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「お客様に寄り添うパイロットになれた」

その2 ベテランパイロット、大村直弘さん(53歳)の場合

2012年7月4日(水)

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 2010年1月に会社更生法の適用を申請し、経営破綻した日本航空(JAL)。京セラ創業者の稲盛和夫氏の元、破綻から2年余りで同社は過去最高の営業利益を出すまでになった。日経ビジネス2012年7月2日号「世界の空、争奪戦」ではJALの破綻から再生までの道のりと現在の課題を分析している。

 一方で、現場の社員たちはこの2年余り、何を思い、どのように仕事に取り組んでいたのか。破綻から再生まで現場を支え続けた人々に証言してもらった。

 「大変申し訳ございませんが、この度、日本航空の株は100%減資されることになりました」

パイロットの大村直弘。「JALフィロソフィ」の中でも好きな項目は、「最高のバトンタッチ」だという
(写真:山本琢磨、以下同)

 2009年の暮れ、私は通常業務の合間に、東京・天王洲アイルのJAL本社ビルに通っていました。述べ4~5日間、コールセンターに詰めて、JALの個人株主の方々に、「株式100%減資のお詫び」の電話をしていたんです。

 まだJALが会社更生法の適用申請をする前のことです。電話口では、株主様の悲痛な声やお叱りの声などが続きます。JALを愛して、JALを信頼して投資してくれた方々の気持ちを、我々は台無しにしてしまった――。お詫びの言葉と、株式減資に至る経緯を繰り返す中で、「倒産は避けられない」と実感するようになりました。

 1980年に私はJALに入社しました。国際線の飛行機を飛ばすパイロットになりたい。当時、国際線はまだJALしか飛ばしていませんでしたから、夢を叶えるために、迷いなくJALに就職しました。

 パイロット訓練生として2年半を過ごし、航空機関士として3人編成のボーイング747に乗務してから、私のパイロット人生は始まりました。

忘れられない御巣鷹山の事故

 長い勤続経験の中で、決して忘れられないのが、今回の経営破綻と123便の御巣鷹山での事故です。

 日航機123便の墜落事故が起こった時、私はまだ20代半ばでした。事故当時はモスクワ便の乗務中でした。「JAL便が行方不明になったようだ」――。外地でこの情報を初めて耳にした時のことは、今でも忘れられません。当時はインターネットもありませんし、断片的な情報しか入ってこない。どうなったのかということばかりが気になっていました。

 モスクワから欧州を回って、8月下旬に帰国しました。そして事故当時の新聞などを読みあさりました。墜落したのは、私がモスクワで乗務していたのと同じ型式の飛行機だったこと。かけがえのないお客様の命が失われてしまったこと。そして123便には、顔見知りのスタッフたちも乗務していたこと。そんなことが分かりました。

 当時の思いは今でも言葉にはできません。長いパイロット人生の中で決して忘れてはならない、そして忘れられない悲惨な出来事でした。

 JALは2010年1月に経営破綻するまでにも何度か経営危機を迎えています。その度に、「どうすれば倒産を免れるのか」といった会議があったことも確かです。ただ私自身は会社の経営や財務に対してあまり関心がなかった。そのため、強い危機感を抱いたことはあまりなかったと思います。経営状態もほとんど会社から知らされることはなかったと思います。

コメント3

「ドキュメント 現場から見るJAL再生の軌跡」のバックナンバー

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「「お客様に寄り添うパイロットになれた」」の著者

日野 なおみ

日野 なおみ(ひの・なおみ)

日経ビジネス記者

月刊誌「日経トレンディ」を経て、2011年から「日経ビジネス」記者。航空・鉄道業界や小売業界などを担当する一方、書籍編集なども手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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