Winter Festa2017-2018

安倍政権は再び、「憲法第9条」改憲に挑む(前編)

 今回は【憲法第9条】をテーマに憲法学者の小林節氏(慶応義塾大学教授)と対談を行いました。「憲法は主権者である国民が「国をあずかる権力者、すなわち政治家と公務員に対して、正しく振る舞わせるための指図書、すなわちマニュアルである。」小林氏は、憲法は規律されるべき権力から無視され、現在、全く守られていないと語る。一方で改憲派でありながら、立憲主義に基づかない改憲については断固反対の立場をとる。対談の中で、小林氏は戦争と戦争の手段放棄を謳った9条と自衛隊について国家の自然権をもとに解説し、自衛隊の海外派兵を法律で制定する動きを否定してます。時の政権によって左右されないよう「侵略戦争放棄、自衛戦争堅持。自衛権を持ち、保有する軍隊を国際貢献のために必要な場合は海外派兵をする」と語り、海外派兵の条件として国連決議と国会の事前承認などを、憲法改正時に織り込むよう主張しています。

 「憲法、とりわけ9条に関する基礎知識が国民全体を通して正しく共有されていない」と小林氏は語っています。憲法及び第9条を規律対象である国家を含めて良い方向へと導く議論の出発点となり、読者自身が主権者として、日本の選択を進めて頂ければ幸いです。

 この「日本の選択:13の論点」について。現在の国民的議論となっている13の政策テーマを抽出し、そのテーマごとに、ステレオタイプの既成常識に拘らず、客観的なデータ・事実に基づきロジカルな持論を唱えている専門家と対談していきます。政策本位の議論を提起するために、一つのテーマごとに日本全体の議論が俯瞰できるよう、対談者の論以外に主要政党や主な有識者の論もマトリックス表に明示します。さらに、読者向けの政策質問シートを用意し、読者自身が持論を整理・明確化し、日本の選択を進められるものとしています。

(協力:渡邊健、深谷光得、薗部誠弥)

金野:まず、日本の憲法9条が置かれている環境について。

小林 節(こばやし・せつ)氏
東京都生まれ、日本の憲法学者・慶應義塾大学教授。本海新聞・大阪日日新聞客員論説委員。日本公法学会、全国憲法研究会、日米法学会、比較憲法学会、憲法理論研究会、憲法訴訟研究会、国際憲法学会、国際人権法学会に所属。
著書に、『「憲法」改正と改悪―憲法が機能していない日本は危ない』『国家権力の反乱 新貸金業法は闇金を利するだけではないか』『そろそろ憲法を変えてみようか』『対論!戦争、軍隊、この国の行方 九条改憲・国民投票を考える』などがある。

小林:もともとのデキの悪さは別に論ずるとして、憲法は規範として現在の形で制定されたものですが、現状で評価するならば、規範として全く機能していない、あるいは規律対象である権力によって全く無視されている。もちろん、護憲派は、「9条は一字一句改正されていない。9条は守られている」と言うかもしれませんが、実際のところは、憲法9条は全く守られていない。9条の従来の趣旨に対する賛否は別として、9条は完全に機能していない。

金野:9条は本来、権力を制御する意味での憲法ではあるのだが、それが機能していない。そこで先生が(前回の)安倍政権のときに、改憲の立場をとりながらも、「今の政権で改憲を進めることはいかがなものか。反対である」との趣旨をおっしゃっていたと理解していますが。

小林:まず第1に、9条とは直接関係ないですが、憲法というものは何のためにあるのかを考えねばならない。それは主権者国民大衆が、サービス機関としての国家のオーナーであって、受益者である。だから、主権者国民は国家に対してよきサービスをしろ、と言える立場である。そういう意味で憲法は、主権者国民、国のオーナーが、国をあずかる権力者、すなわち政治家と公務員に対して、正しく振る舞わせるための指図書、すなわちマニュアルです。

