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地獄への道は、善意で敷き詰められている

田坂広志氏と伊勢谷友介氏が語る新しい民主主義の形・その2

2013年4月16日(火)

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今、民主主義が問われている。昨年12月の衆院選では自民党が大勝し、絶対安定多数を握ったものの、エネルギーや国防、通商など国の将来を左右する問題は山積しており、いずれも国論を二分する事態に陥っている。

民意はなかなか反映されず、世の中は一向に良くならない。そんな民主主義の限界を打ち破るため、昨年12月に発足したのがデモクラシー2.0イニシアティブだ。様々な組織や団体が参加し、現状の民主主義を新しい参加型民主主義に変革していくことを目指す。

今、なぜ民主主義の変革なのか。デモクラシー2.0イニシアティブの発起人の一人で、日経ビジネスオンラインではコラム「エネルギーと民主主義」の執筆者としてもおなじみの田坂広志氏と、俳優・映画監督で、自ら代表を務める株式会社リバースプロジェクトにおいて、新しい政治参加の方法を考え提案する「クラウドガバメントラボ」などの活動にも力を入れる伊勢谷友介氏が対談した。今回はその後編。

前回は、民意が反映されているとは言い難い現在の民主主義を「新たな参加型民主主義」に変えなければならないという話から始まり、その参加型民主主義を実現するためには様々な問題に対して「同時に」働きかけなければならず、そのためにデモクラシー2.0イニシアティブを立ち上げたという話をお伺いしました。なかでも「英雄を必要とする国が不幸なのだ」という劇作家ベルトルト・ブレヒトの言葉が印象的でした。

田坂:20世紀は、ある意味で「悪人」がいた時代でした。第二次世界大戦におけるヒトラーやスターウォーズにおけるダースベイダーのような「悪人」がいた。そして、これらの「悪人」を打ち倒せば、世界に平和が訪れ、宇宙に平和が訪れるという素朴な物語が語れた時代でした。

 しかし、21世紀は、その意味での「悪人」がいない時代です。世界全体で様々な問題が起こっているにもかかわらず、「あいつが問題の元凶だ」「あいつが問題を引き起こした犯人だ」と呼べるような「悪人」がいない。「悪人」が見当たらない。しかし、それにもかかわらず、世界全体の問題は深刻化し、解決策の見えない状況が続いていく。その理由は、誰か特定の「悪人」が問題を起こしているのではなく、社会という「システム」全体が病んでいるからです。社会という「システム」が、あたかも意志を持っているかのように、国民の願いを無視して、それに反する方向に変わっていく。

 例えば、日本の行政組織が、国民の願いに反し、税金を無駄遣いする組織へと肥大化していく。それは、誰か特定の「悪人」や「犯人」が企んでいることではありません。行政組織そのものが、その肥大化を加速させるように自己運動していく。まさに「行政システム」が病んでいるのです。

 この「あたかも意志を持つかのように自己運動していく社会システム」に、どう処していくのか、どう変えていくのか。それこそが、21世紀において我々が直面する最も困難な課題です。もとより、この変革に、安易な「特効薬」はありませんが、もし、我々に戦いの拠り所とするものがあるとすれば、それがまさに「クラウド」だと思います。

 すなわち、あたかも意志を持つかのように自己運動する「社会システム」を変えるには、ただ「強力なリーダー」が生まれることだけでは不可能です。むしろ、「ウィズダム・オブ・クラウズ」、すなわち無数の市民が集まったとき、そこに生まれてくる英知、「市民の英知」を活用することです。

この「市民の英知」は、インターネット革命によって、その影響力を急速に増しています。この力を最大限に生かして、この社会システムの変革に取り組んでいくべきでしょう。

田坂 広志(たさか・ひろし)氏
多摩大学大学院教授。1974年東京大学卒業、81年同大学院修了。工学博士(原子力工学)。1987年米国シンクタンク・バテル記念研究所およびパシフィックノースウェスト国立研究所の客員研究員を経て、1990年日本総合研究所の設立に参画。取締役・創発戦略センター所長を務める。2000年多摩大学大学院教授に就任。同年シンクタンク・ソフィアバンクを設立、代表に就任。2003年社会起業家フォーラムを設立、代表に就任。2008年世界経済フォーラム(ダボス会議)GACメンバーに就任。2010年世界賢人会議ブダペストクラブ・日本代表に就任。2011年3~9月、東日本大震災に伴い内閣官房参与に就任。原発事故への対策、原子力行政の改革、原子力政策の転換に取り組む。2012年民主主義の進化をめざすデモクラシー2.0イニシアティブの運動を開始。著書は60冊余。近著に『官邸から見た原発事故の真実』『田坂教授、教えてください。これから原発は、どうなるのですか』(写真:竹井 俊晴、以下同)

 現在の日本の政治は、なぜおかしくなっているのか。その原因は様々にありますが、一つの要因は、「二項対立的な討論」にあります。これは、デモクラシー2.0イニシアティブが掲げる「14のパラダイム転換」の中にも「二項対立的な討論から、弁証法的な対話へ」という言葉で取り上げていますが、この「二項対立的な討論」の文化を変えていく必要があります。

 例えば、原発問題もそうですし、消費税や軍備についてもそうです。テレビ番組などのメディアは、問題を「原発維持か、脱原発か」「消費税増税、賛成か反対か」という形で二項対立的に単純化し、意見の違う識者の議論の対立を際立たせ、あたかも闘犬を戦わせるように煽ります。そして、過激に相手を批判し、否定する人が注目を集めるという状況を、メディアは好みます。これは、前回お話しした「英雄」と「悪玉」(悪人)の対立構図と根は同じです。

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田坂 広志

田坂 広志(たさか・ひろし)

多摩大学大学院教授

1974年東京大学卒業、81年同大学院修了。工学博士(原子力工学)。米シンクタンク客員研究員などを経て、2000年多摩大学大学院教授に就任。2011年3~9月、東日本大震災に伴い内閣官房参与に就任

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

伊勢谷 友介

伊勢谷 友介(いせや・ゆうすけ)

俳優/リバースプロジェクト代表

1976年生まれ。東京藝術大学美術学部修士課程修了。1998年、ニューヨーク大学映画コース(サマーセミスター)に短期留学。数々の映画やドラマに出演。地球や社会を見つめ直す活動にも力を注ぐ。(写真:©操上和美)

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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