「インタビュー」

“独裁者”スティーブ・ジョブズの真実

iMacの「名付け親」が明かすアップルのシンプル経営

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2012年6月22日(金)

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 アップル創業者の1人であり昨年に亡くなった前CEO(最高経営責任者)、故・スティーブ・ジョブズ氏。同氏から厚い信頼を受けてアップルの広告キャンペーンを数多く手がけてきたのが、ケン・シーガル氏だ。同社が経営破綻寸前の危機的状況にあった1998年に発売し、復活に向けてのろしをあげたデスクトップパソコンの「iMac(アイマック)」の名付け親であり、「Think Different」のコピーで有名な同社のキャンペーンの仕掛け人としても知られる。

 このほど、ジョブズ氏と仕事をした経験などをまとめた著書『Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学』(NHK出版、原題は“Insanely Simple”)を上梓。ジョブズ氏との仕事を通じて体得した、大企業病を克服するための「シンプル経営」について、これまで明らかにされてこなかったエピソードを織り込みながら紹介している。本インタビューでは著書にも記されていない話も交えて、ジョブズ氏の人となりや仕事にかける情熱などを語った。(聞き手は広野彩子=日経ビジネス記者)

著書の中で、「iMac」の名前を考えた時のエピソードを紹介されていました。スティーブ・ジョブズ氏は当初、別の案「マックマン」を大変気に入り、シーガルさんらが提案したiMacを嫌いだと、2回も却下した。ジョブズ氏の気質がよく分かるエピソードです。最終的にはジョブズ氏はどのように考えを改め、iMacに決定したのでしょうか。

シーガル:私たちはすべての論点を示し、なぜ、スティーブが気に入った「マックマン」ではダメなのか、はっきりと言いました。何しろスティーブは最初、「ゲームや携帯型音楽プレーヤーを連想する名前はダメ」と言っていたのです。マックマンでは間違いなく、ゲームのパックマンやソニーの携帯音楽プレーヤーのウォークマンを消費者は連想します。その点も説明しましたが、なかなか聞く耳を持ってもらえませんでした。

「iMacは嫌いだ。マックマンの方が好きだ」

 一方でなぜiMacがいいのかも、繰り返し説明しました。小文字のiはインターネットのiです。当時は現在と比べればインターネットに接続するのに手間がかかりましたが、それを飛躍的に身近にするというコンセプトからです。iMacはたった4文字ですし、フォントをデザインとして見ると、小文字のiと大文字のMがパソコン本体に大変よく似合う。言いやすいしスペースも取らない。スティーブが望んでいた「Mac」の文字も入っている。しかも覚えやすい。しかしスティーブには、スティーブなりの考え方があるので、それを変えてもらうのは難しかった。

ケン・シーガル(Ken Segall)氏
1950年生まれ。米国の複数の広告代理店に在職中、広告ディレクターとしてアップル、デル、IBM、インテルなど著名IT(情報技術)企業を始めとする様々な大企業の広告企画を手がける。その後独立。97年にアップルの大規模な広告キャンペーン「Think Different」の企画・製作に携わったことで有名。スティーブ・ジョブズ氏との関わりは、同氏がアップルを離れていた時期も含めて計12年にわたった
(写真:都築 雅人、以下同)

 彼はとにかく議論好きでした。白熱し、声が上ずることもしょっちゅうでした。しかも議論では徹底的にやり合います。スティーブは、いったん「これがいい」と思ったら、なかなか考えを変えません。その時は、「意見は受け止める。でもやはりマックマンが一番好きだ」と言いました。

 1度目の却下を受けて2回目に新しい案とともに再びiMac案を会議で示したら、ジョブズはその場で結論を出しませんでした。しばらく「iMac」の文字をじっくりと眺めて、「よし、今週はそんなに嫌いじゃない。でも好きでもない」と言いました。私は大変落ち込みました。

 翌日、私はこの件を話題にもしませんでしたが、別件でアップルの人から「そうだ、スティーブがiMacという名前を製品につけて、周囲の意見を聞き回っていたよ」と聞いたのです。それでようやくiMacに傾いたことを知りました。スティーブは結局、私には何も言わなかった。

 多くの人が、私たちと同じことを口にしたに違いありません。そこで「いいのかもしれない」と思い始めたのでしょう。さすがのスティーブも考え方を改めざるを得なかったのでしょう。

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