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すみだ水族館の魚たちを「コミュニケーション」でデザインする

電通CDC 岸勇希氏 第3回

2012年11月9日(金)

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前2回のインタビューでは、ビジネスにおける新しい考え方であり、広告においても注目されている「コミュニケーション・デザイン」についてうかがってきました。今回は、岸勇希さんの発想のバックグラウンドをうかがいたいと思います。岸さんが大学で専攻されたのは、マーケティングでも経済学でもなく、なんと海洋生物学なんですね。

岸 勇希(きし・ゆうき):電通CDCクリエーティブ・ディレクター/次世代コミュニケーション開発部専任部長。東京大学講師(2011-2012)。
1977年、名古屋市生まれ。東海大学海洋学部水産学科卒業。早稲田大学大学院国際情報通信研究科修了。2004年、電通に入社。中部支社雑誌部、メディア・マーケティング局を経て、06年10月より東京本社インタラクティブ・コミュニケーション局クリエーティブ室へ。08年より現職。
広告の企画・制作に限らず、企業の商品開発や事業デザイン、空間・施設プロデュース、アーティストのプロモーションや作詞、テレビ番組の企画・制作など、幅広くクリエーティブ業務に携わる。最新の仕事に、トヨタ自動車「AQUA」キャンペーン。商業施設「東急プラザ表参道原宿」のプロデュース、「すみだ水族館」の展示演出、フジテレビ「にっぽんのミンイ」企画、演出などがある。カンヌ国際広告祭金賞をはじめ、グッドデザイン賞他、国内外の賞を多数受賞。著書に『コミュニケーションをデザインするための本』(電通選書)。(写真:中村 治、以下同)

:海洋学部です。電通でも、とても珍しい経歴だと思います。

海洋生物学を勉強して、広告の世界でコミュニケーション・デザインの仕事をする。どういう整合性が?

:今年5月に「東京スカイツリータウン」内にオープンした「すみだ水族館」で、「アクア・ギャラリー」というコーナーの展示をプロデュースさせていただきましたが、それでようやく元が取れました(笑)。

お生まれは1977年、現在35歳ですね。

:電通のクリエーティブ・ディレクターという職種では一番若いと思います。ただ世界的には普通の年齢だと思いますが。

大学での専攻から推察すると、もともと広告会社に行きたかった、ということではなかったのですか。

:まったくなかったです。僕は海洋生物学に非常に興味があったので、魚の研究をずっとしていました。将来も学者になりたかったので、大学院に進みたいと思っていました。

ここまでは、ザ・研究者志望ですよね。

:ある時、進学を希望していた他大学院の指導教官に、研究内容について、がっつり聞ける機会があったんです。マニアックな話なので詳しくはお話しませんが、教授の話を聞いて、長い時間をかけて行う壮大な研究に、すごい!と驚いたのを覚えています。ただ同時に、教授の熱い話を聞きながら、正直、「俺、興味ないんだ…」ということに、気が付いてしまったんです(笑)。

心の声が聞こえた、と。

:それまでずっと、自分は海洋学の研究者になりたかったのに、なぜか大学院の先生の話に興味が湧かなかった。

 その答えはすぐに分かりました。当時はインターネットの黎明期でもあり、僕は独学でネットの世界にも、のめり込んでいたんです。ネットというインタラクティブな世界って、クリックをしたら瞬時に反応が返ってくるじゃないですか。その反応の速度感がたまらなく刺激的だったんですね。

観察や実験をコツコツ積み重ねていくという研究と、瞬時のインタラクティブの時間感覚は違いますよね。

:もし僕がもっと辛抱強く、忍耐力があって、コツコツ努力することが得意な人間だったら、ここで大学院へ進学していたと思います。でも、研究結果が出るまで数年、もしかしたら数年後ですら結果が出ない領域に対して、どうしても、のめり込める気がしなかったんです。

 だったら、今、一番夢中になれる、速度が速い領域で情報通信の勉強をしたいと思い直して、早稲田の国際情報通信研究科という大学院に進学することにしました。大学院での2年間は本当に刺激的で、思い切り勉強、研究できました。今でもここで学んだことが大きく自分を支えています。そして、結果的に目覚めた方面が、メディア論でした。

なるほど。

仕組みよりも「気持ち」をデザインしたい

:当時は森首相がIT革命と言っていた時で、日本中の至るところに、地域情報化という名目で、マルチメディア・センター、情報センターといった、最先端のハコモノが建てられていました。すでにこのころから、人を豊かにするのはハードでなくて、ソフトだと僕は考えていたので、ハードを有効活用できるソフトの開発と、それを通じて地域が豊かになることの実証実験を、修士の研究テーマにしました。

「仕組み」ではなく、「人の気持ち」をデザインする、ということでしょうか。

:その通りですね。ですから、コミュニケーション・デザインの基本思考の原点は、このころから僕の中にはあったように思います。

 大学院時代は、最先端のデジタル施設だけあっても、なかなかその活用方法が分からない地域へと赴き、小学生や中学生たちと一緒に、その地域を題材にしたドキュメンタリーを制作して上映会を行うプロジェクトを進めました。

 このプロジェクトの最大のポイントは、参加した子供たちの地域への興味関心・愛着、メディアリテラシー能力、自己効力感など、様々な能力が大きく向上するということ。ハードを有効活用するソフトを提案することで、真の地域活性化を目指すというのが僕の研究でした。ちなみにこの活動は、今もライフワークとして行っています。

でも、そこから一直線にメディア論の学者にならなかったんですね。

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「すみだ水族館の魚たちを「コミュニケーション」でデザインする」の著者

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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