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「創作とは記憶である」とクロサワは言った

馬場康夫さん×澤本嘉光さん 第2回

2013年9月11日(水)

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(撮影:大槻純一、以下同)

(→第1回からの続きです)

澤本:馬場さんは新卒で入社した日立製作所の宣伝部で、上司から「自分は人と違うと思うな。人と同じことを考えろ。そうでなければ、広告では成功しない」と言われました。僕、それはすごくいい話だなと思って、よく覚えていたんです。

 広告をやっていると、自分がほかと違うところを見せたい、尖りたいと、ついつい思ってしまうんですが、広告というものは、結果として人や物が動かないと成功しないじゃないですか。

そうですね。

澤本:ということは、人と同じことをちゃんと知ってないと作れないんですよね。ですから、人とどこが同じなのか、最大多数はどこにあるかを考えろ、という話を、会社へ入ってすぐの段階で聞いていると、ずいぶんいいだろうなあ、と思いますよ。

馬場:その、小平雅一さんという上司は、宣伝部だけにこもるのではなく、工場や研究所にも足しげく通って、研究者たちとすごく仲がいい人だったんですよ。

 広告を作るときに、自分が何を表現したいかということは、もちろんあった方がいいんですが、取りあえず工場に行って、「作った人が何を言いたいの?」を、知ることに尽きると思うんです。きれいごとに聞こえてしまうかもしれませんが。

 その商品をどうやって作っているのか、何が訴求ポイントなのか、他社と比べてどこが違うのか。その違いが、訳の分からない場合もよくあるけれど、それでも、まずは現場に行って、いろいろなことを聞いて、作ったやつのパッションまでも全部理解しないと、広告なんて作れません。小平さんは「まずそこだろう」ということを、背中で教えてくれた人でしたね。

馬場康夫の異常な手帳

澤本:そうですか。

馬場:僕も広告の仕事をいまだに続けていますけど、この間もクライアントの工場まで行ってきました。本当は面倒くさいんだけどね。そこら辺のパンフレットだけで、ちゃちゃっと作ったっていいじゃないか、とも思うんだけど、ただ、行けば本当に面白い話が絶対にありますよ。

澤本:僕が馬場さんをすごいと思うのは、馬場さんの手帳が異常なんですよ。

異常?

澤本:馬場さんの手帳って、すごく細かい字で、データがものすごくいっぱい書いてあるんです。その、手帳に書いてある情報量が異常なんです。

澤本:この手帳には、「クライアントのあの人に何かを聞かれたら、これを答えよう」「あのお姉ちゃんと、こういう話をすれば面白いんじゃないか」というのが全部書いてある。馬場さんって、お店、本、映画と、データベースの量が莫大なんですけど、そのデータベースって、僕にはないじゃないですか。

普通の人の頭の中にもないですよ。

澤本:例えば映画の話をしていても、馬場さんと、第1回で名前が出てきたフジテレビのプロデューサーの石原隆さんというのは、異常な量のデータベースを持っていて、お2人と会話をすると、「あの映画のこういうシーンで、あいつが立ち上がって何とかと言ったんだけど、そういうふうな感じのことをやりたいんだよね」と、どちらかが言うと、「そうそう」と話が弾んでいく。僕は分からないから、「ん?」 と、頭の中で、会話の雰囲気から推し量った、まったく違うシーンを思い浮かべる。

馬場:ははは。

広告業界の「ちはやぶる」

澤本:そのデータベース論でいうと、広告も同じで、例えばコピーライター同士で話をするときって、ほかの人が入っているときと、話のスピードが全然違うんですよ。広告業界には、「TCC年鑑」という広告コピーのデータベースがあって、谷山雅計さんというコピーライターは、その年鑑を全部読んで、ほぼ暗記している。

馬場:谷山雅計さんには、僕、会ったことがあるよ。

澤本:あの人に、何かのコピーのさわりを言うと、「それはTCC年鑑の何年版のどこそこにある」と、即座に返ってくる。

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「「創作とは記憶である」とクロサワは言った」の著者

澤本 嘉光

澤本 嘉光(さわもと・よしみつ)

CMプランナー

1966年、長崎県生まれ。東京大学文学部卒業後、電通に入社。カンヌ国際広告祭賞など内外の受賞多数。2007年に始まったソフトバンクモバイル「白戸家シリーズ」は5年目に突入し、いまや国民的CMに成長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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