フランスを代表する知識人、エマニュエル・トッド氏は、前回のインタビューで、「ユーロを生みだしたフランス経済は、ユーロによって破壊された」と述べた。経済だけでなく、政治的にもドイツに頭が上がらない。
だが、唯一、うまくいっている分野がある。出生率だ。フランスでは政府の教育費無料化などの施策によって所得階層のすべてで出生率が上昇している。フランスと対照的なのが日本。歴史人口学者として、きつい警告を日本政府に発する。
(聞き手は黒沢正俊=出版局編集委員)

フランス国立人口統計学研究所(INED)の研究員。歴史人口学者、家族人類学者。1951年生まれ。祖父は作家のポール・ニザン。1976年に出版した処女作『最後の転落』でソ連崩壊を予言して衝撃を与える。2002年の『帝国以後』で米国の衰退を予言、世界25カ国に翻訳されるベストセラーとなった。他の著書に『世界の多様性』、『新ヨーロッパ大全』、『経済幻想』、『デモクラシー以後』(以上、邦訳は藤原書店)など(写真:大槻純一、以下同)
学問としての歴史人口学の可能性について、どう考えているか?
トッド:私の方法論を説明するのは難しい。私には読者はいるが、研究者で私の後継者はいないと、友人から言われた。私は孤独な研究者であり、それは真実だ。恐らくいつか、私の方法論が正しく、正確な予測であったと、人々が気づいてくれるはずだ。
歴史人口学の分野では、メソポタミアのような古代や東ヨーロッパに関する研究が進んでいる。日本では速水融・慶應義塾大学名誉教授が日本の歴史人口学の父だ。彼はフランスや英国の手法を日本に持ち込んだ人で素晴らしい人だ。
ポーランド人研究者が東ヨーロッパの制度について偉大な研究を成し遂げている。しかし、これは純粋な歴史人口学で、私のような現代に関連する研究ではない。
GDP統計は誤魔化せても、人口統計は誤魔化せない
なぜ歴史学ではなく、歴史人口学なのか?
トッド:『最後の転落』でソ連の乳児死亡率、出生率を分析した。ソ連はもう崩壊するところだった。この本を書いたとき私は25歳で、博士論文を完成したばかりだった。私は歴史人口統計学の学生だった。
この学問は、18世紀のフランス革命などを分析するために開発された。フランス革命を出生率など人口統計の観点から分析する試みからだ。私は、ロシアのような閉ざされた社会で、18世紀の政治分析に使用されていたそうした方法論を応用した。そうした方法論を使って、米国文明の転換、アラブの春など、いくつかの出来事を予見することができた。

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