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「TPP反対」というスローガンを有効に使っている農政

2013年2月20日(水)

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日本政策学校代表理事の金野索一です。

「日本の選択:13の論点」と銘打ち、日本において国民的議論となっている政策テーマを抽出し、そのテーマごとに、ステレオタイプの既成常識にこだらず、客観的なデータ・事実に基づきロジカルな持論を唱えている専門家と対談していきます。
政策本位の議論を提起するために、1つのテーマごとに日本全体の議論が俯瞰できるよう、対談者の論以外に主要政党や主な有識者の論もマトリックス表に明示します。さらに、読者向けの政策質問シートを用意し読者自身が持論を整理・明確化し、日本の選択を進められるものとしています。

 今回は農業政策をテーマに農業技術通信社専務の浅川芳裕氏と対談を行いました。浅川氏はまず「人類に占める食料生産をする人口の割合が減少して、人類は豊かになってきた」と語ります。対談の中で、食糧自給率について「昔から金額ベースの食糧自給率は存在し、ずっと8割、7割で推移していましたが、ある年、突然4割になっているのです」と語り、日本独自のカロリーベース計算が恣意的に作られたことを指摘しています。2008年には食糧自給率を上げることを旨とする閣議決定がなされ、そのため2009年の選挙の時には、自民党から共産党まで全政党が、自給率をマニフェストに打ち出しています。

浅川氏は関税について「日本の現状は、米の関税が778%、小麦が252%、バターが360%です。何か食品をつくるといったら、まず穀物や乳製品が必要」と語り、食品産業が適性品質のものを適正価格で買えず、不当に高いものを買わされていると主張します。TPP反対派の最大の理由が賛成理由だと皮肉ります。浅川氏ならではのデータに基づいた議論を出発点に、読者自身が日本の選択を進めていければ幸いです。

(協力:渡邊健、宇山大介、太田陽一、小林美貴子)

浅川芳裕
山口県生まれ。月刊『農業経営者』副編集長。(株)農業技術通信社・専務取締役。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ・UAE)、Sony Maroc(カサブランカ・モロッコ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。若者向け農業誌『Agrizm』発行人、ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長、農業総合専門サイト『農業ビジネス』編集長を兼務。著書『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食糧自給率』(講談社+α新書)は15万部のベストセラーとなる。
近著に『日本の農業が復活する45の理由』(文藝春秋)、新刊『TPPで日本は世界1位の農業大国になるついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。

農業の生産性向上で人類は豊かになった

金野:まず日本の農業の現状と、農業政策における浅川さんの総論的な認識をお話しいただけますか。

浅川:まず、人類に占める食料生産をする人口の割合が減少して、人類は豊かになってきたということです。基本的にこの事実を認めていないのが農業政策であり、減少する農業人口をいかに増やすか、というのが議論の入り口であるところに問題があります。具体的にいえば、江戸時代であれば4人に3人が農民という割合が、戦後は4人に1人ぐらいになり、現在では、兼業農家を含めても100人に3人の割合です。

 農業生産性の向上のおかげで、97人が農業に従事せずとも、食料を心配せずに自分の役割を果たせるようになった。

金野:3人で100人分をつくれるようになったという意味で、豊かになったというお話ですね。

浅川:この点を認識しなければ、我々はできるだけ農業に従事した方がいいという話になり、生産性を減らしていこうというのは、社会主義や共産主義以前の話になってしまいます。4人に3人が農家だったと時代は逆にいえば、3人の農家に対して1人の消費者しかない。それで儲かるはずがありません。

 先進国の食の将来を担う10代、20代の農業者の比率を試算したところ、1000人に1人です。1人に対して999人のお客さんがいる時代が到来しているのです。99.9%は農耕技術を失うなか、現在、生き残った農家はまさにエリート中のエリートです。

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「「TPP反対」というスローガンを有効に使っている農政」の著者

金野 索一

金野 索一(こんの・さくいち)

財団法人日本政策学校・代表理事 / 多摩大学経営大学院・客員教授

コロンビア大学大学院国際公共政策大学院修士課程修了。平成維新の会・政策スタッフ、政策学校・一新塾、起業家養成学校アタッカーズ・ビジネススクールの経営、公益財団法人東京コミュニティ財団評議員等を経て現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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