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連載その2 幸せだけどお金を使うことに慣れていないブータンの人々

2012年4月19日(木)

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 昨年、日経ビジネス オンラインで連載していた「ブータン公務員だより」。その著者で、初代首相フェローを1年間務めた御手洗瑞子さんが、書籍『ブータン、これでいいのだ』(新潮社)を上梓した。
 近年、中国とインドに挟まれたアジアの小国人口70万人のブータンに、日本をはじめ世界中の注目が集まっている。GDP(国内総生産)ではなく、GNH(国民総幸福量)の国。昨年は新婚の国王夫妻が来日し、被災した東北地方を訪れることで、日本でのブータン人気はさらに加熱気味。でも、「幸福の国」のイメージだけでブータンは語れない。「ほんとうのブータン」の素顔を、ジャーナリスト清野由美さんを聴き手に、御手洗さんが語る。『ブーこれ(ブータン、これでいいのだ、の略)』と併読して御楽しみください。

清野前回の最後で、ブータンの恋愛と結婚事情を御手洗さんにおうかがいしました。そこで出てきたのが「夜這い文化」について。その続きからですが、簡単にまとめますと、
○ 男性が朝までいたら結婚が成立する。
○ 朝を迎える前に男性が追い出されたり、帰ったりしたら、結婚は成立しない。
ということで、帰りどきの微妙な時間で、その後がどうやら決まる、というのがなんとなくわかりました。

御手洗:とは言っても、「夜這い」の慣習は別にそんなに突飛なことではなくて、要は村社会ゆえのことなんです。例えば人口が100人ぐらいしかない村だったら、お年ごろの人なんてもう10人ぐらいしかいない、というわけで、基本的にみんなが知り合いです。

 その中で、誰と誰がくっ付くんだろうな、というのが全部見えていると、そういう話なんですよね。この日本の都会を想像して、知らない人が夜にやって来て、何かされたから結婚か、みたいなこととは、全然違うと思います。

清野:ということは、学生時代のサークルみたいな規模だ、と思えばいいのでしょうか。

御手洗:誰々と誰々が付き合ったけど別れたらしいとか、あそこはそのまま結婚するらしいよ、といった話で。

御手洗瑞子さん

清野:というふうに理解すれば、ああ、なるほどとなります(笑)。

御手洗:そうですね。ただ例外はあります。首都ティンプーがそうです。過去5年で人口が2倍になり、一気に10万人都市になってしまったんですね。なので、ティンプーはコミュニティ=村落共同体というよりはソサエティ=地域社会のような規模に変わりつつあります。ほぼ全員が全員を知っているという状態ではなくなっています。そういう「都会」ではもはや夜這いは禁止です。恋愛とレイプとの境目がわからなくなりますからから。

清野:それはそうですよね。

御手洗:日本の知人からよく、「ブータンには夜這いがまだ残っているんだって!?」と、聞かれたのですが、地域のサイズとか、それによる人の距離感というコンテクストがないと、誤解が生まれてしまうなぁと思いました。

清野:日本のように人口大国になると都会はもちろん地方でも、地域社会で知っている人のほうが少ないのが当たり前になりますが。

御手洗:その意味で言えば、ブータンという国は、都会でももう本当に知り合いが多くて、うかつに下手なことは言えないんですよね。職場で同僚に、「「あそこのレストランは、高いわりにそんなにおいしくないよね」なんて言ったら、実はそのレストランのオーナーは同僚の従兄弟だったりして(笑)。

 あと、ブータンでは婚姻関係の縛りもわりとゆるく、結婚と離婚を繰り返す人も多いので、みんな、やたらと親族が多いんです。

清野:なんだかブータンの社会自体が大きな家族みたいなんですね。

コメント3

「帰ってきた ブータン公務員だより」のバックナンバー

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「連載その2 幸せだけどお金を使うことに慣れていないブータンの人々」の著者

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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