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「やっぱりやけくそって大事ですよ、今の日本じゃできませんが」

腐りやすい「竹」を許容した中国の“包容力”

2012年4月10日(火)

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 建築家の隈研吾は、2002年から中国という新たな巨大市場と本格的に関わるようになった。が、かの国は、それまでの“世界標準”の常識が通用しない世界。理不尽に思えるやり取りを重ねながら、「この国は僕らとは違う原理で動いているんだ…」と、驚がくすることしかり。しかし、背後にある「中国ウン千年の知恵」を理解した時から、急にその攻略法が見えてきた。中国ウン千年の知恵とは? そして突破法とは?

(取材構成は、清野由美=ジャーナリスト)

(前回の「えっ、グローバリゼーションで建築家が競走馬に?」から読む)

── 前回は、地球上で最もホットな建築市場、中国の話をうかがいました。中国と言えば環境破壊国家というイメージも強い中、隈さんのご経験では、中国の都市建設で今、最も重視されているのが「環境」と「文化・歴史」である、という事実が意外でした。

:「環境」と「文化・歴史」の文化・歴史について言えば、今の中国の都市開発のキーワードは、まさしく「歴史の温存」なんですよ。日本人はよく「中国では開発によって伝統が破壊されている」とか、「自分たちの方が進んでいる」とか錯覚していますが、中国はここに来て、開発の要件として、その土地が持っている歴史的なものや文化的遺産に対して配慮しよう、ということを僕にも強く言い始めたんです。

── 日本ではそういうことはないのですか。

:例えば日本の建築保存運動は、ヨーロッパと違って保存運動自体の歴史がないから、ともすると懐古的、情緒的な方向に偏りがちで、都市のオペレーションの手段としての保存という「大人」の解決法にはなかなか到達しません。

建築の保存に関しては中国が「大人」?

── 中国は「大人」なんですか。

:「都市のオペレーションの手段としての保存」とは、つまり、経済成長に対応する保存ということです。都市に高層ビルが建たないような保存では、中国の経済成長の原理とは合わなくなるわけだから、高層ビルを建てながら、その中に文化的な歴史を保存しろ、ということを、中国側は強く言ってくるわけです。彼らが保存に求めるものは、懐古とか情緒とか以上に、どうしたらお金を生み出すか、ということです。中国の官僚制は、何千年の歴史のせいか、建築保存でも、そのような「大人」の表ワザ、裏ワザで社会を巧みに誘導します。

── 例えば日本でそういう開発はありますか。

:日本で言えば、表参道の同潤会アパートの跡地開発だった「表参道ヒルズ」で、同潤会アパートの1棟を残しましたよね。実際は保存じゃなくて、壊して再建したわけだし、その1棟を残しただけで、ほかは巨大な再開発ビルに生まれ変わったわけだから、あれを手がけた安藤忠雄さんなんかは、中国向きの「大人」と言ってもいいかもしれないですね。

── 日本でも大規模再開発の場合、表向きはかなり「文化」を意識するようになっているとは思うのですが。

:ここからが肝心なのですが、中国と日本が決定的に違うのは、例えば中国では「環境」と「文化・歴史」を論じる場合、全部がネゴ・ベースで、官僚との個別のネゴで全部が決められるところなんです。

 ネゴシエーション(交渉)をベースにするというのは、いわゆる近代の法治国家においては、あり得ないことだったはずですよ。ヨーロッパでもアメリカでも日本でも、客観的な法的基準が最初に設けられて、それに沿って建築も何もが作られる。

── 一律に。

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「「やっぱりやけくそって大事ですよ、今の日本じゃできませんが」」の著者

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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