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日本株急落は新たな上昇に向けての“地固め”

アレキサンダー R.トリーヴス・フィデリティ投信 運用部長に聞く

2013年6月10日(月)

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 このところ不安定さを増している日本の株式相場。この日本株を大きく揺さぶっている取引主体でありながら、その行動の実態がなかなかつかみにくいのが外国人投資家だ。実際に海外を駆け巡り、情報交換を密にしながら日本株への投資魅力を説いて回っているフィデリティ投信の運用部長、アレキサンダー R.トリーヴス氏に、昨今の日本株に対する海外投資家の受け止め方や投資行動について聞いた。

(聞き手は松村伸二)

最近の日本株は急落するなど不安定な動きを見せています。

アレキサンダー R.トリーヴス氏(以下、トリーヴス):足元の狭いところを見るだけでなく、これまでの全体の動きをおさらいすべきです。確かに、直近では一時的に高値から約20%下落しましたが、昨年末に比べればまだ25%高い水準にあり、昨年の11月半ばから見ると50%も上昇していることには変わりありません。

きわめて健全な調整

 ですから、今年1年間という長めの期間で考えれば、地合いが決して悪くなったわけではなく、非常にいい年であるということを忘れてはなりません。このところ市場が先走りすぎて急ピッチで上がっていたことに対する、きわめて健全な調整であったと受け止めています。これは今後の新たな上昇過程に向けての“地固め”になるでしょう。

アレキサンダー R.トリーヴス氏
1995年、英ケンブリッジ大学キングズカレッジ卒、マーキュリー・アセット・マネジメント入社。ロンドン、香港、シンガポールでアナリストを歴任。メリルリンチ・マーキュリー・アセット・マネジメントなどでのポートフォリオ・マネージャーを経て、2006年にフィデリティへ。2007年、フィデリティ投信(東京)のヘッド・オブ・リサーチ。2012年から現職。日本経済の現状や日本株投資の魅力を海外投資家に直接伝えるため、世界を駆け巡る。(撮影:菅野勝男)

これまでの右肩上がりの流れは変わってないということですか。

トリーヴス:原因が何だったかを理解することが大事です。今回の調整のきっかけがいったい何だったのか、実はあまり明白ではありません。いくつか指摘はされています。例えば、日銀の黒田東彦総裁が会見で対応策などの追加的な情報発信をしなかったことに市場が失望した、と言う説がありますが、それはおかしいと思います。その会見の前に、特に誰も期待を持っていなかったからです。元々期待のないところに、失望するということはあり得ません。

 米国での量的緩和策が終息に向かっていくのではないかという見方や、中国の経済指標が期待したほど良くなかった点も、日本株調整のきっかけと指摘されています。しかし、これらはいずれにせよ、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が掲げる日本の復活とは直接的な関係はありません。

 投資家は、日本経済の先行きに不安になって売りを出したわけではなく、こういったことを言い訳にして、利益を確定させるための売りを出したと見ています。

注目すべきは国債利回りの上昇

では、最近の日本経済の動向は楽観して良いのでしょうか。

トリーヴス:一番注目すべきは、日本国債の利回りの上昇です。安倍政権と日銀は絶妙なバランスをとりながら金利を管理していかなければなりません。

 片方では、インフレ目標を掲げて経済成長を促し、さらに税収を増やすような環境を作っていこうとしています。しかし、もう片方では、インフレが行き過ぎると、大きな負債を抱える日本国としては金利支払い能力が大きなインパクトを受けます。日銀には、こうした微妙な「範囲」の中での舵取りが求められるわけです。この「範囲」から外れる事態が起これば、日銀は苦しい状況に陥ることになるでしょう。

今回の売りの主体は外国人投資家との指摘があります。彼らはどこかで利益確定のチャンスを狙っていたということですか。

トリーヴス:今回の局面で、外国人投資家の大きな売りはなかったのではないでしょうか。少なくとも年金資金のような大手機関投資家からの目立った資金流失の話は、耳にしていません。

 忘れてならないのは、円安傾向の影響です。日本株投資をする外国人投資家にとっては、円安になっている分、為替換算後では大きく利喰えるほどの益は出ていないと思われます。ドルやユーロで投資している外国人投資家からすると、円建てで見たパフォーマンスより低いリターンになるわけです。それを考えると、急いで日本株を売る理由が外国人投資家にはないはずです。

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「日本株急落は新たな上昇に向けての“地固め”」の著者

松村 伸二

松村 伸二(まつむら・しんじ)

前日経ビジネス副編集長

日刊紙の日本経済新聞、リアルタイム速報の日経QUICKニュース(NQN)、テレビの日経CNBC、週刊誌の「日経ビジネス」と、日経グループの様々な媒体を渡り歩き、マーケット記事を中心に情報発信を続ける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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