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文楽、お客を増やす挑戦と、増えれば技芸員が潤う仕組みつくりから

来年4月アーツカウンシル立ち上げ、文化へのお金の流れの透明化を図る

2012年8月10日(金)

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 大阪府と市の統合本部は「大阪都構想」の実現に向けて、府・市の主要事業の民営化、統合プランを作成中である。この連載では、これまでにモノレール事業公立病院事業について考察した。

 前回に引き続き、すでに報道などで注目されている人形浄瑠璃文楽への補助金問題について掘り下げて考えたい。1963年に設立された公益財団法人の文楽協会(大阪市中央区)に対しては、長年、国、府、市が補助金を提供してきた。文楽に対しては劇場をつくるなど主に国が支援しているが、大阪市も1996年から2011年まで文楽協会に対して5200万円の補助金を助成してきた。

 橋下徹大阪市長は芸術文化に関する公的助成のあり方について、行政の価値判断で特定団体に対して継続的な運営補助金を出すことは見直すという方針を示す。文楽協会への支援についても、補助金を25%カットするとともに、協会内部の「しくみ」の変革をもとめていくことを盛り込んだ。こうした方針に対し「文化軽視」という反発を招いている。

 前回に引き続き、府と市の特別参与として、文化行政の見直しにかかわる池末浩規氏(経営コンサルタント、元マッキンゼー)に登場していただき、議論のポイントなどを語ってもらった。さらに、大阪府・市の特別顧問を務める上山信一氏(慶応大学総合政策学部教授)にも大阪維新全体における今回の問題の位置づけを語ってもらった。

(聞き手は、伊藤暢人)

今回、補助金カットの対象となった公益財団法人の文楽協会は、大夫、三味線、人形を担当する個々の「技芸員」の方たちとはどのような関係にあるのですか。

池末: 技芸員は協会に属さず、各人が個人事業主、フリーの立場です。文楽協会とは日建ての出演料などについての契約を結んで、出演報酬を得ています。

 報酬は、本公演については、文楽協会が契約に基づいた出演料を劇場に請求し、そこからマネジメント料などの控除をせず全額を各技芸員に渡します。技芸員の生活を保障するため、大阪と東京の本公演で年間何日間出演するというのが決まっています。一種の収入保障の形ですね。2008年の場合で年間178日間、全技芸員が出演することになっています。そのほかに地方公演や特別公演に出演すると、別途報酬が得られます。地方公演は本公演と同額の日建てが基本のようですが、特別公演についてはその都度決めているようです。地方公演、特別公演は全員出演ではありません。

 技芸員は現在82人います。この82人の中で、親も技芸員だったといういわゆる世襲の方は全体の3分の1ほど。半分弱が、日本芸術文化振興会が行っている研修を受けてこの世界に入ってきた人たちです。

技芸員の1日当たりの報酬は幾らぐらいですか。

府と市の特別参与として、文化行政の見直しにかかわる池末浩規氏

池末:人によって違います。正確な数字は公表されていないのですが、若手だと1日1万円を切っているようですので、178日間出演しても年間150万円ぐらいですね。地方公演や特別公演、養成費を入れてようやく200万円を超えるぐらいです。人間国宝クラスの方だと、年間2000万円といった噂もあります。

上山:人間国宝の方でも2000万円というのは安いように思います。若手の10倍程度ですし。歌舞伎の世界では億単位の報酬を得ている人もいますので、決して多くないのでは。技芸員の方たちは特権階級ではないと思います。

技芸員の方たちは、文楽劇場の観客動員率52%という現実をどう評価しているのでしょうか。

池末:技芸員の方々にはお会いしてお話をお聞きしました。彼らも、「このままではいけない」という気持ちを持っています。動員率として出ている数字はあくまで平均で、平日夜だと3割を切るようなこともあるようです。

コメント4件コメント/レビュー

文楽が再び興隆していくためには「新作文楽」が必要だと思う。そう落語のように。落語も一時期は廃れたが、新作落語というジャンルが生まれて、息を吹き返した。また新作が生まれたことによって、古典が見直されることにもなったし、新しい客層が増えた。私の息子(中2)の話で恐縮だが、小学3年生くらいのとき、新作落語のCDを聞かせたら、すっかり落語好きになり、私以上に古典落語にも興味を持ち、知識は私以上になった。新しい風を吹き込み、新しい客をつかんでいくしか芸能が生き残っていく道はない。(2012/08/10)

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「文楽、お客を増やす挑戦と、増えれば技芸員が潤う仕組みつくりから」の著者

上山 信一

上山 信一(うえやま・しんいち)

慶応義塾大学総合政策学部教授

1957年大阪市生まれ。京都大学法学部卒。米プリンストン大学公共経営学修士。旧運輸省、マッキンゼー(共同経営者)を経て現職。専門は経営戦略と行政改革。九州大学ビジネススクール客員教授。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

文楽が再び興隆していくためには「新作文楽」が必要だと思う。そう落語のように。落語も一時期は廃れたが、新作落語というジャンルが生まれて、息を吹き返した。また新作が生まれたことによって、古典が見直されることにもなったし、新しい客層が増えた。私の息子(中2)の話で恐縮だが、小学3年生くらいのとき、新作落語のCDを聞かせたら、すっかり落語好きになり、私以上に古典落語にも興味を持ち、知識は私以上になった。新しい風を吹き込み、新しい客をつかんでいくしか芸能が生き残っていく道はない。(2012/08/10)

何か、文楽は面白くないという前提のような会談だ。数年前に初めて大阪で文楽を見て、人形の迫力(男と女で人形の大きさがこれほど違うとは!)、義太夫の迫力と、音の迫力、素晴らしいと思いました。テレビでは何度見ても文楽の迫力は伝わってこない。もっとも、ストーリーが分からないとオペラと同じで、面白くはないでしょう。 しかし、東京に文楽坐があれば、小さな劇場ですから、連日満員間違い無しだと思います。大阪人よ、文化も見よ! 入場料も能楽堂より安いはずだ。(2012/08/10)

文楽が生き延びるか消えてしまうか,それを決めるのは庶民なのではないか?エネルギー選択と言う国の根本政策まで国民に決めさせようとしているこのご時勢に,文化の盛衰をお役所が決めようとしていること自体,思い上がりなのではないか。大阪市の問題は,市長が代わればその方針が根本的に変わってしまいそうだと思わざるを得ないところにある。任期4年の市長が,人の寿命より長い伝統を持つ文化の価値を決めていいのか。文楽は退屈だと,個人が主張するのはいいが,市長が公言するのは許されないと思う。公選されているから何を言ってもいいというのは,民主主義を根本的に誤解している。(2012/08/10)

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三品 和広 神戸大学教授