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立命館大学・川口清史総長が目指すグローバル化とは

大学は「MOOC」には置き換わらない

2013年10月17日(木)

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 立命館大学は2000年に大分県に「立命館アジア太平洋大学(APU)」を創設した。現在、世界78の国と地域からの留学生が2420人に上り、APUの全学生に占める留学生比率は43%にもなる。

 APUを創設した2000年に立命館大学は、東京大学が今回成し得なかった「秋入学」も既に導入済み。今年9月25日には28の国と地域から167人の外国人新入生を迎え入れた。そして昨年、グローバル化への取り組みをさらに一歩進めて、「キャンパス・アジア」を立ち上げた。日本と中国、韓国のキャンパスを学生が移動しながら学ぶというもので、立命館文学部、中国の広東外語外貿大学、韓国の東西大学校からそれぞれの10人ずつ学生を集めた。

 立命館が大学のグローバル化にこだわるのはなぜか。その理由を同大学の川口清史総長に聞いた。

「立命館アジア太平洋大学(APU)」にとどまらず、「キャンパス・アジア」など矢継ぎ早に国際化に向けた取り組みをしている。どのような危機感があって立命館は改革を推進しているのか。

川口:経済におけるグローバル化が叫ばれて久しいが、大学が真に国際化を迫られてきたのは、ここ10年くらいだ。おそらく、ほかの大学はそのあたりから本腰を入れているだろうが、立命館は違う。実に30年近く取り組んできている。

川口 清史(かわぐち・きよふみ)立命館大学総長
1945生まれ、68歳。京都大学経済学部卒業、修士、博士課程を経て、76年に立命館大学社会学部助教授に。87年に同教授。94年に政策科学部教授。2004年に政策学部長などを歴任し、2007年から立命館大学総長に就任。(写真:菅野 勝男)

 その背景には、1980年代中頃の危機があった。当時の立命館は存在感が薄く、関西の私大の中でも地位が下がりつつあった。このままではいけない。何とかして特色を打ち出し、中長期的に大学の未来を考えて何をすべきかを必死に模索した。その答えが国際化だ。

 国際化を掲げる国内大学の多くのは、「ほかの国内大学に優秀な人材を取られないようにする」ことが目的となっている。だが、立命館の目的はそこにはない。海外、それもアジアから優秀な人材を呼んでくることにある。つまり、ライバルは国内ではなく、海外の大学であり、ほかの国内大学とはそもそもの競争意識が異なる。

 国際化を標榜しても、一朝一夕で成し遂げることはできないだろう。国際化が進んでいると言われる立命館でさえ、教授会を含めて大学の改革を理解してもらうのは難しいのだから。改革にはどうしても時間が必要だ。一発逆転の満塁ホームランなどない。地道にやっていかなければ、反動が来て本来成し遂げたい改革という果実は、むしろ遠ざかっていってしまうだろう。

中韓と緊張関係にある今だから、日中韓で合同キャンパスを作った

昨年、試験的に導入した「キャンパス・アジア」は日中韓の学生30人が、それぞれの国において現地の言葉で現地の文化や慣習を学ぶ。このプログラムが意図することは何なのか。

川口:世界の大学で共通する課題はやはり、教育だ。しかし、多くの大学は研究に力を注ぐあまり、人間教育の場でなくなっている。教授が学生に対して一方的に話して知識を埋め込む日本の講義スタイルはもちろん、海外であっても、教育に対してもっと力を入れなければならないと考えている大学は少なくない。

 グローバル化が進み、国境を越えて多様な人材とコミュニケーションを取り、お互いに理解して物事を決めていかなければならない時代になっている。だが、島国である日本の中に閉じこもり、教科書を読んでいるだけでは、学生は新しい時代の課題に対する対処法を見出せないだろう。それを見つけるには、異なる国の学生と直接触れ合って、話して、一緒に時間を過ごすことで、お互いを知ることが近道だ。

 日中韓の3国をキャンパスとして1年で回るこのプログラムは、隣国との関係が決して良いとは言えない今、リスクもある。だが、逆に今こそお互いを知らなければならない時代とも言える。

 お互いの思考に溝があったとき、相手の考えに迎合したり拒絶したりするのではなく、まずは、その溝が埋めがたいものだと理解するだけでも大きな意味がある。その上で、どうしてそのような溝ができてしまったのか、その考えに至った背景を知ることも重要だ。

 そのため、日本では日本語で日本の近代史などの講義をし、中国では中国の、韓国では韓国がそれぞれ現地の言葉と教材で授業をする。日本で学んだこととは違う話にもたくさん出会うだろう。しかし、そうした日本とは違う環境の中で、自分で考え、その考えを異国の人に伝える試行錯誤の過程こそが、学生に国際感覚を育む上で重要だと考えている。

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「立命館大学・川口清史総長が目指すグローバル化とは」の著者

白壁 達久

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者

2002年関西大学経済学部卒業後、日経BP社に入社。日経ビジネス、日経ビジネスアソシエを経て、2015年から香港支局長としてアジア全体をカバーする。2016年8月から日経ビジネス記者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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