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コンクリ-トが生んだ「作りっぱなし」の罪

法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科教授、溝渕利明氏に聞く

2012年12月11日(火)

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12月4日、中央自動車道の笹子トンネルで起こった天井板の崩落。9人の死者を出す惨事に専門家は「信じられない事態だ」と口を揃える。今回の事故の根底には、我々の社会が「コンクリート」について抱いている思い込みがあるのではないだろうか。コンクリートの“寿命”“健康管理”を研究している、法政大学の溝渕利明教授に素朴な疑問をぶつけてみた。

(聞き手は山中浩之)

笹子トンネルの事故の原因に、メンテナンスの問題が指摘され始めました。溝渕先生は以前から、下水道などの公共設備に使われているコンクリートの寿命について警鐘を鳴らしていましたね。

溝渕利明(みぞぶち・としあき)氏
1959年岐阜県生まれ。1982年名古屋大学工学部土木工学科卒業。1984年に同大学大学院工学研究科土木工学専攻博士前期課程を修了し、鹿島建設株式会社に就職。同社技術研究所土木部第2研究室、広島支店温井ダム工事事務所などを経て1999年にLCE(Life Cycle Engineering)プロジェクトチームに配属。2001年、本学工学部土木工学科専任講師に着任し、2003年助教授。2004年より教授。博士(工学)。『モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!』の監修にも携わる

溝渕:1980年代に米国で落橋事故が頻発したことで、補修を怠ってきたコンクリートが30年~50年前後で事故の原因になることが分かってきました。日本は米国からざっと30年遅れ、高度成長期に大量に使われたコンクリートがそろそろ危険域にはいります。専門家は危険を訴えていたのですが、最悪の形で実証されてしまいました。

そもそも、コンクリートはどの程度持つものなんでしょう。たとえば笹子トンネルの場合は。

溝渕:「耐用年数の30年から50年は楽に持つし、安全係数を高めに取っているから実際にはさらに長期間大丈夫」と考えていたはずです。ですので「なぜこんなに早く」と、専門家はみな驚いているんです。

 ただし、コンクリートの寿命は使用環境で大きく変わってくるのです。

 荷重などによってひび割れが発生しますし、材料そのものやひび割れから進入する大気や水によって、内部の鉄筋が錆びて劣化します。人間と同じで、年を取ればあちこちが痛み出して、元々の性能を発揮できなくなってしまう。どのくらい長生きできるのかは、その人が生活する場所や働く環境で大きく変わってくる。だから、健康診断を受けて、早期治療で修復を図るわけですね。

事業者のメンテへの意識は決して低くない

仕事が忙しいのをいいわけに、つい受診をサボりたくなりますが。

溝渕:すると、あとで大きなツケを払うことになるかもしれません。これもすでに指摘されていますが、近年の景気低迷で税収が上がらない自治体や、業績が伸び悩む企業がメンテナンスコストを削っていることに、私はすごく危機感を覚えています。下水道のメンテ不足はその最たるものです。

高速道路や鉄道の事業者はどうでしょう。

溝渕:彼らの危機意識はすごく高いと思います。事業の根幹と人命がかかっていますから。メンテナンスも人とコストを掛けているはずです。一部メディアが言うような、事業者の手抜きや意識の甘さに原因を求める姿勢は、問題の真相を探り出す上ではむしろ障害になるんじゃないかと思います。

メンテの手抜きが原因ではないと?

溝渕:手抜きの有無は調査を待たないと結論は出ません。申し上げたいのは、かつて「コンクリートの構造物にほとんどメンテナンスは必要ない」という考え方が常識だった時代があり、笹子トンネルを初め、その時代に作られた大型構造物が今も数多く実用に供されている、ということです。

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「コンクリ-トが生んだ「作りっぱなし」の罪」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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