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「今の政治・社会が1930年代に似ているって本当ですか?」

梅森直之・早稲田大学政治経済学術院教授に聞く(前編)

  • 小林 佳代

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2013年1月22日(火)

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 昨年12月の総選挙で自民党が政権を奪還し、今年に入って安倍晋三内閣が本格的に始動した。だが、“大勝”したはずの自民党の得票率はこれまでを下回るなど、国民の政党不信は変わらず、むしろ強まっている印象すらある。

 2008年のリーマンショック後の世界的な不況に、尖閣問題などをきっかけとする近隣諸国の関係悪化。そして二大政党への不信──。こうした状況を世界恐慌後の1930年代の日本に重ねて合わせて危惧する向きが少なくない。こうした認識や懸念をどう解釈すべきなのか。日本政治思想史を専門とする梅森直之・早稲田大学政治経済学術院教授に聞いた。

(聞き手は、中野目純一=日経ビジネス副編集長)

昨年12月に行われた衆議院議員選挙は自民党の圧勝で終わりました。この結果をどのように見ていますか。

梅森:誰が選ばれたかという結果よりも、むしろ、注目すべきは、投票率だと思います。今回、投票率は59.32%と、2009年に行われた前回の衆院選(69.28%)から大きく下がり、戦後最低の水準になりました。これは非常に深刻な問題だととらえています。

 今、日本は非常に大きな変革の時期にあります。国民自身が、変革の方向性を決めなくてはいけません。将来の方向性を決める大変重要な選挙であるということは、選挙前、各メディアでもしきりに報道されていました。にもかかわらず、実際の投票行動に結びつかなかった。国民の間に政党に対する不信が広がっている証左です。

確かに、全国の比例得票数を見ると、自民党は1662万票。2005年の2588万票を大きく下回り、大敗した2009年の1881万票にも及びませんでした。民主党の得票が激減したので、相対的に見ると大勝という形になりましたが、自民党に対する支持が広がっているとは言えませんね。

梅森:そうです。自民党が大勝したのは、明らかに民主党政権に対する揺り戻しです。

このように2大政党に対する国民の不信が広がっている状況は、日本の1930年代に似ているのではないかという声も出ています。

 30年代には政友党と民政党の2大政党がぶつかり合っていました。国民の間では「政党は何も決められない」「既存の政党はダメだ」という不満が高まり、大連立を求める声も出ていました。

 国内の政治状況だけでなく、極東での国際関係の悪化、29年から始まった世界恐慌、社会におけるナショナリズムの高まりなども、当時と今が似ているという指摘の論拠になっています。当時、日本はそうした環境の中で太平洋戦争という不幸な道を歩んでしまったわけですから、30年代と今が似ていることを不安視する向きがあります。

梅森直之(うめもり・なおゆき)氏
1962年広島県生まれ。85年早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科へ進む。2002年シカゴ大学政治学部博士課程修了。早稲田大学政治経済学部助教授などを経て、現在、同大学政治経済学術院教授。専門は日本政治思想史。主な著書に『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(光文社新書)、『帝国を撃て―平民社100年国際シンポジウム』(論創社)など(写真:陶山 勉、以下同)

梅森:私はむしろ、「似ている」と考えない方がいいと思います。政党政治の腐敗、国際関係の悪化など、部分的に当時と似ている状況があるからといって、今後も同じ方向に展開していくとは考えない方がいい。そう考えてしまうことで、実際に政治をそういう方向に誘導してしまう力が働くことの方を危惧します。

 こういう時こそ、楽観が必要です。そのためには30年代と今とが根本的に違うことを知り、それを強調することが大事だと思います。

 30年代の日本は、「帝国」でした。台湾、朝鮮半島などを領有していたほか、中国に満州国を建設し、さらにアジア諸国に進攻し占領地を拡大して「大東亜共栄圏」を成立させようとしていた時期です。当時の政治問題の多くは帝国主義のひずみから発生したものでした。

 30年代の日本の状況と今とが似ているという議論は、「日本が45年まで帝国だった」という事実を意識的にか無意識的にか、隠蔽、もしくは忘却したものだと思います。現在の日本は帝国主義とは断絶しています。この点をよく再認識すべきです。

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