世界で評価されている日本の技術や製品は枚挙に暇がないが、その中でもこの商品は一風変わっている。それは、四万十川流域で生まれた「しまんと新聞ばっぐ」だ。古新聞を折って糊付けしただけのバッグだが、デザイン的な面白さはもちろんのこと、日本人の美意識である「もったいない」と「折り紙の手わざ」を象徴したものとして、国内外で高い評価を受けている。
当初は四万十流域の道の駅、「四万十とおわ」のレジ袋として販売されていたが、レシピ(作り方)付きバッグを発売したり、インストラクター養成講座を始めたり、全国公募による新聞バッグコンクールを開催したり、被災地の仕事づくりで活用されたり…と、その活動は大きく広がっている。最近では、政府が進めるクールジャパン戦略の一環で、海外展開などの支援を受けることも決まった。
この新聞バッグのコンセプトを作ったデザイナーの梅原真氏に、新聞バックプロジェクトの現状や独創的な商品作りのコツを聞いた。(聞き手は小平 和良)
はじめに、「しまんと新聞ばっぐ」が生まれた経緯を教えて下さい。
梅原:順を追って説明すると、僕は道の駅「四万十とおわ」を運営している四万十ドラマの商品開発にずっと関わってきました。四万十ドラマは地域の素材を使った商品などを開発している会社で、モットーは四万十川に負担をかけないものづくり。ただ、現実を見れば、四万十川は最後の清流と言われるけど、実際は生活排水などで年々汚れてきている。「何とかせなアカン」という問題意識がずっとありました。
「商品はぜんぶ新聞紙で包もうや」
隣の仁淀川の方がよっぽどきれいですね。
梅原:ほんとに。特に、四万十川沿いの木々に引っ掛かっているレジ袋が「気に入らん」と思っていたので、「四万十流域で販売する商品はぜんぶ新聞紙で包もうや」と言い始めたわけですよ。すると、十和村(現四万十町)に住んでいた伊藤のおばちゃん(伊藤正子さん)が新聞を器用に折って、バッグを作ってくれた。2003年頃の話ですわ。それで、「ええやん、これ」と。読み終わった新聞で四万十の商品を包む。何とも四万十らしい話でしょう。
新聞のどのページを前面に持ってくるかで、バッグのデザインが大きく変わります。
梅原:そこが面白いところです。まさに、作り手のセンス。外国の新聞紙で折ると、また印象が変わって面白い。2011年に、ベルギーの新聞が紙面上でデザイナーが作った新聞バッグを掲載していましたが、四万十の新聞バッグとは全然ちがうお洒落なものになっていました。

英字になるととてもオシャレに
作り方を販売しているというところも変わっている。
梅原:そう。はじめは完成品を売っていたんだけど、「作ってみたい」という人が結構いたので、新聞バッグの「作り方」を1000円で売り始めました。ただの古新聞でも、そこに「考え方」があれば1000円の価値が生まれるということです。その後はインストラクター養成講座をスタートさせました。今では250人を超えるインストラクターが全国で活躍しています。
おかげさまで、この9月に政府が進めるクールジャパン関連のプロジェクトに採択されました。これは、クリエイティブ産業の芽になり得る地域の商材を支援するというもの。海外にどうやって展開させるか。今後はそれを考えていかないといけません。
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