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ダントツの勝者に見る「原理を裏切る」という発想

根来龍之・早稲田大学ビジネススクール教授に聞く(後編)

2014年3月25日(火)

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 前回は、電子書籍事業の勝者アマゾンと敗者ソニーを比較しながら、ビジネスモデル設計のポイントを早稲田大学ビジネススクールの根来龍之教授に解説してもらった。今回は、「10分、1000円」で髪をカットする理髪店チェーン「QBハウス」のビジネスモデルについて、根来教授に聞いた。

 「床屋さん」の常識を根本的にくつがえし、全国約500店舗の大チェーンに成長した圧倒的勝者に学ぶべきことは何か?

「10分、1000円」を実現するためにあらゆる発想を転換

「QBハウス」はビジネスモデルの勝利によって成功した事例の典型ですね。ここから読み取るべきビジネスモデル設計のポイントは何ですか?

早稲田大学ビジネススクールの根来龍之教授(写真:都築 雅人)

根来:QBハウスの創業の経緯は、必ずしも画期的技術革新を伴わない「新しい発想」によるビジネスモデル・イノベーションの一類型と言えるでしょう。すなわち、従来からあるビジネスのあり方に疑問を持ち、顧客が本当に求めていることを追求して、ムダのないサービスを低価格で提供する新業態を開発したわけです。

 創業者の小西國義さんが素晴らしかったところは、「10分、1000円」という設定を決めて、誰でも「安い」「速い」ということが分かるようにしたことです。従来の発想でコストを積み上げると「とても無理」な目標でしたが、「10分、1000円」を何としても実現するために知恵を絞った。「シャンプーなし」「ひげそりなし」にして、「カット専門」にサービス内容を絞り込み、それに合わせて設備などを選択した。

 例えば、シャンプーをしないのでイスはリクライニング機能が不要になり、パチンコ店で使われるようなイスを安値で仕入れた。シャンプーのための水回りの設備も不要になりました。

 発想の転換はあらゆるところに及んでいました。例えば、代金1000円の支払い用として、携帯電話の普及で余っていたテレホンカードの自動販売機を導入し、代金受け取りの手間やミスをなくしました。さらには、予約や担当者の指名を受け付けないようにして、「だから電話は不要」という判断に基づき、店舗に電話を設置しませんでした。

 一方、切った髪の毛を吸い取るエアウォッシャーを開発したり、お客さんが入店前に待ち時間を確認できるシグナルランプを設置したりするなど、新しいコンセプトの理髪店にとって必要と思える設備を加えました。

 待ち時間を表示するシグナルランプは、待合席のイスに設置したセンサーによって座っている人数を把握して、自動的にシグナルが変わるという仕組みです。また、前述した自動販売機はネット接続されていて、来店状況や売り上げの把握にも役立てました。QBハウスは情報システムの利用という点でも、従来の床屋さんにはなかった仕組みを取り入れたわけです。

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「ダントツの勝者に見る「原理を裏切る」という発想」の著者

根来 龍之

根来 龍之(ねごろ・たつゆき)

早稲田大学ビジネススクール教授

早稲田大学ビジネススクールのディレクター(統括責任者)と早稲田大学IT戦略研究所所長を兼務。ITと経営、ビジネスモデルなどを研究テーマとする。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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浜田 健一郎 ANA総合研究所 シニアフェロー・前NHK 経営委員長