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まるで社会主義国――大阪市営地下鉄の過剰コスト構造

黒字だが乗客は減少…今のうちの民営化が必須

2012年9月5日(水)

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 大阪府と市の統合本部は現在、「大阪都構想」の実現に向けて、府・市の主要事業の民営化、統合プランを作成中である。

 バス事業を取り上げた前回に引き続き、府と市の特別顧問として、バス・地下鉄事業の見直しにかかわる余語邦彦氏(ビジネス・ブレークスルー大学院大学教授、元マッキンゼー)に登場していただく。今回はバス事業と同じく、大阪市交通局の運営である地下鉄事業について考察する。

 大阪の地下鉄事業は地下鉄事業者の中では東京メトロに継ぐ事業規模。2003年度以降、黒字を計上するなど、近年、経営の健全性は高まっているが、依然として問題点も多いという。(聞き手は、伊藤暢人)

今回は地下鉄事業についてお聞きします。まず、大阪市営地下鉄の現状を教えてください。

余語:最初に地下鉄の概要をお話ししましょう。大阪の地下鉄は都心を中心にほぼ市域全体に路線が広がっています。第1号線の御堂筋線、第2号線の谷町線、第3号線の四つ橋線など全部で第8号線まで走っています。都心部は特にきめ細かな交通ネットワークを築いています。

 営業距離は129.9キロメートル、駅数は123駅、職員は5500人弱で、地下鉄事業者としては東京メトロに次ぐ規模。公営地下鉄事業者で見ると、東京都営よりも大きく、全国でも最大級の事業規模です。

同じ大阪市交通局が運営するバス事業は、赤字の解消が課題でした。一方、この地下鉄事業は、2003年度以降は黒字を計上し、2010年度の黒字は239億円。2002年度に約2933億円に達していた累積欠損金を2010年度決算で公営地下鉄事業者として初めて解消しました。問題はさほど大きくないように見受けられます。

余語:確かに2003年度に総費用が総収入を下回り、継続的に黒字を確保するようになっています。ただ、ちょっと注意して見なくてはいけない面があります。

府と市の特別顧問として地下鉄事業の見直しにかかわる余語邦彦氏

 運賃収入1444億円のうち、53億円は「特別乗車料繰入金」。70歳以上の市民の市営地下鉄利用に対して乗車料金を減免している、いわゆる「敬老パス」に対する市の一般会計からの補助金です。そのほか、企業債の金利や駅の補修費用などにも補助金が出ています。また、公営事業ですから、当然、固定資産税や法人税を払っていません。

 2011年度の経常利益は167億円ですが、これを民間企業の会計に直して見ると、だいたい52億円ぐらいになります。最終利益は30億円ほどで、鉄道会社としては、やや物足りない数字です。決して十分、儲かっている会社ではありません。しかも、運賃収入が年々下がってきています。

大阪都心部を走る地下鉄なのに運賃収入が下がっているのですか。それは乗車人員が減少しているせいですか。それとも、客単価が下がっているのでしょうか。

余語:乗車人員の減少が理由です。路線の延長とともに1日平均乗車人員は増加していましたが、1990年の281万人をピークに減り始め、2010年には229万人にとどまりました。2006年に今里筋線が開業しましたが、その後から今まででも4%減っています。

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「まるで社会主義国――大阪市営地下鉄の過剰コスト構造」の著者

上山 信一

上山 信一(うえやま・しんいち)

慶応義塾大学総合政策学部教授

1957年大阪市生まれ。京都大学法学部卒。米プリンストン大学公共経営学修士。旧運輸省、マッキンゼー(共同経営者)を経て現職。専門は経営戦略と行政改革。九州大学ビジネススクール客員教授。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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