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いびつな年金制度、抜本改革にはどうすればいいか?

エコノミスト・飯田泰之氏に聞く「消費税」

2012年10月19日(金)

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 日本政策学校代表理事の金野索一です。

 「日本の選択:13の論点」では、2012年の日本において国民的議論となっている13の政策テーマを抽出し、そのテーマごとに、客観的なデータ・事実に基づきロジカルな持論を唱えている専門家と対談しています。政策本位の議論を提起するために、一つのテーマごとに日本全体の議論が俯瞰できるよう、対談者の論以外に主要政党や主な有識者の論もマトリックス表に明示します。さらに、読者向けの政策質問シートを用意し、読者自身が持論を整理・明確化し、日本の選択を進められるものとしています。

 さて現在、社会保障費のための消費税増税法案が可決され、政府は消費税導入を着々と進めています。今回は「消費税」をテーマに飯田 泰之氏(エコノミスト、駒澤大学准教授)と対談を行いました。

 確固たる数字・データを基に、年金は賦課方式から積み立て方式へ、切り替えのための財源は、相続税を抜本改正すべきとのお立場です。また、税としての消費税について利点と欠点を論じ、財政赤字を解消するための消費税増税には反対の立場から、プライマリーバランスの赤字と社会保障費の負担増を分けて検討することを提起されています。また、消費税の地方分配分に着目し、政府の提示している財政再建試案に疑問を呈ししており、社会保障目的税として増税する選択肢をセカンドベストと位置づけています。

 社会保障目的税としては、特に相続課税や資産課税の増税を強調されており、気鋭の新進エコノミスト飯田氏の議論を出発点に、政策としての消費税について、読者自身が日本の選択について議論を深めて頂ければ幸いです。

(協力:渡邊健、藤代健吾、岩尾建)

飯田 泰之
エコノミスト/駒澤大学経済学部准教授/財務省財務総合研究所客員研究員/株式会社シノドス マネジング・ディレクター 東京都生まれ、東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得中退。
専門は経済政策、マクロ経済学。
著書に、「世界一シンプルな経済入門 経済は損得で理解しろ! 日頃の疑問からデフレまで」(エンターブレイン)、「経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える」(ダイヤモンド社)等がある。

公平性担保されていない日本の税制。消費税だけでなく所得税も

飯田:消費税というのは極めていい性質を1つ持っています。それは課税ベースが広く、明確で、徴税コストが安いこと。裏を返せば租税回避(節税と脱税)が困難ということです。これは税金としては大きな長所です。その意味で消費税というのは、税務当局にとって理想的な税制だという議論は全くよくわかるところだと思います。

 ただ、これは「一般的な消費税」のよいところです。ところが、日本の消費税は、まず課税ベースを自ら狭めている。例えば、簡易課税方式やインボイス方式でないことによって、必ずしも明確に課税ベースがわかっているわけではない。益税問題とよばれることがありますが、中小事業者が取引の間に介在することで、どこまでが消費課税のベースなのかというのは極めて見えにくくなってしまっている。もし消費税の利点を100%生かすのであれば、しっかりとしたインボイス方式にもとづく正確な申告に打ち直さなければいけない。

 その一方で、消費税には欠点もあります。

 消費税では、よく「逆進性」が問題とされます。すなわち、低所得者にとって極めて負担が多い税制になってしまっている。一生をとおしてみれば逆進性はないという人がいますが、これは全くナンセンスです。消費税の問題は累進的でないことです。ある程度お金持ちの人は、公共サービスや国によって財産が守られている度合いも大きいでしょう。それなりに大きな税金を払うはずという構造を消費税は持っていませんので、税の垂直的公平を全く考慮しない税金になっています。

 消費税における問題は、実は日本のありとあらゆる税制の縮図を1つ提供しています。税制における公平性には垂直的公平性と水平的公平性があります。

 垂直的公平というのは、要するに経済力の大小に応じて税金が決定されるということです。一方で、水平的公平というのは、同一の経済活動を行っているならば税額は同じにならないとおかしいということです。まず消費税は税金の本質として垂直的公平は捨てている税金ですが、その上、日本のシステムだと簡易課税の存在により水平的公平も守られているかどうか、わからない。

 翻って、逆に垂直的公平を達成するための所得税についてはどうか。所得税についても同様に大きな問題があります。所得税は水平的公平がまるで守られていない。「9・6・4(くろよん)」、「10・5・3(とうごうさん)」が一番有名ですけれども、それよりもセンセーショナルなものとして、日本では1億円を超えたあたりから税率が下がっていきます。

 これは証券所得等に関する分離課税が原因です。1億円以上の人は収入の中心は資産所得です。1億円以上を給料でもらっている人はスポーツ選手など少し特殊な人中心ですからね。それに関しては分離課税方式なので、2割しか取られていない。2割といったら、それこそ中金持ちといいますか、ちょっと稼いでいるサラリーマンぐらいの税金しか払っていない。

 このように、ありとあらゆる税において、税金の基本である垂直的公平、水平的公平がきちんと担保されていない。このような穴だらけの税制において税金を増やすのは、僕自身は状況を先送りしている、問題を先送りしているだけだと思います。

問題はプライマリー赤字と社会保障負担の増加。消費税で解決?

飯田:財政学の古典命題に「ワグナーの法則」というのがあります。アドルフ・ワグナーという人の経費膨張の法則です。財政における経費は、それが維持不可能になるまで拡大を続けるというのが、経費膨張の法則、あるいはワグナーの法則と呼ばれるものです。経費膨張の法則のとおり、日本ではどんどん経費が膨張していきます。日本の場合、問題の核心は実は経費膨張なのに、まずは税金を増やす方向にすることで、問題の先送りをしているだけなのではないでしょうか。

 実際にこれについては学習院大学の教授である鈴木亘氏が行った今回の社会保障と税の一体改革に関する鈴木試算という有名な試算があります。

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「いびつな年金制度、抜本改革にはどうすればいいか?」の著者

金野 索一

金野 索一(こんの・さくいち)

財団法人日本政策学校・代表理事 / 多摩大学経営大学院・客員教授

コロンビア大学大学院国際公共政策大学院修士課程修了。平成維新の会・政策スタッフ、政策学校・一新塾、起業家養成学校アタッカーズ・ビジネススクールの経営、公益財団法人東京コミュニティ財団評議員等を経て現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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