日本人らしい、地に足の着いたリーダーシップで、会社を成長発展させている経営者には、何か共通点があるのではないか――。「現場力」の重要性を唱え、戦略とマネジメントにも精通する遠藤功・早稲田大学ビジネススクール教授(ローランド・ベルガー会長)が、いま注目の日本人リーダーに迫る。
対談の4人目は、星野リゾートの星野佳路社長。「リゾート運営の達人」というビジョンを掲げて、日本各地で旅館やホテルを運営する。サービスと利益の両立を目指し、「西洋型ホテルのマニュアルを忘れたところ」に正解を見いだそうと、革新的な試みに次々と挑んできた。
活力あふれる企業風土の背景には、現場のリーダーシップと経営のリーダーシップを融合させた、チームスポーツ型の組織運営がある。
星野:僕はよく、「星野さんはうまく現場に任せている」とか「現場をすごく信頼している」と言われたりしますけど、実は、そんなに任せているつもりもなければ、信頼しているつもりもないんです。
スタッフ全員の能力をすべて信じているということでは決してなくて、「信じている部分」と「信じてない部分」がある。「こういうところは信じている」「こういう部分はまったく信用してない」ということが自分の中ではすごく明確です。

1960年生まれ。慶応義塾大学卒業。米コーネル大学ホテル経営大学院で経営学修士号を取得。91年、家業の旅館「星野温泉」の4代目社長に就任。施設の所有にこだわらない運営特化戦略を推進し、ホテルや旅館の再生案件も含めて、日本各地でリゾートを展開。滞在型高級リゾート「星のや」、温泉旅館「界」、リゾートホテル「リゾナーレ」などのブランドを全国に展開している。2013年7月には、星野リゾートが運営する施設の物件を投資対象とするリート(不動産投資信託)を立ち上げた。学生時代は体育会アイスホッケー部のキャプテン。(写真:大槻純一)
遠藤:信じている部分というのは?
星野:信頼している部分というのは、「目の前にいるお客様に喜んでほしいと思っている」という気持ちです。それはアイスホッケーで言えば「試合に勝とうと思っている」ということです。
自分のチームを有利にするようにプレーして、チャンスがあれば相手のゴールにパックを入れようと思っている。全員がそういう気持ちで臨んでいないとチームは成り立たないわけです。
だから目の前にいるお客様にとにかく喜んでいただきたいと思っているという気持ちは、やっぱり信じているし、そこが信じられないと一緒に仕事ができないから、信じられる社員だけをリクルートしている。そこが信じられるということはすごく大きいわけです。
遠藤:根っ子のところには信頼感がある。
やめることが大切?八重山にいくつか星野リゾートのホテルがありますが、過剰なライトアップはやめてほしい。あまりの明るさに星が見えづらくなってて憤慨した。(2013/11/14)