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既得権益層が居座り続ければ、国は衰退する

ダロン・アセモグル米MIT教授インタビュー

2013年6月3日(月)

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日経ビジネス別冊「新しい経済の教科書2013~2014」では、「制度と貧困の経済学」を特集している。その中で、「創造的破壊が起こりやすい制度にしなければ、国家は失敗する」と主張するジェームズ・ロビンソン米ハーバード大学教授との共著『Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty』(『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』の邦題で、6月21日に上下巻が早川書房から出版予定。リンク先は上巻)で知られるダロン・アセモグル米MIT教授のインタビューを掲載した。国が繁栄する条件は何か、成長が止まった時、国は何をすればいいのか。オンラインでは、独自の内容を含め、再編集したインタビューを掲載する。

(聞き手は広野彩子)

ここのところ途上国支援やビジネスの関係でインタビューをすると、「インクルーシブ(inclusive)」という言葉をたびたび聞きます。全員を戦力化していく、という文脈です。

 そうなのですか。我々が共著『Why Nations Fail』で使う以前は、inclusiveなど、そのような文脈ではあまり聞かなかった言葉でした。聞いたことがあったなら、ジェームズ・ロビンソン教授と一緒に「本当にこの言葉でいいのかな?」と悩んだはずですからね。著作権マークでもつければよかった(笑)。どの国のどのような立場の人たちも経済的困難に直面し、新たな視点を模索しているのでしょうね。

インクルーシブは、ダイバーシティー(多様性)と同義でしょうか?

 同義といえば同義なのですが、多様性は全員参加を実現する最初のステップにすぎません。多様性が大事だと言う時は、単に(既成の枠の中に)多様な人々をまず増やすのが目的でしょう。そうではなく、全員をテーブルにつけ、幅広い人々を(意思決定に)巻き込んで新しいものを作り上げていける制度が、インクルーシブという言葉で言いたいことです。

収奪的な成長と、インクルーシブな成長は違う

つまりは「全員参加」でしょうか。共著作『Why Nations Fail』では、国家が栄え続ける発展段階で、まず特定層のための中央集権的で収奪的な制度ができ、それから創造的破壊を起こすために「全員参加型(inclusive)」の制度に変わっていく必要があるとしていました。そうしますと、国の成長には制度が一番重要なのですか。

 国が長期的に、持続的に成長するためにはそうです。創造的破壊を通じて最高の技術が生まれ、その技術を使って最高の制度にするわけです。その時に、「全員政治」の制度と「全員経済」の制度、双方を同時に実現することが望ましい。政治と経済の一方が中央集権的・収奪的なままで、特定層に権限が集中すると一時は成長したとしても、やがて停滞するでしょう。

ダロン・アセモグル(Daron Acemoglu)
米MIT教授。1967年トルコ・イスタンブール生まれ。1989年英ヨーク大学卒業、92年、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス経済学博士(Ph.D.)。同講師、93年、米MIT助教授を経て2000年から現職。(写真:Mayumi Nashida、以下同)

 たとえば、旧ソビエト社会主義共和国連邦がそうでした。ウラジミール・レーニンが率いたボリシェビキによる徹底的な中央集権体制によって、国がすべてを管理して最初はうまくいきましたが、結局、誰も創造的破壊を起こそうというインセンティブを持たなくなり、成長が止まりました。技術キャッチアップ型経済、あるいは(石油など)特定資源の利用による収奪的な成長と全員参加型の成長では違うのです。構造的に創造的破壊を必要としない前者はやがて行き詰まり、長続きしません。

 英国が産業革命で劇的に成長したのは、それに先立つ1688年に名誉革命があり、創造的破壊が生まれる素地があったからです。だから産業革命が波及しても、近隣諸国では必ずしもすぐに劇的な成長につながらなかった。経済だけでなく政治制度も中央集権型から全員参加型に移行しないと難しいのです。

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「既得権益層が居座り続ければ、国は衰退する」の著者

広野 彩子

広野 彩子(ひろの・あやこ)

日本経済新聞社NAR編集部次長

朝日新聞記者を経て日経ビジネス記者、2013年から日経ビジネス副編集長。日経ビジネスオンラインでコラムの執筆・編集を担当。入山章栄氏の著作『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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