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数学は日本が勝つための最後のフロンティア

『渋滞学』を極めた西成活裕・東大教授に聞く

2012年12月3日(月)

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 パナソニックやソニー、シャープなど日本の製造業を代表する企業が苦しんでいる。日本の製造業はグローバルに市場が広がる中、徐々に競争力を失いつつある。そのような状況において、日本はあわてずに長期的ビジョンを持って製品開発に望むべき、そしてその製品開発において積極的に数学を活用すべきと説く。近著『とんでもなく面白い 仕事に役立つ数学』では、製品開発の現場で使いやすい各種の公式を紹介、それらを応用するためのコツを紹介した。日本の製造業が再び輝きを取り戻すためのヒントを聞いた。

(聞き手は木村 知史)

ものづくりの現場に数学を活用しようと呼びかけています。その真意はどこにあるのでしょう。

西成:私は常々「純粋数学を産業に応用したい」と言っています。その甲斐あって、現在では多くの企業と共同研究を一緒に手がけさせてもらい、その中で議論させてもらっています。ものづくりの現場も理解しているつもりです。

 現在、大手企業だけの数字を足しても数兆円の赤字を計上するなど、日本の製造業は私に言わせれば“残念”な結果となっています。最大の問題は長期ビジョンの欠如にあるのではないでしょうか。評価の期間が短く、すぐに結果を出したがる。半年、下手をすると3カ月トライしてみて、結果が出なかったら次の方策を考える。残念ながら、これでは良いものは作れません。

日本の製造業は根本まで戻って考えるべき

西成活裕(にしなり・かつひろ)
東京大学先端科学技術研究センター教授。1967年、東京生まれ。1995年、東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程を修了後、山形大学工学部機械システム工学科、龍谷大学理工学部数理情報学科、ドイツのケルン大学理論物理学研究所を経て、2005年、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻に移り、2009年より現職。著書の『渋滞学』(新潮選書)では、講談社科学出版賞、日経BP・BizTech図書賞を受賞した。日本テレビ『世界一受けたい授業』などテレビ、ラジオなどにも多く出演。(写真:的野弘路、以下同)

 今、多くの製造業で必要とされているのは、立ち止まって根本に戻ること。例えば、なぜ不良品が出るのかを考えてもいいし、なぜ想定する基本能力が出せないかを考えるのでもいい。このときに、根本から原因を炙り出して、その原因を解決する。そして、根本からの問題を解決する際に、いい道具が数学なんです。

 不良品の問題で、ある部品が折れてしまうことがその原因だったとしましょう。開発現場とすれば、材料を変えたり、部品を作る際の成形温度を変えたり、いろいろ試してみることでしょう。その問題を数学で解いてやるのです。折れるという現象は何で決まっているのか、その現象を支配しているのは何なのか。深く深く掘り下げていって、抽象化して数学で解決する。抽象化してしまえば、同様な問題に関しては横展開できるという強みもあります。

 今の製造業を見ていると、何か悪いとすぐに絆創膏を貼るとかカンフル剤を注入するとか、そういった対症療法に頼りすぎな感があります。もちろん対症療法も重要ですが、それを根っこから取り除く原因療法も重要です。今の日本に必要なのは、原因療法ではないかと思うのです。

数学的アプローチで根本から解決するうえで、重要なことはどのようなことでしょうか。

西成:重要なことはいくつかあります。まずはすべて事象に関して定義をしなくてはならないこと。自分達の問題を解決するうえで、すべて曖昧にしてはいけません。しっかりと定義できなければ、何を解決するのか分からなくなってしまうからです。

コメント7

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「数学は日本が勝つための最後のフロンティア」の著者

木村 知史

木村 知史(きむら・ともふみ)

日経ビジネスDigital編集長

日経メカニカル、日経ものづくり編集などを経て、2014年4月から日経ビジネスDigital編集長。アプリ開発やサイト運営をメインの業務とする一方で、製造業関連や中国関連の記事をサイトに執筆。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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