日本企業の国際競争力が低下している原因の1つとしてよく指摘されるのが、意思決定が遅い点だ。欧米企業だけでなく、韓国や中国など東アジアのほかの国の企業と比べても後れを取っていると言われる。
日本企業が意思決定のスピードを速めるために何が必要なのか。マッキンゼーのソウルオフィスのディレクターを務め、東アジアの企業の動向に詳しいリチャード・ドブズ氏に聞いた。
(聞き手は中野目 純一)
日本企業の弱点の1つとして、意思決定が遅いことがよく指摘されます。

米マッキンゼー・アンド・カンパニーのソウルオフィスのディレクター。同社の研究機関であるマッキンゼーグローバルインスティチュートのディレクターも兼務。英オックスフォード大学卒。同大学経営大学院のアソシエイトフェローとして企業価値評価に関する授業を受け持つ。
ドブズ:確かにそうですね。ある中央アジアの国の首相と会談した時のことです。当時、同国では発電所の建設プロジェクトについて、海外の企業が建設資金を調達して発電所を建設し、運営まで担ってくれることを求めていました。
その際に発注先として検討していたのは、中国企業のコンソーシアムと韓国企業のコンソーシアムです。その矢先に金融危機が起きて、首相は韓国企業のコンソーシアムが建設資金を調達できないのではないかと懸念していました。
そこで私はこう提案しました。「日本企業に打診したらどうか。日本は資金が豊富ではないか」と。すると首相は次のように答えたのです。
「日本企業には問題がある。韓国や中国の企業に比べて、意思決定を下すのに時間がかかりすぎることだ。だから、発電所の建設プロジェクトの入札においても、候補にならなかった」
まず必要なのは過ちを恐れないこと
では、意思決定のスピードを速めるためにどうしたらいいのでしょうか。
ドブズ:まず必要なのは、過ちを犯すことを恐れないことですね。現代ではあらゆる産業で進化のスピードが増しています。特定の産業の進化がどのようなものかをじっくりと研究して理解してから戦略を立てようとしたら、戦略が出来上がった時には時代遅れのものになってしまいます。
そこでいま求められるのは、大雑把で構わないから即座に行き先を決めて、そこに向かって動き始めることです。そして方向が間違っていたら、その過ちを認めて、行き先を変更する。失敗は失敗として教訓とすればいい。
日本人の繊細な技術は世界一だと思います。失敗は成功の元ですね。ceoなる外国の経営者は日本に向いているのかなと思います。(2013/06/03)