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「女のオジサン」を増やすことがダイバーシティではない

企業は人なり、で思考停止している日本企業

2012年4月26日(木)

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 さて、グループ経営を考える旅もいよいよ終わりに近づいてきた。最後のテーマは、内部に向けてグループをひとつにしていく代表者としての機能についてだ。ここからは、「右脳的な企業価値」がどんどん大事になってくる。グループにある様々な事業、そして様々な人々を束ねていくには何が必要か。

「企業は人なり。結局はやっぱりヒトが全てなんだよなあ」と言いたくなるところだが、口に出した瞬間、そこで思考が停止する。「人材の活用」だな、という結論が出て、後はやたらと細かい人事施策に全てが委ねられてしまうだろう。

 経営者が語る「人材、あるいは人財(個人的にはこの言葉はわざとらしくて嫌いなのだが)の大事さ」という“大きな物語”と、やたらに細かい人事細則の間に、「人事戦略」が抜けている。一介の担当者が作る細則が妙な力を持ち、本来持つべき重要な視点が失われていることが多い。

 人事戦略の視点から見た、日本企業が世界でグループ経営を成功させるための最大の課題は、「多様性の受容、あるいは確保」だ。「ダイバーシティ・マネジメント」などとも呼ばれるが、前回の「企業統治」や「情報公開」同様、これまたきれいごととしてとらえられがちだ。

 多様性の受容・確保を福利厚生や法令遵守の一環、あるいは社会的責任や教育責任を果たすこと、と捉えている企業もある。「ダイバーシティ推進室」などを作って、体裁を整えるために一応“やっている”感を漂わせている企業もある。こうした風潮により、ダイバーシティという言葉自体が、既に手あかが付いたもののようになっている。

手あかが付いても、うまくやっている企業はごくわずか

 しかしその本質は依然としてほとんど理解されていない。「“個”の違いを尊重すること」というと何やら当たり前のように聞こえるだろうが、実際にこれをうまくやっている企業は少ない。従って、ダイバーシティ・マネジメントやグローバル人材に関するセミナーには、いつも同じような顔ぶれのごく少数の企業が成功例として取り上げられることになる。

 もともと、同じような大学を出て、同じような就職をして、同じ性(男性)の日本人だけが同じ会社に居続けて会社の運営をしていれば、異質な人間を排除、あるい同質化しようとする意識は自然と強くなるものだ。これが日本企業のグローバル対応を難しくしている。多様性の確保と言うと条件反射のように女性活用(この言葉に関する問題は既に指摘した)という言葉が出てくるが、女性だって同じ会社に20年もいれば同じように頭は固まってくる。

 「女のオジサン」を増やすことがダイバーシティではない。日本企業のグローバルなグループ経営において最も重要な多様性の確保は、まず中途採用者に本来の実力を発揮してもらうことであり、組織の壁をぶち破るローテーションを活発化させることであり、海外各拠点にいる優秀な人材をリーダーとして選抜し、公平に育成することだ。これは決してきれいごとではない。はるかに生々しい、自社にとっての競争優位の源泉を確保するためのことである。

 例えば、マーケティングを考えてみよう。

コメント12件コメント/レビュー

【多様性企業 vs 一様性企業】 多様性を阻む敵は、実は”平等主義”だったりもする。というのは、従来の平等主義的な人事制度のもとでは、個性のある人間や、異能の人間は、むしろ多様性の芽を摘み取られてしまい、悪平等主義がはびこるなかで、真の問題意識・目的意識の発揮が不可能となってしまう問題が生まれてしまう。今多くの日本企業が、欧米流の平等主義に走り、平等という名の一様性のみを追い求めてきた結果、ソニーやパナソニックを始め、多くの日本企業が衰退していった。欧米もだが。誤解のないよう言いたいのは、決して私は平等主義に反対するレイシストなのではなく、旧来の欧米流の平等主義に疑問を持っているだけだということ。男性と女性、老いと若き、異端児と平坦児・・・、性差や、さまざまな個差を受け入れた上で、互いが互いに敬意のない関係に真の多様性など生まれることはないからだ。(2012/04/26)

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「「女のオジサン」を増やすことがダイバーシティではない」の著者

松田 千恵子

松田 千恵子(まつだ・ちえこ)

首都大学東京大学院教授

1987年東京外国語大学外国語学部卒業。2001年仏国立ポンゼ・ショセ国際経営大学院修士。日本長期信用銀行、ムーディーズジャパンを経て、コーポレイトディレクションなどでパートナーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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【多様性企業 vs 一様性企業】 多様性を阻む敵は、実は”平等主義”だったりもする。というのは、従来の平等主義的な人事制度のもとでは、個性のある人間や、異能の人間は、むしろ多様性の芽を摘み取られてしまい、悪平等主義がはびこるなかで、真の問題意識・目的意識の発揮が不可能となってしまう問題が生まれてしまう。今多くの日本企業が、欧米流の平等主義に走り、平等という名の一様性のみを追い求めてきた結果、ソニーやパナソニックを始め、多くの日本企業が衰退していった。欧米もだが。誤解のないよう言いたいのは、決して私は平等主義に反対するレイシストなのではなく、旧来の欧米流の平等主義に疑問を持っているだけだということ。男性と女性、老いと若き、異端児と平坦児・・・、性差や、さまざまな個差を受け入れた上で、互いが互いに敬意のない関係に真の多様性など生まれることはないからだ。(2012/04/26)

■理念、ミッション、バリューに絶対的価値を置いてみてしまえばそのとおりで簡単ですが、実際はそうなっているのでしょうか。■理念、ミッション、バリューさえも人それぞれの多様な見方のなかにあるでしょうから、組織もステークスホルダーに対して理念などで正統性を確保するだろうし、個人も組織に対してそう見えるように実践しているように振る舞うでしょう。■そのくらいまで踏み込んで議論しないと、それこそ思考停止してしまいそうに見えてしまいます。(2012/04/26)

(五字が多かったので再送)松田さんの言ってることは、言い換えれば企業文化の醸成と定着です。創業者のいる企業にはコレがあり、いい意味で頑なにそれを守ることで多様性を受け入れてもぶれない企業になります。それが浮き沈みはあっても成長し続けている企業でしょう。翻ってこうしたことができない企業は装置産業あるいは設備投資産業といわれる業態です。業種(扱うサービス)によってはドメスティックな場合もあり、グローバルという観点の多様性を体感できる機会が極端に少ない場合もあります。通信、鉄道、電力、上下水道(自治体の直接運営が多いですが)、ガスなどがわかりやすいところです。これらの業態は、創業者が訓じ、事業の中で実践して染み付いた文化というものがありません。したがって多様性などというと一気に組織がバラけてしまうリスクが上がるのでよほどの理由がない限り多様性の尊重を嫌います。その結果、有能な個人を無能な組織のメンバーとして生涯飼い殺す人事制度が生まれるのです。コレが企業文化がない企業の実態です。こういった企業は企業文化の醸成には10年単位の時間がかかることの覚悟もなく、幹部は最もらしく自分たちの短期評価が得やすい「成長戦略」をまず作ってといって面倒で時間がかかるところから逃げてしまいます。業績好調のうちは企業文化がないことは見過ごされます。が、だめになたとたんんよりどころのない企業はいろんな場面で保身のエゴによって分裂していきます。そこまで議論してほしいところです。(by名大OB)(2012/04/26)

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三品 和広 神戸大学教授