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日本を知る投資家ほどアベノミクスに乗らない理由

村嶋帰一・シティグループ証券エコノミストに聞く

2013年2月7日(木)

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 円安・株高の順風を受ける安倍政権。アベノミクスは好調な滑り出しを見せているが、シティグループ証券エコノミストの村嶋帰一氏は日本を良く知る投資家ほどこの流れに乗っていないという。その理由とは。

(聞き手は渡辺康仁)

2012年の貿易赤字は過去最大になりました。アベノミクスが期待を集めていますが、日本経済の力は確実に弱まっています。

村嶋:東日本大震災後に原子力発電所の稼働が止まり、火力発電で代替したことが貿易収支の悪化要因になったことは間違いありません。しかし、震災前の2010年と2012年を比べると、火力発電の燃料となるLNG(液化天然ガス)の輸入額は2.5兆円程度しか増えていません。これが仮に2010年の水準に戻ったとしても6.9兆円の貿易赤字が解消されるわけではありません。

村嶋 帰一(むらしま きいち)氏
シティグループ証券投資戦略部経済・金利戦略グループ エコノミスト。1964年生まれ。1988年に東京大学卒業、野村総合研究所に入社。1993年に経済企画庁(現内閣府)に出向し、月例経済報告や経済白書などを担当。2002年に野村総合研究所を退社し、日興ソロモン・スミス・バーニー証券に入社。その後、社名は日興シティグループ証券、シティグループ証券へと変更。(撮影:清水盟貴)

 貿易赤字の要因は他にもあると考えるべきです。1つは、リーマンショック以降、世界経済の足取りが重くなり、所得効果を通じて輸出が減少したという側面です。それに加えて競争力の低下も見逃すわけにいきません。電機関連の製品が典型例ですが、携帯電話を含む通信機器はここ5年で年率1.5兆円弱程度、輸出が減少しています。テレビを含む音響・映像機器も大きく収支が悪化しました。

 このところの円安・ドル高で音響・映像機器はある程度のプラスの効果が出てもおかしくありません。アジア通貨に対する円高による価格競争力の低下が問題であれば、円安でプラスの効果が出てきます。より事態が深刻なのは携帯電話を含む通信機器です。さらに円安が進んだとしても、日本人が国産の携帯電話を買うようにはならないでしょう。むしろ円建ての輸入価格が上がることで貿易赤字の拡大要因になってしまいます。

輸出競争力の低下には構造的な要因があるのでしょうか。

村嶋:リーマンショック後に対アジア通貨で急激に円高が進んだことが影響しています。さらに言うと、震災後に日本企業のサプライチェーンが壊れたことで、海外メーカーは日本製以外の中間財で自社製品を作れるかどうかを試した可能性が高いと思っています。日本製品はモノ作りに欠かせないという前提条件を疑う動きが広がっているのでしょう。

 この2カ月半の円安が輸出数量の回復や輸出価格の持ち直しにつながっていくと思いますが、ドル建て取引の割合は輸入が7割なのに対して、輸出は半分です。初期反応としては円安に伴って貿易収支は悪化します。少しずつ持ち直していくとしても、それだけで貿易黒字には戻ることはありません。

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「日本を知る投資家ほどアベノミクスに乗らない理由」の著者

渡辺 康仁

渡辺 康仁(わたなべ・やすひと)

日経ビジネス副編集長

1994年日本経済新聞社に入社。2002年から2004年まで日経ビジネス記者。日経新聞に戻り、編集局経済部などを経て2013年から日経ビジネス副編集長。アベノミクスの行方に関心を持つ。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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