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「機械との競争」に人は完敗している

エリック・ブリニョルフソンMIT教授に聞く【前編】

2013年4月18日(木)

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 世界経済は金融危機から回復途上にある。だが、その足取りにもどかしさは否めない。先進国ではとりわけ雇用の回復が遅れている。理由はなぜか。デジタル技術の進化が雇用を奪ったことを実証的に提示し、米国で話題を呼んだ『機械との競争』(日本版は日経BP社)の筆者、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のエリック・ブリニョルフソン教授に聞いた。

なぜこのテーマの本を書こうと考えたのでしょうか。

ブリニョルフソン:2年前のことです。米国では「イノベーションが停滞してきたのではないか」と懸念する声が出ていました。たとえば、タイラー・コーエン(米ジョージ・メイソン大学)教授は、『The Great Stagnation』(邦題は『大停滞』、NTT出版)という本を書いて、そう論じていたのです。

エリック・ブリニョルフソン(Erik Brynjolfsson)
米ハーバード大学卒。米マサチューセッツ工科大学(MIT)にて博士号(経営経済学)を取得。現在はMITスローン・マネジメント・スクール教授。デジタル・ビジネス・センターのディレクターやスローン・マネジメント・レビュー誌の編集長なども務める。著書に『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)などがある。『機械との競争』(日経BP社)は、デジタル・ビジネス・センターのアンドリュー・マカフィー主任リサーチサイエンティストとの共著。(写真:常盤武彦、以下同)

 我々もその本を読み、興味深くとらえていましたが、一方で完全な間違いであると思っていました。そこで(共著者の)アンドリュー・マカフィーと私は、こうした主張に対する反論を書くべきだと考えたのです。

 それが2011年の春でした。我々は既にたくさんの調査をしてきて、この問題に興味を持ってくれるMITの学生がたくさんいました。「デジタル・フロンティア・チーム」と名付けたそのグループで毎週ミーティングを持ち、素早くアマゾン(ドットコム)のキンドルで10月には出版できたのです。すると米国ではすぐに話題になった。ニューヨークタイムズでは一面で扱われ、ウォールストリート・ジャーナルやフィナンシャル・タイムズなどメディアに取り上げられました。

 好評だった理由は、アカデミックな調査を利用し、経済学の理論と証拠に基づく一方で、幅広い人に理解できるように書いたからだと思います。

国の富は増えたが、上位1%が取っていった

当初のコンセプトは「機械との競争」という最終的なものとは違っていたのですね。

ブリニョルフソン:ええ、少し違っていました。「技術の進化が停滞している」と語られていたので、そうではなく逆に急速に前進していることを示すつもりでした。しかし、取り組むうちにある重要な問いと格闘しなければならなくなったのです。

 「なぜ米国ではそんなにたくさんの人が職を失っているのか。そしてなぜ所得の中間値が1997年よりも低くなったのか」という問いでした。イノベーションが進み生産性が向上したのに、なぜ賃金は低く、雇用は少なくなったのか。

 「デジタル技術の加速」のためです。それは生産性の向上をもたらしましたが、ついていけない人々を振り落としてしまった。ある人たちは多くのものを得て、別の人たちは少ないものしか得られずに終わる。それが過去15年に起きたことです。国全体の富は増えましたが、多くの人にとって分け前は減った。残りは上位1%が取っていったのです。

デジタル技術と雇用との関係は、なぜこれまで大きな議論にならなかったのでしょうか。

ブリニョルフソン:技術の変化が雇用や失業にどう影響するかという議論は経済学においてはありました。ただ、多くは学者向けのものだったのです。

 経済学者は技術の変化がいかに速いかを正しく認識していませんでした。それを理解するには、経済学と技術という2つの専門性が必要です。それらを一体として考えて初めて、現在の経済の中で何が起きているかが理解できる。この2つがなかなか両立していなかった。

コメント21件コメント/レビュー

アメリカだから、そう思うのかも。日本は違うと思いますよ。その技術開発にどれだけの人が、情熱と能力を注ぎ、責任感でもって達成してきたことか。技術で日本に負けたアメリカの、グチに聞こえますが。(2013/04/19)

「技術は雇用を破壊する ~『機械との競争』著者が語る~」のバックナンバー

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「「機械との競争」に人は完敗している」の著者

細田 孝宏

細田 孝宏(ほそだ・たかひろ)

日経ビジネス 副編集長

1995年早稲田大学卒業。日経BPに入社し、日経ビジネス編集に配属される。日経アーキテクチュア編集、日経ビジネス・ニューヨーク支局長などを経て現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

アメリカだから、そう思うのかも。日本は違うと思いますよ。その技術開発にどれだけの人が、情熱と能力を注ぎ、責任感でもって達成してきたことか。技術で日本に負けたアメリカの、グチに聞こえますが。(2013/04/19)

これまでの社会構造は、「努力しないものを経済的に罰する」、もしくは「その他大勢と同じ価値しか提供できないものを経済的に罰する」ようにできています。これは衣食住に安定を求めることさえ厳しい環境から抜け出すにあたって必要なことだったのだろうと思います。怠け者を養っている余裕はないということですね。この構造の欠点は、社会全体として生み出せる経済的価値がどんなに必要以上になろうとも、経済的価値を生み出す側に回るために他者と競争することをやめられないし、またはどれだけ少数の人間だけで必要な価値が生み出せるようになろうとも、価値を生み出す側に加われなかった人々に不幸をもたらしてしまうということです。ブリニュルフソン教授の提唱しているように、これから急速にデジタル技術が人間の雇用を奪っていくはずです。しかし過去の産業革命とは異なり、その技術の進化のスピードが圧倒的に速いため、人間の進化のスピードが追いつかない可能性があります。そろそろ足るを知って、技術に労働を任せ、人間は楽を享受する世の中を作るための準備を始めなければいけないのかもしれません。(2013/04/18)

テクノロジーの発展で少なくなったお仕事(工場周りとか)、増えたお仕事(IT関係、またはそれを駆使した事務職など)に対して、教育制度が追いつかなく、見合う人材を輩出できていないと考えれば納得がいきます。みながIT技術者になれるわけもないので。うーん。サービス職などに雇用が見出せればいいのですが。私たちは大変な時代に生きているのかもしれませんね。(2013/04/18)

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三品 和広 神戸大学教授