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経済学で見れば「格差」は悪いことではない

小野浩・米テキサスA&M大学准教授インタビュー(2)

2012年4月19日(木)

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小野浩・米テキサスA&M大学社会学部准教授は、「新しい経済の教科書 2012」に再録した「ワークライフバランスは女性を幸せにするか?」で、女性の幸福度と育児や仕事との関係について社会経済学の視点から分析していました。1回目のインタビューでは、分析の背後にある経済理論について説明していただきました。2回目の本稿は小野准教授に、社会学、経済学、心理学、さらには政治学にも広がっている「幸福」を研究するトレンドと、その限界を紹介してもらいます。(聞き手は広野彩子)

1回目で、働いている日本人女性の幸福度は低いというお話がありました。それが米国の既婚女性でも同じようにデータに出ているのはなぜなのでしょう。男性もそうなのですか。

小野:実は男性は違うのです。そこが経済学と社会学の違いだと思います。男性のアイデンティティーは仕事にあり、しかも国を問わずにそうなのです。国際比較調査を30カ国やって、30カ国全部、そうした結果が出てきました。

「男は仕事を通じて幸せになる」

 定量分析で、仕事をしているか、してないかという要素が結果に与える影響を排除して解析すると、女性の場合では仕事についていてもまったく統計的な有意性がないのです。仕事をしていても仕事をしていなくても関係ない。30カ国でそうでした。ところが男性は、統計的に有意だった。男性はどの国でも「仕事をすべきだ」というアイデンティティーがまだ根付いているのでしょう。

小野 浩(おの・ひろし)
米テキサスA&M大学社会学部准教授。1999年、米シカゴ大学社会学博士(Ph.D.)。ノーベル賞経済学者であるゲーリー・ベッカー米シカゴ大学教授に師事。スウェーデンのストックホルム商科大学准教授を経て2007年米テキサスA&M大学社会学部助教授、2010年から現職。専門は計量社会学、労働経済学。
(写真:陶山 勉)

 男女平等社会と言っても、僕は個人的には何をもって男女平等というべきなのかと疑問を持つわけです。例えば男女賃金格差の100%解消がすべて、男性と女性の格差をなくすことにつながると思う人もいる。果たしてそれが「ハッピーな社会か」と言ったらそうではないと思う。

 経済学を学んだ人なら分かると思いますが、無理やり仕事をしたくない人に仕事をさせて格差をゼロにするということは、1回目にもお話した比較優位の考え方からしてもどこかで非効率が生まれる。

 貿易理論にたとえると、仮にブラジルはコーヒー、タイは米で比較優位性があったとしたら、ブラジルに米の貿易、タイにコーヒーの貿易を強いることはお互いの国にとって効率が良くないということです。

 確かに現状、私たちは完璧な社会には住んではいません。でも仮に完璧な社会になったとしましょう。機会の平等がきちんと整備され、そこで各人が自分たちの選択で仕事をした結果男女格差が生じたとする。でもそれは、自然に生まれた格差になりますね。もしそうであれば、それを是正する必要はないでしょう。

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「経済学で見れば「格差」は悪いことではない」の著者

広野 彩子

広野 彩子(ひろの・あやこ)

日本経済新聞社NAR編集部次長

朝日新聞記者を経て日経ビジネス記者、2013年から日経ビジネス副編集長。日経ビジネスオンラインでコラムの執筆・編集を担当。入山章栄氏の著作『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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