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「持たざる国」の教訓を学ばない日本

ネトウヨなど都知事選で明らかになった民主主義国家破綻の兆し

2014年2月21日(金)

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 今年、兵士だけで約1000万人の戦死者を出したとされる第1次世界大戦開戦から100年を迎える。

 思想史研究者の片山杜秀氏は、著書『未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命』で、第1次大戦を目の当たりにした日本は、20世紀の戦争は国家が科学と生産力を結集させた総力戦となることを理解したからこそ「持たざる国」としての限界を強烈なまでに痛感し、この認識が「持てる国」とのギャップを埋めるべく信じがたい精神論の台頭を招いたと解き明かした――。これまでの「日本は日露戦争の勝利におごったがゆえに第2次大戦で惨敗するに至った」との通説を覆す異説で、以来、注目を集めている。

 そして昨年、『国の死に方』で、日本は「持たざる国」として、この第2次大戦の教訓を生かすことなく、原子力発電で再び無理な背伸びをして東京電力福島第1原子力発電所事故を招くという同じ過ちを繰り返したと指摘した――。その片山氏に都知事選の結果をどう見ているか聞いた。

(聞き手は石黒 千賀子)

片山 杜秀(かたやま・もりひで)氏
1963年宮城県仙台市生まれ。育ちは東京。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、同大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。思想史研究者、音楽評論家。大学院時代からライター生活を始め、月刊誌『レコード芸術』や『CDジャーナル』など10本以上の連載を抱える。2008年には『音盤考現学』『音盤博物誌』で吉田秀和賞及びサントリー学芸賞を受賞。作曲家の伊福部昭氏の再評価などでも知られる。
思想史研究者として、2008年慶応義塾大学准教授、2013年から同大学教授。『ゴジラと日の丸』『近代日本の右翼思想』など著書は多く、2012年に『未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命』で司馬遼太郎賞を受賞。夫人は、声楽家の藍川由美氏。(写真:的野弘路、以下同じ)

2月9日の東京都知事選では、小泉純一郎氏と組んで細川護煕氏が脱原発を訴えましたが、2人とも元首相という大物にもかかわらず、原発はあまり争点にならず舛添要一氏が圧勝しました。前日に雪が降って投票率も46.1%と過去3番目の低さでした。どうご覧になっていらっしゃいますか。

片山氏:ポイントが2つあると見ています。1つは、原発がなぜ争点にならなかったのかという点。もう1つは、田母神俊雄氏が61万もの票を獲得したのは「ネトウヨ」の存在が大きいわけですが、これが何を意味するのかよく考える必要があるという点です。

*=ネット空間で右翼的な書き込みをする若い世代の人たち

 まず原発が争点にならなかったのは、都知事選で日本のエネルギーという国家的なテーマを論じても意味がないという分析もありますが、私はむしろ日本人の気質のせいかと思っています。非常時的なことに対して、熱しやすく冷めやすい。しつこさが足りない。そういう国民性は災害大国ゆえ、という分析も、戦前から外国人によってよく行われましたけれども。とにかく損害にこだわっていてはキリがないので、水に流して忘れたがる。その国民性が今回も表れた。東日本大震災、福島原発事故から3年しか経たないのに、テーマの賞味期限が切れている。

 それは決していいことではやはりないと思いますね。

 そもそも日本が原発を推進することになったのは、「持たざる国」であるがゆえの選択でした。しかし、これは大変に無理な背伸びだったのではないでしょうか。

背伸びをするには、石橋を叩く体制が必要です

 「持たざる国」である以上、確かに背伸びをしなくては国の発展はありません。ただ、背伸びには危険が伴う。背伸びをすればしゃがんでいるよりも転ぶ率は上がる。だから背伸びをするにはよほどの警戒心が必要です。石橋を叩いて渡る必要がある。石橋を叩く体制が日本のような国には諸外国以上に必要だと思います。

 たとえば今は原発の安全基準を世界最高水準にするから安心だという議論が行われていますが、どうでしょうか。日本は地球の構造のせいで「世界に冠たる地震国」です。世界最高の安全基準はたちどころに相殺されてしまう。安全確保の経費と、それによっても残るリスクを勘案する。そうしたら「国家百年の計」の答えはおのずと明らかだと私は思いますが、そこまで石橋を叩く仕掛けも気構えも残念ながらこの国にはないですね。あるのは健忘症と勢いだけではないですか。

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「「持たざる国」の教訓を学ばない日本」の著者

石黒 千賀子

石黒 千賀子(いしぐろ・ちかこ)

日経ビジネス編集委員

日経BPに入社後、英LSEに留学し修士取得。日経ビジネス、日経ナショナルジオグラフィック、日経ベンチャーを経て、2003年日経ビジネスに編集委員として戻る。主に、本誌の「世界鳥瞰」の欄を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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