部を打ち消し合うことによりリスク低減が見込めるからである。

 この考え方でいけば、分散投資ができる資産の数が多ければ多いほど効果が見込めることになり、それを実現できる場所が「市場」ということになる。もちろん、市場全体に影響を与えるリスク(市場リスク)は消滅しないが、各資産固有のリスクは低減される。こうした“リスク低減措置”が市場に既に備わっているとすると、企業の多角化には意味がない。これが投資家の基本的な考え方である。

 従って、もし食品と不動産と電機からなるポートフォリオがそれぞれにリスクを打ち消しあう資産であると考えた投資家がいたら、それぞれの事業を専業で行っている企業を選んで自ら投資ポートフォリオを作りたいと思うのが自然である。

企業多角化は基本的に投資家の意向に反する

 企業が自身で多角化を行うのは、こうした投資家の意向に基本的に反する。せっかく食品セクターから一社選んで食品のポートフォリオ構成に役立てようとしたのに、その食品企業が医薬事業も不動産事業もやっていると、最初にたてた投資方針がくるってしまう。不動産のリスクを余計に取ってしまうことになるし、取る予定のなかった医薬事業のリスクなどがおまけに付いてくるのは避けたい。投資家としては、「多角化」企業というのは、投資方針を狂わせる困った存在ということだ。

 だが、そう言われても企業の側も困るだろう。企業の側だって、ある程度リスク分散をしたい。次の成長に向けた芽も育みたい。ここでは詳しく触れないが、多角化によって得られるメリットもたくさんあり、企業としてはぜひこれらの果実は獲得したい。こうした時に、企業の側の多角化を正当化する理由、言い換えれば、投資家が企業の多角化を甘んじて受け入れる理由は、以下の二つしかなく、二つとも充足されていなければならない。

 ひとつには、投資家によるポートフォリオ運用よりも、多角化した事業会社によるポートフォリオ運用のほうが優れている場合。要は、投資家よりも上手に期待リターンを生み出せるような事業会社である場合である。当然、これには「左脳的な企業価値」を向上させる仕組みが相当しっかりしていなければならない。

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「戦略的 インキュベーションも重要な本社の仕事」の著者

松田 千恵子

松田 千恵子(まつだ・ちえこ)

首都大学東京大学院教授

1987年東京外国語大学外国語学部卒業。2001年仏国立ポンゼ・ショセ国際経営大学院修士。日本長期信用銀行、ムーディーズジャパンを経て、コーポレイトディレクションなどでパートナーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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