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“ユーロの夢”から醒めたくないEU上層部

モンティ首相も認めたユーロ危機の本質

2013年4月26日(金)

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 2月24日の総選挙から2カ月を経てようやく新政権樹立に漕ぎ着けそうなイタリア。だが、首相指名を受けたエリンコ・レッタ氏はモンティ首相が進めた緊縮策を見直すと表明、経済立て直しへの道は不透明さを増している。キプロスでは3月、ユーロ圏からの支援条件に絡んで大口預金者にも負担を強いたことから大混乱が発生した。一方、ギリシャ、スペインなどでは失業率が依然として高く、経済再生への道は見えていない――。

 今年4月4~6日にINET*(記事末を参照)が開いた国際経済を巡る会議で、会場の参加者から拍手喝采を浴びたスピーカーがいた。「ユーロ危機の本質」について語ったスウェーデンの元国会議員リーフ・パグロツキー氏だ。スウェーデンの中央銀行と財務省に長く勤務し、ギリシャ危機においては2010年5月からジョージ・パパンドレウ政権のアドバイザーも務めた同氏に、ユーロ危機問題の本質とは何かを聞いた。

(聞き手は石黒 千賀子)

ユーロ危機は、昨年夏に欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が、「(ユーロを守るためには)必要なことは何でもする」と発言し、南欧諸国の国債を無制限に購入すると発表して以来、落ち着きを見せたかに思えました。しかし、3月にはキプロスで混乱が発生、イタリアの政治の迷走ぶりを見ていると、事態はやはり深刻と思わざるをえません。何が問題なのでしょうか。

パグロツキー氏:金融危機、そしてギリシャ危機が発生して以降、ユーロ圏の政策立案者たちは、金融規制の強化と金融市場の監督強化、そして加盟各国のマクロ経済を巡る監督機能の強化に力を入れてきた。だが、私が提起したいのは、こうした規制や監督機能を危機が発生する前から整備していれば、危機を回避できたのかという点だ。答えは「NO」だ。

 問題を整理して説明しよう。現在、ユーロ圏が直面している危機には2種類ある。1つがアイルランドやスペインなどにおける問題で、いわゆる「バブルを招いた国々の問題」だ。2つめはギリシャ、イタリアといった国々が抱える「放漫財政と競争力を巡る問題」だ。

アイルランドの問題もギリシャの問題も誰もが知っていた

リーフ・パグロツキー(Leif Pgrotsky)
1951年スウェーデン、イェテボリ生まれ。イェテボリ大学を卒業(経済学専攻)後、同大学で修士(経済学)を取得し、1975年にスウェーデンの国立中央銀行(Riskank)に入行。その後財務省に移り、90年企画担当マネジャー、94年財務省副大臣を経て、96年内閣担当大臣、97~2002年貿易担当大臣、2002~04年貿易相、2004~06年教育文化担当相などを歴任。2002~12年10月まで国会議員も務めた(社会民主党)。また、2006年10月~10年10月まで中央銀行の金融政策委員を選ぶ理事会(General Council)の副理事長、2010年10月~2011年5月まで同理事会のメンバーも務めた。(撮影:Brian Ching)

 第1の問題は、アイルランドを例に説明したい。ユーロという通貨同盟の加盟国であるということは、全加盟国の金利は1つになるということだ。各国がそれぞれ金融政策を持つということにはならない。これが何を意味するか。

 アイルランドにはアイルランドの経済成長率があり、インフレ率があった*。そして、ほかの欧州諸国に追いつかなければ、との思いがあった。そうした中でユーロが1999年に導入された結果、突然、金利だけがドイツと一緒になった。これにより、アイルランドの実質金利はマイナスになった。当然の結果だが、そのために借り入れ需要が爆発的に拡大し、インフレが進んだ。そして、そのインフレがさらに借り入れ需要の拡大を招くという悪循環に陥っていった。アイルランドにおいて、バブルが発生したのは必然だったということだ。

*アイルランドは農業国で、1973年にEC(欧州共同体)に加盟した時点で国民1人当たりの所得はヨーロッパ平均の半分以下と、欧州においては最も貧しい国とされてきた。

 アイルランドにおける信用供与の拡大は凄まじかった。当時、融資が毎月、どれだけ拡大していたかは報告されており、EUの高官を含め誰もがアイルランドで何が起きていたか知っていた。秘密でも何でもなかった。にもかかわらず、誰も対策を講じようとはしなかった。つまり、私が指摘したいのは、たとえ加盟国の「マクロ経済に対する監視体制(MIP)*」が当時から存在していたとしても、結果は変わらなかったと思う、ということだ。

*EUは2011年秋、ユーロ危機を受けて、加盟国における巨額の財政赤字や債務の問題、及び住宅バブル発生の再発を防ぐため、MIP(Macroeconomic Imbalance Procedure)という制度を導入した。EUが加盟各国の財政状況などを詳細に調べ、一定基準を満たさない場合には是正勧告を出し、それでも事態の改善が図られない場合には制裁を科すというもの。2012年2月に第1回のMIPが実施され、レポートが出たが、いずれの国も過剰な財政的不均衡はないと判断された。同年11月に2回目のMIPが実施され、その結果を受け、欧州委員会がさらに詳細な調査報告書をこの4月10日に発表、同報告書はスペインとスロベニアに「過剰な不均衡が存在する」と認定したが、EUは是正措置を求めることは見送った。

すると、スペインやポルトガルにおいて発生したバブルも避けられないものだったと?

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「“ユーロの夢”から醒めたくないEU上層部」の著者

石黒 千賀子

石黒 千賀子(いしぐろ・ちかこ)

日経ビジネス編集委員

日経BPに入社後、英LSEに留学し修士取得。日経ビジネス、日経ナショナルジオグラフィック、日経ベンチャーを経て、2003年日経ビジネスに編集委員として戻る。主に、本誌の「世界鳥瞰」の欄を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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