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考えてみよう! 板挟みの小隊長が出すべき“正解”

「プライベート・ライアン」(1998年 スティーブン・スピルバーグ監督)【承前】

2013年1月18日(金)

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前回に引き続き、スティーブン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」についてお話をうかがいたいと思います。今回はトム・ハンクス演じるミラー大尉について、なんですが。

押井:いつも言ってるけど小隊の隊長って、中間管理職の典型なんです。この映画ではもちろんミラー大尉のことだよね。ドイツ軍が迫ってきていて状況は刻々と変わってる。本部とは連絡も取れないし、おうかがいを立てることもできないから、何を優先すべきなのかは現場の責任者が判断するしかない。

この前の「パトレイバー」の後藤も小隊長でしたね。

押井:ビジネスの世界に置き換えると、送られた先がとてつもなく劣勢な支社で、しかも海外支社だったりして、そこに自分の部下を引き連れて行ってみたら壊滅的な状況だと。すぐに撤退した方がまだ傷が小さいかもしれない。でも本社は絶対撤退するなと言ってる。

うわぁ。

押井:そんな状況でどう立ち振る舞うべきか……しかもそこに特殊な社員が絡んでる。そいつは社長の息子で、傷つけちゃダメ、手柄を立てた上で帰ってこいと。この映画をそうやって置き換えると、途端にビジネス映画になるんです。基本的に同じことをやってるわけ。

なるほど。「プライベート・ライアン」そのものですね。

押井:そもそも映画というのはそういうふうに見るべきなんです。カテゴリに騙されちゃダメ。「スピルバーグの戦争映画」だから、キャラクターがみんな個性的で、すごいアクションもあって、最後は必ず感動できて、観た人がみんな大満足で帰るべき映画だと思ってるんでしょ?

いや、ほとんどの人はそう思ってるんじゃないですか。

押井:だけど、少なくとも僕は満足しなかった。「アイツ、またやってやがる」って。ビッグショットの納富(貴久男 ※映画の銃器類の特殊効果の第一人者。押井監督の映画にも多数参加)さんなんか、「あの映画は社会派ということになってるけど、ただのアクション映画ですよ。だってハリウッドだもん」って、非常に明解だったからね。

 その「ただのアクション映画」でどうやって観客を騙くらかして「社会派の映画」として感動させるかと考えるわけで、だからそうやって設定でバイアスがかかるわけです。

「墓参り」シーンの本当の意味

押井:あの冒頭と終わりの墓参りのシーン、あれを切っちゃえばわかるよ。それだけのことで、あの映画は全然違う映画になるんです。そういう意味では、スピルバーグの真意はわかる人間にはわかるようになってるんだよ。一般のお客さんはそんなことはわからないだろうけど。

 ライアン二等兵が生き延びて、良き伴侶を得て、子宝に恵まれて、孫たちに囲まれて、これも全部自分を犠牲にして救ってくれたミラー小隊長のおかげなんだ……とあの墓参りのシーンを見て一般のお客さんは思うわけだけど、本当は全然違う。



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押井守監督、「公開不可」のトークイベント開催!

「Howling in the Night 2013~押井守、《戦争》を語る」

 「押井守が現実の戦争について語る」というコンセプトのトークイベント、すっかり毎年恒例となり、今年で12回目を迎えることとなりました。出演はいつもと同じく、次回作に向けて鋭意準備中の映画監督・押井守氏と、ニュース番組でおなじみの軍事コメンテーターであり、また「岡部ださく」のペンネームで文筆業でも活躍中の軍事評論家・岡部いさく氏。毎回「内容を活字に残さない」という条件での対談のため、他のメディアでは内容を知ることはできません。当日来た人だけが聞くことができる、抱腹絶倒興味津々のロングトーク、押井監督や岡部さんのファンの方も、そうでない方も、ぜひ足をお運びください。

 毎年、2月26日に開催して「226イベント」として親しまれてきた当イベントですが、今回は押井監督の新作撮影スケジュールと重なってしまったため、約一カ月前倒しでの開催となります。ご注意ください。

 今回のゲストは超大物を予定しておりますが、都合により「当日発表」とさせていただきます。ご期待ください。

開催概要

タイトル:「Howling in the Night2013~押井守、《戦争》を語る」
出演者:押井守、岡部いさく
ゲスト:シークレット(当日会場で発表)
期日:2013年1月27日(日)17時開場 18時開演 21時頃終演予定
場所:アカデミーヒルズ49
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー49F
入場料: パンフ付き前売4000円/当日4500円(各税込)
主催:有限会社グラナーテ/パックスヤポニカ製作委員会
協力:森ビル株式会社

チケット

ローソンチケットにて発売中:Lコード【34218】

問い合わせ

有限会社グラナーテ内 パックスヤポニカ製作委員会事務局
TEL&FAX:03-6804-8215
   MAIL:info@granaten.co.jp
URL:http://www.granaten.co.jp/hn/

コメント15件コメント/レビュー

そおか、後藤喜一は押井守だったんだ。顔も体格も似てないけど似てる。中間管理職として判断に迷ったとき、後藤隊長ならどうするか考えれば、最適解がでるね!(2013/01/22)

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「考えてみよう! 板挟みの小隊長が出すべき“正解”」の著者

押井 守

押井 守(おしい・まもる)

映画監督

1951年生まれ。東京都出身。大学卒業後、ラジオ番組制作会社等を経て、タツノコプロダクションに入社。84年「うる星やつら2」で映像作家として注目を集める。アニメの他に実写作品や小説も数多く手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

そおか、後藤喜一は押井守だったんだ。顔も体格も似てないけど似てる。中間管理職として判断に迷ったとき、後藤隊長ならどうするか考えれば、最適解がでるね!(2013/01/22)

組織の捨て石にはなるまいと苦悩する個人、逆に組織に一泡吹かせてしまうのが有名なスパイ小説の主人公、チャーリーマフィンを思い出してしまいました。しかし、それも逆名利君があってこそ。囲碁では捨て石が打てなければ上手くならない、大局観とはそういうものでしょう。囲碁文化の日本では、自分が捨て石だと知ってもそれに抗わない、義があれば命も捨てて名を重んじる傾向が強い。そもそも時代劇で描かれるテーマはこれに尽きると思います。(2013/01/21)

答え合わせですか。私がさんざん答え合わせをやった作品はパトレイバーもそうですがアニメ「冥王計画ゼオライマー」もだいぶやりました。天才的な科学者ゆえに組織的な狂気の渦中に巻き込まれ、逆に自らが狂気を持ってその主導権を奪って、運命をねじ伏せようとする・・という話です。全4話計2時間。製作者たちは後2話あれば十分描けたのにと言ってたりします。(2013/01/19)

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