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「パチンコホール初上場」、苦難の道のりを語る

申請拒否の挫折から7年、ダイナムHD社長の執念

2012年9月28日(金)

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 「パチンコホールは上場できない」。7年前、ジャスダック証券取引所が中堅パチンコホール「ピーアーク」の上場申請を受け取らない事件が起きた。換金方式などの合法性を問題視したと見られ、同時期に上場を計画していた業界大手のダイナムジャパンホールディングスも上場を断念せざるを得なかった。だが、トップの佐藤洋治社長は諦めなかった。海外市場も視察し、ついに香港上場を果たした。

 日本の株式市場で問題視されたのは、景品を現金に換金するための景品交換所と景品問屋を使った「三店方式」などが、「合法とは言い切れない」との判断をされたからだ。しかし、佐藤社長は香港市場関係者に、審査協力や大量の証拠書類の提出を続け、ついに「上場」を勝ち取った。

 それでも、日本市場の扉は開かない。

 日本と香港、市場の判断が異なった背景には、どんな事情があったのか。佐藤社長が、上場を考えてから24年の奮闘の舞台裏を余すところなく語った。

本日はいろいろと率直なお話をうかがえればと思っております。先日、日経ビジネスでダイナムがパチンコホールとしてはじめて上場された件につきまして報じましたが、その真相を今日は佐藤社長におうかがいできればと思っております。

佐藤:(香港上場では)530ページの目論見書を作っています。英語ですが、ぜひ読んでいただければと思います。業界動向から法律問題、それにうちの役員の経歴書も全部載っています。経歴では、大学から過去に在籍した企業まで、在籍証明まで提出して作成しているんですね。

 目論見書は、すでに世界中に発信されているものです。今回、日本の企業ではじめて香港で上場したケースですから、会社法の問題、それから取引所の規則の問題など、大変多くのハードルがありました。法律問題に関しては、ダイナムの意見ではダメなんです。すべて弁護士、公認会計士が文書にサインして出す。「この通りで、ウソはありません」と証拠が残り、責任の所在が明確になります。

これまで、パチンコホールは日本で上場できませんでした。三店方式(客がホールで得た景品を景品交換所で現金と交換する仕組み。交換所は景品を問屋に卸し、ホールは問屋から景品を買い取る。ホール、交換所、問屋の間の人的・資本的関係は独立している)の問題があり、法的解釈が揺れていた。この点について、香港市場は「OK」だったのでしょうか。

佐藤:「OK」というよりも、仕組みが全然、違うんです。

仕組みというのは、上場審査のことでしょうか。

佐藤:もう、全てです。昨年6月1日、香港証券取引所を訪問しました。そして、審査部門のヘッド、マーク・ディッケンズさんにお会いしました。

日本国内にも証券市場がありますし、海外にも多く(の証券市場が)あります。その中で、なぜ香港市場だったんでしょうか。

佐藤:それは、さらに1年前の2010年の秋口の話になります。香港かシンガポールか、ソウルか、この3カ所ぐらいで上場の可能性を模索していたんです。「ソウルは可能性がある」ということが2010年の暮れに分かったんです。シンガポールは、まだ正確には情報がつかめていなかった。ですから、シンガポール、香港、ソウルを比較しながら、どこかで上場ができれば、と。昨年6月1日、香港に行く前の3~5月にかけて、あらゆる情報を聞いていました。日本で弁護士の先生など、現地の事情に詳しい方たちに会いながら、情報を入れていたんです。

 それで、香港はハードルが高いが、資金調達が容易にできる。それから、シンガポールは難しいなと思ったんですが、現地の証券会社の方たちは、日本の証券会社が「ノー」と言えば、たぶん無理だろうなと。シンガポールの取引所は、東京証券取引所が出資しているそうです。なので、日本の状況が反映されるだろうと。それで香港の場合は、2010年にルール改正があった。それまで、香港か中国本土、ケイマン島、バミューダ島、この4地域に本社がある会社が上場できるスタイルだった。それが2010年にルール改正されて、日本を含む欧米20カ国が対象になったんです。

 最初の2011年4月に、SBI(ホールディングス)さんがダブル上場で、東京と香港に上場したのが第1号ですね。日本関係の会社ではね。ただし、日本企業として初上場を香港でやるというのは、ダイナムがはじめてだったんです。

