• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

3:病気になれないニューヨーク、子どもを産みたくなるパリ

  • 坂本 龍一

  • 國分 功一郎

バックナンバー

2013年2月19日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

(前回から読む

主人公は政治家じゃない。今も昔も役人でした。

國分:僕はもともと政治哲学出身なんですが、どうも近代の政治哲学はピント外れの議論ばかりしてきたんじゃないか、と最近思うようになりました。

坂本龍一(さかもと・りゅういち)
音楽家。1952年生まれ。78年「千のナイフ」でソロ・デビュー、同年YMO結成に参加。88年映画「ラスト・エンペラー」でアカデミー賞作曲賞を受賞。常に革新的なサウンドを追求する姿勢は世界的評価を得ている。2006年には新たな音楽コミュニティー「commmons」をエイベックスとともに設立。また、2007年一般社団法人「more trees」を設立し森林保全と植林活動を行なうなど90年代後半より環境問題などへ積極的に関わる。東日本大震災後、「こどもの音楽再生基金」などさまざまな被災者支援プロジェクトに関わるとともに、脱原発を訴える活動をおこなっている。主な作品に「B-2 UNIT」「音楽図鑑」「BEAUTY」「LIFE」「out of noise」、著書に『音楽は自由にする』、共著に『縄文聖地巡礼』、『いまだから読みたい本――3.11後の日本』、『NO NUKES 2012 ぼくらの未来ガイドブック』など。2013年1月から放送がはじまったNHK大河ドラマ「八重の桜」のテーマ曲を担当している。90年より米国、ニューヨーク州在住。
(撮影:大槻純一、以下同)

坂本:といいますと?

國分:これまでの政治哲学って、立法権にどう正当性を与えるかという話ばかりしてきたんです。たとえば社会契約論ってそれですよね。

坂本:立法、行政、司法の三権分立で、国民が選んだ政治家が担うのが立法権ですね。法律を定めることによって、行政を動かす。

國分:教科書通りにいうとまさにそうなんです。でも実態はどうか? 政治家は、政治より選挙で頭がいっぱいですよね。

坂本:(笑)

國分:実際の政治を行い、統治を担っているのは実は行政、つまり官僚、役人です。政治の教科書には、立法権力が物事を決めて、それを行政権力がただただ執行すると書いてあるけれど。

坂本:学校ではそう習ったけれど。

國分:でも、実際には行政権力が物事を決めている。たとえば官僚が「こんど新しい制度を導入します」とか決めて、そのための予算や法律を国会に頼んで承認してもらう、というのが統治の現実ですよね。だから行政の上に立法があるんじゃなくて、立法の上に行政がある。

坂本:三権、分立してない(笑)。そこで問題がものすごく明確に見えてきますね。というのも、政治家は、民主主義に則った選挙という方法で国民が首をすげかえることができる。でも、官僚はいったんなったら、国民の力では変えられない。

國分:そうなんです。

坂本:しかし、実際にものごとを動かしているのは官僚。だから、政権がいくら変わろうと、いろいろな政治問題の本質は変わらないまま。

國分:まったく何も変わらない。これは国だけじゃなくて地方でも当てはまる話です。僕が今直面している個人的な体験、お話ししてもいいですか?

坂本:どうぞ。

50年前の道路計画が、小平のどんぐりの森を切り裂くとき

國分功一郎(こくぶん・こういちろう)
哲学者。1974年生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。高崎経済大学経済学部准教授。哲学、特に17世紀の哲学者スピノザ、現代フランスの哲学者ジル・ドゥルーズを専門とする。2011年に博士論文『スピノザの方法』(みすず書房)を出版し、各所で話題となる。同年に出版した『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社)は「紀伊國屋じんぶん大賞2011」を受賞。鋭い問題意識と分かりやすい語り口で、思想書としては異例のベストセラーに。脱原発やデモ、政治についても新聞・雑誌・テレビにて積極的に発言。現在は地元東京都小平市の都道328号線問題に取り組む、行動派の哲学者。今年2013年はドゥルーズ論と保育論を出版の予定。

國分:いま、僕は多摩の小平に住んでいるんですが、自宅の近所にすごく素敵などんぐりの森があるんですね。住民もとっても大切にしている。今まで開発されずに奇跡的に残っていた。その脇には玉川上水が流れていて、木々に囲まれたきれいな遊歩道もあります。

 ところが数年前、東京都が突然そこに道路を通すと言い出した。都道328号線という道路なんですが、実はその道路計画は50年も前に立案されたものだったんです。50年も凍結していたというのに、それを何の前触れもなく作ると言い出した。

 住民の多くはもちろん反対で、僕も反対です。ところが、実際に事業に触れてみてわかったのは、行政の決定に対して僕らは何も出来ないような仕組みが作られているということなんです。

 東京都は市内の体育館で説明会をやって、ものすごく丁重に対応する。巨大スクリーンをトラックで運んできて、そこに何千万もかけて作ったらしい説明ビデオを一時間ばかり映して、その後、30分ほど、まったく意味のない質疑応答をやってそれで終わりです。これで「住民説明会」というアリバイが完成する。

坂本:原発の誘致のスキームと同じですね。

國分:そう。まさに原発の誘致などでやってきたことの縮小版です。民主主義とか言っているけれど、僕らには行政が決めたことにアクセスする権利が与えられていない。僕はそのことを本当に心から実感しました。

 そして、これは近代の民主主義の理論そのものの欠陥ではないかと思い至ったんです。民主主義とか言っても、僕らに許されているのは、数年に一度、不完全な形で、部分的に、立法権に関わることだけですね。つまり、選挙をやって代議士を議会に送り込むことだけです。近代の民主主義は、選挙によって立法権に正統性を与えるという論点についてはいろいろ考えてきたけれど、実際に物事を決めて進めている行政に住民がどうオフィシャルに関わっていけるか、という問題については何も考えてこなかったのではないか。実際、僕らが行政に関われるのは、地方行政の長を選ぶ、知事選や市長選ぐらいのものです。

 だから、立法権、すなわち議会に民意をきちんと反映させるというのは大切な論点だけれども、それ以上に、市民が直接選んだり監視できない「行政」をどのように開いた存在にできるか、ということを今後考えていかないといけないと思うんです。

コメント0

「「知」の発見が世界を救う」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

大量陳列、大量販売というのがある程度限界にきているのかなと思います。

松﨑 曉 良品計画社長