• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

作者の「最後の味方」は誰なのだろう

作り手を蚊帳の外に追い出さないために

2013年9月17日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

(前回から読む

とり・みき
熊本県出身。ギャグマンガをメインにしながら、エッセイコミックやストーリー物も手がける。94年『DAI-HONYA』98年『SF大将』で星雲賞、95年『遠くへいきたい』で文春マンガ賞を受賞。劇場版アニメ「WXIII 機動警察パトレイバー」では脚本も担当。オジギビトと名づけた工事看板に関する著作や吹替に関するコラムも執筆(「吹替の帝王」サイトにて)。山下達郎オールタイムベストCD「OPUS」ではジャケットイラストを担当した。(写真:大槻純一 以下同)

とり:話がどこまでいったんでしたっけ(笑)。

マンガ家と出版社の契約書ですね。

とり:そう。本来なら出版前に交わされるべき契約書が、単行本が出てから著作者に送られてくる慣例が横行しているということ。これは、それで納得しているマンガ家の側も悪いんだけど……。

マリ:あと映画化権だけでなく、関連グッズに関するコピーライトの使用料に関しても、契約書は後出しなんですね。マンガに関連した手ぬぐいだとか、ガチャポンだとか、いろいろな物が発売された後で、私はまとめて許諾のサインをしたわけですけど、でもそれが当たり前のやり方なのかと思っていました。

とり:外国だと、パブリッシャー(出版社)と交渉する作家のエージェント(代理人)がいて、作品を売り込んで「いくらで契約しますか」と、ビジネスライクに契約が進められる。

 でも、日本でややこしいのは、出版社の編集者が、作家の育成係であり代理人みたいになっているところなんです。それで、自分が育成した作家が売れて「この契約はおかしいのではないか」と言いだしたら、「オレはあいつには手をかけてやったのに、裏切られた」というような気持ちを、どうしても持ってしまうんですね。

マリ:そのあたりが、すごくいびつなんですよね。私も…実際先方からそう思われていると思います。今となっては。

とり:例えば映画化というような、対外的なビジネスの話が出たときに、本来はパブリッシャー側の人間であるはずの編集者が、作家のエージェント的な立場も取ってしまう。それで、作家の代わりに、著作権とか原作使用料とかを全部交渉する。

マリ:それ、ビジネスとしては、完全におかしいでしょう。だってパブリッシャー側の人間が、エディター(編集者)とエージェントの3つを兼ねるということは、理論上、成り立たないことですよ。

日本の編集者は、会社と作者の板挟み

ヤマザキマリ(やまざき・まり)氏
マンガ家。1967年東京都出身。1981年、ヨーロッパの一人旅で知り合ったイタリア人の陶芸家に招聘され、1984年に単身でイタリアへ。フィレンツェの美術学校で油絵の勉強を始める。1997年より漫画家として活動。エジプト、シリア、ポルトガル、アメリカを経て、現在は北イタリア・パドヴァ市在住。2010年、古代ローマ人浴場技術者が主人公の『テルマエ・ロマエ』で2010年度漫画大賞、手塚治虫文化賞短編賞を受賞。最新刊は『スティーブ・ジョブズ』(講談社)。公式ホームページはこちら

とり:そう。だって、利益相反ですからね。交渉しているときに、ダブルスタンダードどころか、トリプルスタンダードにならざるを得ない。

マリ:その矛盾した状況、私はやっぱり納得がいかない。

とり:商売の構図としてはいびつだよね。誤解のないように何度も繰り返しますが、現場の編集さんの多くは、マンガやマンガ家のためによかれと日夜奔走してくれているのです。対外的どころか、会社に対してマンガ家の想いや利益を出来るだけ実現させようと頑張ってくれている人がたくさんいる。

 けれども、一人の人間が、マンガ家には出版社の意向を伝え、自分が所属している会社にはマンガ家の代理人的立場で発言すること自体が、そもそもちょっといびつなんです。常に板挟み状態なわけで、こういう構造は、実はマンガ家だけではなくて、編集さんにとってもストレスを多く強いることになっていると思います。

テルマエ・ロマエ I』ヤマザキマリ(BEAM COMIX)

マリ:映画化された『テルマエ・ロマエ』の原作使用料について言えば、私は「出版社におまかせします」みたいな条項がある契約書にサインをした後で、何度か読み直しているうちに契約書にいくつか疑問に思った点があって、後から弁護士に相談したわけです。まあサインをした後に気がついて行動に出る、ということがそもそも間違いだったというのは分かるんだけど、この問題は本質的にはお金という事ではなく、気持ちの整理の部分が大きいんですよ。

とり:マンガって、まず気持ちが乗らないと描けないものね。逆にいえば「自分のことを考えてくれているな」と感じられる対応さえあれば、いくらでも描くんだよね。相手のその後の対応というか説明が、ヤマザキさんには真摯に感じられなかった、ということですね。



コメント21

「とりマリの「当事者対談」」のバックナンバー

一覧

「作者の「最後の味方」は誰なのだろう」の著者

とり・みき

とり・みき(とりみき)

マンガ家

熊本県出身。ギャグマンガをメインにしながら、エッセイコミックやストーリー物も手がける。94年『DAI-HONYA』98年『SF大将』で星雲賞、95年『遠くへいきたい』で文春漫画賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

ヤマザキマリ

ヤマザキマリ(やまざき・まり)

漫画家

東京都出身。1984年にフィレンツェの美術学校で油絵を学び始める。1997年から漫画家として活動を開始。2010年、『テルマエ・ロマエ』で2010年度漫画大賞、手塚治虫文化賞短編賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

ドイツ企業は協調と競争の使い分けに長けている。

ビル・マクダーモット SAP CEO(最高経営責任者)