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経営者は株主に、きちんと「監督責任を転嫁」すべし

企業統治と情報公開が「きれいごと」ではない理由

2012年4月5日(木)

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 ここまで見てきたのは、本社の「グループ内投資家機能(第3回 買収された欧米企業が日本の本社に対して持つ強烈な不満)」および「グループ内戦略的シナジー発揮&インキュベーション機能(第5回 戦略的インキュベーションも重要な本社の仕事)」である。ピュアに投資家として、投資先の事業の将来を見極め、その企業価値を評価する、という仕事もあれば、より戦略的な役割として、シナジーの発揮を支援し、新しい芽を生み出す、という仕事もあった。

 こうした仕事は、主に企業における「左脳的な企業価値」、具体的に言えば「中長期的な将来のキャッシュフロー生成能力の総和(これについては第3回参照)」を向上させる。だが、企業が左脳だけで動いているわけではないのは既に述べた通りだ。ここから先は、投資家としての役割ではなく、グループの代表としての役割についてみていきたい。

 投資家としての本社が「左脳的」な部分を見るのに対し、グループ代表としての本社は、「企業が希求し提供していきたい価値」を司る。

 本社は、外に向けてはグループを代表して経営資源(人・モノ・オカネ)の調達を行い、グループが目指す価値やその方向性などを発信して、自社グループをとりまく利害関係者との関係を維持、向上させていく役割を負っている。一方、内部に対しては、「なぜグループとしてひとつでいることがよいのか」を発信し、グループの結束力を高めることが重要だ。

 これらの成否は、右脳的な企業価値を大きく左右する。

 1.外部に向けた、グループ代表して経営資源の獲得を行う機能
 2.内部に向けた、グループをひとつにしていく機能

 これは第2回「グローバル化の失敗は本社の責任です」でちょっとだけ触れた「束ねる力」だ。個の力には、外向きと内向きの両方がある。まずは外向きから。

あなたの会社の周りにいる人々

 企業の外側、あなたの会社を取り巻く関係者達には、どのような人たちがいるだろうか?

 まず、「やりたいこと」(事業)の先に「お客様」がいる。「お客様」が企業の作ったモノや提供するサービスを認めてオカネを払ってくれないことには何も始まらない。

 モノやサービスを企業が作り出すにあたっては、その原材料などを提供してくれる「取引先」の人々も必要だ。発注する企業側から見れば「原価」なり「販売管理費」などの形で費用を支払う存在だが、「今度はこちらが客だ」とばかりに、過度に値切ったり、納得のいかない業務ばかりを押しつけたりすれば、彼らの方から付き合いを断られてしまうだろう。

 この「やりたいこと」のために、「先立つもの」(財務)を手当してくれる人たちも必要だ。金融機関や株主の皆様だ。

 オカネを借りれば「債権者」という人たちとのお付き合いが始まるし、返さなくてよいオカネを都合しようとすれば、用立ててくれるのは「株主」たちである。株式会社、という形態であるからには、株を持っている株主というのは特別な存在だが、これはまた別途考えよう。

 さらに「取り組む人」(組織・人材)に関係する人たち、即ち「従業員」も忘れてはいけない。「取引先」同様、金払いが悪かったり、あまり感心できない業務ばかりやらせていたりすると、辞めて他に移ってしまうかもしれない。また、大量生産・大量消費が主だった時代にはなるべく均質な「労働力」としての“人材”という位置づけが強かったが、最近は、多様な情報の質やスピードが企業の成功を決める時代となり、同じような頭で考えるより、色々違った頭で考えることが重要になってきた。

ステイクホルダーからの「規律付け」が「企業統治」

 企業を取り巻く人たちには、「国や地域社会」も含まれる。昔は単に税金を取るだけ、規制を守らせるだけ、の“お上”と対峙していればそれでよかったが、最近では工場をひとつ作るのでも、その地域の人たちと十分に話し合い、環境の問題などを乗り越えていく必要が生じる。NGOやNPOなどが、企業が社会において無責任なことをしていないか監視したり、あるいは逆に社会に対して素晴らしい貢献をした企業を表彰したりすることも多い。

 これら、企業活動に何かしら関係してくる人たちをまとめて呼ぶと「利害関係者」になる。英語では「Stakeholder(ステイクホルダー)」というのはご存じの通り。何かしら利害があるので、企業も無関心ではいられない。こうした人々と付き合いながら、「やりたいこと」を実現するために必要な経営資源を効果的・効率的に獲得してくるのは本社の重要な仕事である。

 だが、実際には企業の「やりたいこと」を当初から分かってくれて、手放しで応援してくれる利害関係者はごく少数だ。「とにかく環境に悪いことは絶対反対」「そもそも、そんな会社知らないけど」といった人たちも沢山混じっている。こうした人たちを蹴散らしてとにかく「やりたいこと」をやればいいか、といえば、それはあまりにも我儘だ。「支払うもの支払えばそれでいいんだろう、何の文句があるんだ」という態度では、傍若無人なガキ大将か、ガラの悪いおにいさんと変わりはない。

 人間が一人では生きていけないように、企業も一人だけで儲けることはできない。企業は社会的な存在なのだから、それに見合った責任を持ち、オトナの行動をしてほしいこれを「企業の社会的責任」(CSR、Corporate Social Responsibility)と言ったりもするが、詳しくはまた次回に見ることにしよう。ここでは、企業を取り巻く利害関係者が企業に対して「オトナの行動」をさせるよう、規律付けを働かせる、という点に注目してほしい。

 グループ経営において「経営資源調達のために利害関係者と関わる」ということは、企業はこれらの利害関係者からの規律付けに対応する必要があることもまた示す。

 この「利害関係者からの規律付け(第一義的には経営者、取締役会と株主の間の関係)」が「企業統治」だ。

 非常に重要でありながら、「きれいごと」と捉えられることも多く、議論の拡散しがちなテーマでもある。

コメント2件コメント/レビュー

もたれあいですな。そこで上手く泳ぐと利益を得られる。ゴマすり役員は責任感などないでしょう。東電会長の下にいる社長たちのごとく。(2012/04/05)

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「経営者は株主に、きちんと「監督責任を転嫁」すべし」の著者

松田 千恵子

松田 千恵子(まつだ・ちえこ)

首都大学東京大学院教授

1987年東京外国語大学外国語学部卒業。2001年仏国立ポンゼ・ショセ国際経営大学院修士。日本長期信用銀行、ムーディーズジャパンを経て、コーポレイトディレクションなどでパートナーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

もたれあいですな。そこで上手く泳ぐと利益を得られる。ゴマすり役員は責任感などないでしょう。東電会長の下にいる社長たちのごとく。(2012/04/05)

質問~。今回の記事はオリンパスへの標榜に映りますが、これが東電だと企業統治という視点で見た場合の問題点はどこでしょう?(2012/04/05)

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