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我々はなぜマンガの人物に「リアル」を感じるのか

佐渡島庸平さん×澤本嘉光さん 第3回

2013年3月26日(火)

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(前回から読む

撮影:大槻純一 対談場所:(SYNQA

澤本:前回から引き続き、佐渡島さんの編集の仕事についてうかがっていきたいと思います。僕はずっと昔から漫画が好きだったんですが、いつも思っていたことがありまして。それは、何で絵がこんなに上手な人が、面白いストーリーも作れるんだろうか、ずるいじゃないか、と、いうことなんですが。

佐渡島:……。

澤本:だって僕は、漫画家になりたくても、絵が描けないからなれないぞ、と思っていて。でも、お話をうかがっていると、佐渡島さんのような編集者の方が、道を作ってあげていることも大きいのかな、と。

佐渡島:いえ、本当に面白い漫画は、そんなことはないです。僕らのような編集者が漫画家の話し相手になって、その漫画家から重要なところを引き出すということはあっても、編集者の思い通りに漫画を描いてもらう、ということはないです。

澤本:だとすると編集者の貢献は、どんなところにあるんですか。

佐渡島:僕らの役割は、漫画家が作品世界に入り込みやすくすることだと思うんです。

 澤本さんも小説や映画の脚本をお書きになっていますが、たとえば小説や映画の脚本の場合は、もしかしたら登場人物が履いている靴はどんなデザインで、どんなブランドのものか、とかは、作者の方もあんまりよくわかっていない可能性があるんです。

澤本:それ…確かにやってないですね。セリフばっかり書いているから、そこまで考えないです。

マンガ家は映画監督より「決断点」が多い

佐渡島:靴のブランドに限らず、登場人物がその靴をどれぐらい履きつぶしているかとか、すごくいい靴なんだけど意外に汚れているとか、安い靴なんだけどきれいに履いているとか。

 大きなストーリー展開からいったら、大して意味がない行為かもしれませんが、漫画家はその細部を必ず描いているから、登場人物一人ひとりのキャラクターを決めるときに、決断しているポイントは、ほかのクリエーターより圧倒的に多いんです。

澤本:なるほど、それはすごく面白いな。

佐渡島:映画監督は「どんな靴を履かせるか」の決断はしていますが、映画は衣装係が別にいて、その係からの提案に対して、「それでいいですよ」ということですよね。しかも俳優がいるから、そもそも、登場人物がいきなりリアリティーを持ってしまっているんです。

 でもこれが漫画だと、初登場のシーンでは結構きれいな靴を描いていたんだけど、しばらく動かしていくうちに、「このキャラはきれいな靴とかは履くやつじゃなかった」と気付いて、汚い靴を履かせるようになるんです。

 漫画家とは、絵を描きながら細部をいっぱい決断して、登場人物についてもいっぱい知っている人のことなんです。それによって、より深い感情が描けるし、より鮮明なエピソードが思い付くんですよね。

澤本:確かにそうだな。

佐渡島:それで、登場人物について深く知るための話し合いを漫画家とする、というのが僕の仕事なんです。

澤本:何か、いろいろなことに気が付いたような気がします。そうか、そうだよな。

佐渡島:その打ち合わせのうまさというのが編集者には重要です。たぶん漫画家は、小説家よりも決断している量が多い。たとえば小山宙哉さん(『宇宙兄弟』の作者)とのやり取りでいうと、宇宙服に「パンプキンスーツ」という、オレンジ色のユニフォームがあるじゃないですか。

『宇宙兄弟』

澤本:手にヘルメットを持ってニッコリという写真なんかの宇宙服ですね。

佐渡島:あれの写真って、どれだけ探しても前側から写したものしかないんですよ。後ろ側って、新聞や宣伝では絶対使いませんし、ネット上にも落ちていない。それでJAXAの方に聞いてみても、みなさん、意識したことがないから情報が手に入らない。

澤本:それでも描かなきゃならない。

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「我々はなぜマンガの人物に「リアル」を感じるのか」の著者

澤本 嘉光

澤本 嘉光(さわもと・よしみつ)

CMプランナー

1966年、長崎県生まれ。東京大学文学部卒業後、電通に入社。カンヌ国際広告祭賞など内外の受賞多数。2007年に始まったソフトバンクモバイル「白戸家シリーズ」は5年目に突入し、いまや国民的CMに成長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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