政府は今年秋にも2014年4月からの消費増税を判断する。円安による調達コストの上昇にさらされる小売業はさらなる重荷を背負いかねない。原田泳幸・日本マクドナルドホールディングス会長兼社長は価格戦略の重要性を説く。
アベノミクス効果で円安・株高が進んでいます。
原田:株価は期待値で動きます。サイエンス(科学)ではなく、サイコロジー(心理学)。そして今の株高は明らかにサイコロジー、つまり期待値です。
今後、経済成長の実態が伴わなければ、リバウンドが怖いでしょうね。今は何でもいいですから、実態ある成長を国民に見せなくてはなりません。例えばトヨタ自動車の業績を見ると、円安に転じた為替変動の恩恵だけではなく、トヨタ自体の業績が改善している。ああいった例を増やすべきでしょう。
アベノミクスの3本目の矢となる「成長戦略」では何が必要でしょう。
原田:金融緩和と財政出動という最初の2本の矢は、カンフル剤だと思っています。公共投資に踏み切るといっていますが、これは、国が今までの経験の中で最も景気を刺激したという実績がある手法。ですから今回採用されたわけで、それを非難するつもりはありません。カンフル剤としての役目を果たせばいい。
ですが、日本経済を根本的に治療するには、どんな成長を図るかという国家としてのビジョンが欠かせません。そこはまだ漠然としているように感じますね。
例えば、1月に閣議決定された政府の2013年度の予算案では、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を中心とした研究推進費として、90億円が計上されました。ですが、たったの90億円ですよ。これではあまりに少なすぎやしませんか。
日本マクドナルドのビジネス波及効果を考えると、うちは年間約5200億円の売上高があります。消費税が10%になれば、それだけで520億円の税金を払うことになる。それだけではありません。社員やクルーへの給与や、原材料費などを加味すると、日本経済に1千数百億規模の貢献をしているわけです。
それにもかかわらず、成長の基軸とするiPS細胞の研究費に90億円とは、ケタが1つ少なくありませんかと言いたいですね。
これはあくまでも一例です。日本国家とし、何を成長の軸に据え、何に投資するのか。成長戦略のフレームワークが全く伝わってきません。
経営者が自社の強みや価値を考えるのと同じように、政府も日本国家のエクスクルーシブバリュー(唯一持つ価値)は何かと考えるべきでしょう。他国が真似できない日本独自の強みや価値は何か。
それはやはり、付加価値の高い商品を作ることができる点にあるのではないでしょうか。農業、工業とも、品質や安全性に秀で、微細化技術も高い。これこそ、日本国民が持っている普遍的な強みでしょう。これを成長の軸に据えずにどうするというんでしょうか。


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