 国が今乱れているのは、政治のリーダーシップが欠如している上、政治家が権力と利益は享受するが責任はとらないからです。そういう政治がずっと続いてきたが故に、国民全体が一緒になって、「利益は私に、負担はどこかに行け」というような国になってしまっているのではないか。そうした状況をとらえて、自民党の憲法改正案は「社会が壊れている。社会の一番小さなものは夫婦で、家庭である。一番大きなものは国内的には国家である。であるから、社会を取り戻すために憲法を使って主権者国民に向かって、国を愛せと義務づける」と言っている。憲法の何たるかがわかっていない連中に、このように権力側から国民へ支持する条項を入れようとする、まさに憲法改正を云々させるわけにはいかない。

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著者プロフィール

金野 索一

金野 索一

財団法人日本政策学校・代表理事 / 多摩大学経営大学院・客員教授

コロンビア大学大学院国際公共政策大学院修士課程修了。平成維新の会・政策スタッフ、政策学校・一新塾、起業家養成学校アタッカーズ・ビジネススクールの経営、公益財団法人東京コミュニティ財団評議員等を経て現職

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いただいたコメントコメント7件

不勉強でもありましたが、目からうろこでした。ただ、今の日本(の政治)にこんなことができるのか?と思ってしまいます。(2012/12/26)

あらま!な点を幾つか。「憲法は・・・政治家と公務員に対して、正しく振る舞わせるための指図書」なら納税義務は不要でしょう。それがあるなら愛してね義務があっても良いかも。他国では国を守る義務は普通に書かれていますよね。世界中で憲法の何たるかを理解していないようです。「どんな教養人でも9条と自衛隊について説明できない」のにご自分は説明をなさっていらっしゃいますが・・?「アメリカ軍がいたから大丈夫だった」実際に米軍がどう対応するかは別として、居てくれるだけで良かった。今はどうなんでしょうか?ちゃんと日本のために動いてくれるように普段のお付き合いも大事かと。「そういう切り分けを頭の中でやった」とありますが、第2項に「前項の目的を達するため」との文言を付けて、これで侵略戦争のための軍備は持てないが、自衛のための軍備は持てると解釈できるようにしたのでは?そう書いてあるからそう云う理解ができる訳で、単に頭の中だけのことではないかと。「読んでわかるような憲法でないといけない」のに「憲法の本質がわかっていない政権下での改憲には反対」では、100年清河を待つようなものでしょう。自衛戦争すら否定する人々が居るのです。共産党の改憲よりマシでしょうし・・・。「自衛の名で侵略戦争なんてする必要がない」禁輸されなければですかね。「外的条件として、国連決議」安保理では1国の拒否権で決議できません。朝鮮戦争でもソ連が欠席しなければ国連軍は成立しませんでした。そんなものを有り難がってもどうなのでしょうか?国際社会と友好国のどっちが大事?という観点もありますね。「ソ連というのはあくまでも追いはぎ強盗国家であり、中国というのはあくまでも欲望丸出しの太った犬みたいなものであり」なんですし・・・。「地下に潜って、ゲリラ戦」ゲリラの処遇も国際法で決まっていますよね。確かその場で殺して良いと。「アジアのリーダー国家としての役割を果たさなければならない」自分に集るハエも追えないのに?安保理が決めたこと以外はできないのに?「日本人もいい意味で自立」米国の軍事力にも頼らずにということでしょうか?それとも軍事力には頼るが他では自立と?そんなことがどうすればできるかをご教示下さい。(2012/12/25)

典型的な解釈改憲論ですな。「泥棒を放棄」したという喩えは、全く妥当しない。「泥棒」は積極的な他者に対する行為を行い、かつそれが不当であることを含意している。そんなものは、放棄するのではなく、社会的に禁止抑制されるべきものだ。意図的な論点のすり替えが過ぎる。正当防衛が刑法上違法性阻却自由として認められても、それは刑法の枠における個人の問題なのであって、自動的に国家に敷衍していい話ではない。こういう意図的解釈を行う憲法学者は、「どこまで許されるか」という視点で解釈を行うが、結果として「何を実現したいか」という積極的な憲法の存在意義を毀損している。(2012/12/21)

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