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「テーマがある人は、テーマなき人をどう使ってもいい」

「頭上の敵機」(1949年 ヘンリー・キング監督)【後編】

2012年11月12日(月)

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これからどうなっちゃうんだろう?

前回は「頭上の敵機」を題材に、中間管理職の悲しきありようについてお話しいただきました。主人公のサヴェージ准将(グレゴリー・ペック)は部下を守るために厳しく接したが、そのことが原因で心を病んでしまった、というお話で。

押井:そういえば、若いプロデューサーたちや制作たちで鬱病っぽくなってる人が増えているんだよね。この映画のサヴェージ准将みたいなもんだよ。出社拒否になっちゃって、会社に出てこないで家でDVD見てるんだって。揃いも揃ってみんな30過ぎてから。ローンで家を買って子供が産まれた途端に。

何があったんですか?

押井:たぶん、これから30年間ローンを返さないとって考えたときにやっと気付くんだよ、自分のスタジオはこれから30年存続するんだろうかって。

 例えばジブリ(宮崎駿氏の所属するアニメスタジオ)。どう考えても宮さん(宮崎駿)があと30年生きるわけがないけど、宮さんが死んだ時点でジブリはおしまいだってことは誰でもわかってる。存続するにしても版権管理会社だよ。じゃあ今あそこで働いてる連中はどうなるのか。

他のスタジオには移れないんですか?

押井:ジブリのアニメーターには5年10年やってても人間を描いたことないアニメーターもいるんだよ。そうじゃなければ、あれだけクオリティの高い作品なんてできない。キャラクターを描かせてもらえる人間なんて一握りで、それ以外の人たちは延々と動画だったりするんです。

(写真:大槻 純一、以下同)

 他のスタジオだったらアニメーターは忙しいんだよ。2年に1本なんて悠長なことを言ってられないから、バンバン描かせる。そういう人はそこそこ描けるから、どこへ行っても食えるんです。ジブリは、うまい人はめちゃくちゃうまいけど、下積みの連中はなかなか上に上がれない。

でもその分、仕上げた枚数いくらじゃなくて会社で正規雇用して、高い給料を払っているわけですよね。

押井:だけど宮さんが死んだら全員放り出されるって、あるときハタと気がつくわけ。それでもアニメーターは、ある意味手に職があるからまだましで、プロデューサーとか制作の連中は「30年のローンで家買っちゃった。子供産まれちゃった。大学出るまであと20年以上かかるんだ」ってさ。

それに気がついてしまうと…。でもそれ、普通の会社だって同じじゃないですか?

押井:そうだよね。愕然とする方がまともかもしれない。「自分たちの未来はどうなるんだろう?」ってさ。とはいえ、そうなる前にどうするかをなんで考えなかったのアンタ、って思うんだけどね。

今からでもいいから考えて、行動すればいい。

押井:そうやって飛び出したヤツも何人かはいる。今残ってる連中はジブリという組織、会社員一般で言えば会社の名前に守られてるだけ。外に出てやっていく自信はないんじゃないかな。

 僕から見たジブリは、「宮さんの映画を作る」ということに特化したちょっといびつなスタジオだから、みんな守備範囲が狭いわけ。外に出されたらあっと言う間に萎えちゃう。温室なんです。雑草みたいなヤツはほとんどいない。宮さんひとりが獰猛な百獣の王で、その獰猛な百獣の王を飼うために人工的に作ったサバンナなんだよ。

わかりやすい例えですね。

押井:鈴木敏夫は最近一所懸命に鬱病の本を読んでるよ。

でもそれは、あのお方にも責任の一端があるんじゃ(笑)。

押井:あのオヤジは最初から百も承知で人を集めてるよ。

説明責任とかあるべきなんじゃないですか?

コメント4件コメント/レビュー

人が戦場においても死という究極の自己犠牲を受け入れられるのは、愛する者のため(家族、時には神)だと聞いたことがあります。特攻隊の若者が口では天皇陛下バンザイと叫んだとしても、心の中ではお母さんだというのです。そういう気持ちを上司が理解せずに忠誠心の成せるわざと誤解して捨て駒扱いをすれば、軍隊ならいざ知らず企業から社員ははなれていくことでしょう。逆に、今日の経営では精神に頼らない大リーグの「マネーボール」的な経営、東大合格日本一の素人集団でも勝てる「弱くても勝てます」的戦術が不可欠ということでしょうか。(2012/11/12)

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「「テーマがある人は、テーマなき人をどう使ってもいい」」の著者

押井 守

押井 守(おしい・まもる)

映画監督

1951年生まれ。東京都出身。大学卒業後、ラジオ番組制作会社等を経て、タツノコプロダクションに入社。84年「うる星やつら2」で映像作家として注目を集める。アニメの他に実写作品や小説も数多く手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

人が戦場においても死という究極の自己犠牲を受け入れられるのは、愛する者のため(家族、時には神)だと聞いたことがあります。特攻隊の若者が口では天皇陛下バンザイと叫んだとしても、心の中ではお母さんだというのです。そういう気持ちを上司が理解せずに忠誠心の成せるわざと誤解して捨て駒扱いをすれば、軍隊ならいざ知らず企業から社員ははなれていくことでしょう。逆に、今日の経営では精神に頼らない大リーグの「マネーボール」的な経営、東大合格日本一の素人集団でも勝てる「弱くても勝てます」的戦術が不可欠ということでしょうか。(2012/11/12)

仰りたいことは良く分かるんですけど、例えが(笑)ここまで具定例で言うかって話ですね。(2012/11/12)

実に面白い(2012/11/12)

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夢の実現にあたっては強く「念ずる」。そうした心構えを支えにビジネスの世界の荒波を渡ってきました。

後藤 忠治 セントラルスポーツ会長