その時、北尾(吉孝・SBIホールディングスCEO)さんとは情報交換をされたんですか。

佐藤:全くないです。

ないんですか。

佐藤:全くないです。(香港市場訪問の)後から北尾さんに相談を持ち掛けたことが1つありましたが。もうだいぶ後のことですね。昨年の暮れぐらいですか。北尾さんがやったのは、預託証券方式という、株券を発行しない方式をJPモルガンで(預託銀行業務を)やってもらった。なので、「JPモルガンを紹介してください」ということで、昨年12月ぐらいに北尾さんと一度お会いして、事情を話して、「何とか努力しましょう」ということで、JPモルガンの人と会って話してくれた。結果は、「やっぱりダメでした」と。

 要するに預託証券方式(の業務)は、香港の場合4社しかできないんです。JPモルガン、シティバンク、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン、それからドイツ銀行ですね。この4社しか預託銀行業務が許されてないんです。それで毎月、香港に行きながら、証券会社とその4社にお会いして、「ぜひやってくれないか」とお願いしたところ、香港サイドでは「ぜひやりたい」と。「まだ香港取引所は(預託証券が)2社しかないんだ」。SBIとブラジルの鉱山会社(ヴァーレ)の2社しかないという。

 ですから、せっかくシステムがあるんだから、香港サイドは「やりたい」と。ところが、東京で相談すると、全部「ノー」と言われてしまいます。

なんで東京なんですか。海外の本店じゃなくて、意思決定は東京なんでしょうか。

佐藤:アジア地区(の本部)があるんじゃないですか。

そこで決まるんですか。

佐藤:ええ。これは証券会社もそうなんですが、今回(の上場で)、日本の証券会社はまったくノータッチです。それで、香港の大手証券会社を昨年6月1日にお邪魔してそれから毎月のように香港に行って、幹事証券を、できるだけ大きい証券会社にお願いしたいというふうに考えたのですが、なかなか受けてくれない状況だったんですね。

それは何が原因ですか。

佐藤:だから、これは日本の風評ですね。「パチンコは法律で難しいんじゃないか」という意見があって、それで最終的には中堅の証券会社、日本との関わりが薄い所になりました。親会社が上海にあって、要するに中国地場の証券会社ですね。その会社と出会って、ようやく幹事証券会社が決まる。1社ではちょっと無理なので、さらに(幹事会社を)拡大していった。最終的には3社にお願いしたんですが。

なるほど。その3社が引受業務をやる、と。

佐藤:ただ、「引受業務」というのはやらないんです。日本の場合、大手の証券会社がすべて株を一括して買い受けてくれて、証券会社が責任を持って売ってくれるわけです。だから、上場日に(株が)全部売りさばけなくても、証券会社が抱えてくれる。でも、香港の場合はそういう会社は1社もありません。ですから、上場審査が終わっても、上場ができるということは、逆に言えば、株を引き受ける先を探さなきゃいけない。だから幹事証券が責任を持って引き受けてくれないので、一緒になって、幹事証券が紹介する先を延々と回っていくわけです。

それで世界を回られた。

佐藤:ええ。香港の会社だけでも70~80社回って、なおかつ「グローバルオファーリング(株の発行者などが実施する海外投資家の募集活動)」といって、シンガポールからロンドン、ニューヨーク、ボストン、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、また香港と戻ってくる。これで100社近く回って…。

それは、香港の70社とは別に100社ですか。

佐藤:そうです。ですから、ものすごいエネルギーがかかる。

佐藤社長、自ら回った?

佐藤:そうです。まあ、3人で一緒に回った。英語が達者な社内の2人を連れてね。

佐藤さんも英語は問題ない。

佐藤:聞くのはほとんどOKなんですけど、話すことはできないので通訳の人間を連れながら、2週間で海外を回る。かなりのハードスケジュールなんです。ここである程度、(株が)さばけないと、香港の人たちは(持ち株比率が)約10%なんです。海外(株主)が約90%なんですよ。ですから、これ(株式)がさばけなくて、香港で20社ぐらい、上場できずに延期しているんです、審査が終わっても。ですから、ある意味で、日本の場合はすごく楽なんですね。

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「「パチンコホール初上場」、苦難の道のりを語る」の著者

金田 信一郎

金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日本経済新聞編集委員

1990年横浜国立大学経済学部卒業。同年、日経BP社入社、日経ビジネス記者、ニューヨーク特派員、日経ビジネス副編集長などを経て2014年より現職。産業、金融、経済事件を中心に取材・執筆。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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